■リヴァイアサン大祭2014『Merry Leviathan』
「うん、今日は楽しかった♪」オデッドがそう言うと、隣で一緒に歩いているジークリットは嬉しそうに微笑んだ。
リヴァイアサン大祭。このところ戦い続きだったからか、今宵のお祭りにこうやって参加できたことは、いい気分転換になった。それだけでなく……ジークリットの方も、楽しめたようだ。
店舗が並ぶ街中を、店舗の灯りを、そして飾られている雪だるまを見ながら、二人の女性は肩を並べて歩いている。
雪が降るも、オデッドはそう寒くはなかった。なぜなら、ジークリットから贈られたマフラーを首に巻いていたから。
ジークリット、彼女自身が編んだマフラーは、よれていたりほつれていたり、見栄えはあまり綺麗とは言いがたい。しかし、それを巻いていると、寒さをあまり感じない。まるで何かの気持ち、誰かの気持ちが、自分を暖めてくれているかのよう。
「このマフラー暖かいし、可愛くて凄く気に入ったわ♪ 団長の気持ちが伝わってくるみたいよ」
そう言って、自慢げにひらりとなびかせてみせる。
そんなオデッドの言葉に、ジークリットは両手で分厚い書物を抱えつつ、嬉しそうに微笑む。
それは、魔道書。オデッドがジークリットへと贈ったもの。嬉しそうな彼女を見ていると、オデッドもまた嬉しくなってくる。
「ふふ、こうして祝祭を満喫できるなんて、嬉しいな」と、ジークリット。
けど……と、彼女は言葉を続ける。
「けど、オデッドさんも度々行方が分からなくなったり、心配したのだよ?」
「いやー、悪い悪い。ほら、あたしって鳥のように自由な人間だからさー」
と、冗談めかした口調でオデッドはカラカラと笑った。
「ま、ふらふら出来るのも、帰ってこれる場所があるからだし。鳥に例えると、止まり木があるから、みたいな感じかな。だから団長とエイゲートには感謝してるわよ♪」
そういえば……と、オデッドは以前の事を思い出す。
「そういえば、一年前にリヴァイアサンで犬ぞり乗ったわよね」
「……オデッドさん。それ、いつの話?」
「え? あれ二年前だっけ? ……あ、そっか。去年はシャルムーンの調査隊でこっちにいなかったっけ」
「……シャルムーンといえば」と、ジークリットが口を開く。
「プレゼント交換は、いつしかのシャルムーン以来かしら、オデッドさん」
「ふふ。誕生日のたびにプレゼントをもらってる気もするけど、交換っこってのは確かに久々ね」
また来年も、その先もずっと……こうやって一緒に楽しめればいいわね。オデッドは静かに、心の中でそう思った。
「さて、今夜は夜通し読書に耽るのだよ!」
白い息を吐きつつ、ジークリットはもらった魔道書を夜空に掲げる。
「けど……それは、オデッドさんと今夜をもっと楽しんでから!」
「そうだね! あたしももっと楽しみたいよ!」
もっと彼女の喜ぶところを見たい、彼女と楽しくなりたい。
それを実行せんと、オデッドはジークリットと、目前の店の中に足を踏み入れた。