■リヴァイアサン大祭2014『REQUEST』
「誕生日プレゼントありがとな」窓の外は、雪の白と夜の群青が織り成す世界。
窓辺でシャンパングラスを持つロイが静かに微笑んだ。
蓋にひらりと舞う蝶が彫られた懐中時計。
「どういたしまして」
ガウラも柔らかく微笑むと、窓の外に視線を移す。つられるようにロイも外を見つめる。
静かに降り続く雪は、まるで永遠に降り続くようでもあり。
「誕生日が大祭の日っていいわね」
「そうでもないさ……皆大祭の事でいっぱいになって、忘れらてしまったりするからね」
軽く苦笑するロイに、「覚えやすくていいじゃない」とガウラは笑う。
「そうかな……」
ロイは、曖昧に笑って窓の外を眺めた。
ガウラもグラスに口をつけて舌先に炭酸の緩い刺激を楽しむ。
静かで緩やかな時間。それも全く苦にならないほど自然な『相棒』という関係は心地よく。
「なあ」
ふとロイが口を開いた。
「ん?」
ガウラは先を促す。
ロイは、グラスに口をつけて唇を濡らすと、
「来年の誕生日のプレゼント、今からリクエストしてもいいかな?」
少し遠慮がちに続けた。
「ずいぶん気が早いわね。いいわよ。何?」
可笑しそうに軽く笑ったガウラが微笑む。
「ちょっと恥ずかしいんで、大きな声じゃ言えないんだが……」
ロイは、ガウラの耳に唇を寄せ、恥ずかしそうに小声で呟いた。
「……また、随分大変なものをリクエストしてくれるわね。あたし、そんなに器用な方じゃないんだけど」
一瞬驚いたように目を見開き、困ったように笑うガウラ。
「今更。そんなの分かってるよ」
「来年の誕生日になっても無理かもしれないわよ?」
ロイが、くすっと小さく笑うと、ガウラは少し困った表情のまま眉を下げた。
「ガウラが嫌じゃなければ、出来るまで待つかな」
焦らなくていい、と微笑むロイ。
「…………いいわ。その頃にはさすがにどうにかなってると思うし」
しばらく悩んでいたガウラが頷いた。窓の外へ視線を逸らし、ぽそりと「……多分」と自信なさげに付け加えて。
「まあ、まだ先の話だよ」
先の事は分からないし、と小さく続けたロイ。
来年の今日より近い未来には大魔女との決戦もある。つまり、これまで以上に過酷な戦いが待っているのだ。その結果がどうなるか分からない。
(「それでも、このリクエストが叶う日が無事に来ることを……」)