■リヴァイアサン大祭2014『世界樹の麓へ…』
「……夫婦として、家族として。これからもよろしくね、シル」「こちらこそ……。ここから、新しく始まるんだよねっ♪」
2人は微笑み合い、ゆっくりと歩いて雪のチャペルの扉を開くと――。
「クリムさんっ、早く早く♪」
シルがクリムの腕を引いて走り出した。
「え?」
結婚式が終わって一息つくかと思ったクリムだが、シルの行動に驚きを隠せない。
「これで終わりじゃないのか?」
クリムの頭には疑問符がいくつも飛んでいる。
「まだだよっ! 報告に行かなきゃ!」
「報告? そんなに急いでどこに向かうんだよ」
シルは満面の笑顔で速度を落とそうとはせず、クリムはシルに手を引かれるまま問いかけた。
「だ、だって、こんなにうれしいことは、ちゃんと報告したいんだもん♪ だから、早く行こ?」
『どこに向かっているか』という問いに答えはない。しかし、シルにとっては大切な事なのだろう。だからクリムはシルに従って走った。
少し走ると、青々と葉をつけた大樹――世界樹が見えた。
そう、いわばエルフたちの母たる存在。
世界樹の元まで辿り着くと、シルは母なる大樹を見上げる。
(「そうか……そうだな。報告しなきゃだな……」)
やっと頭から疑問符を消したクリムも世界樹を見上げた。
そして、2人でしっかり手を繋ぎ、シルは瞳を閉じる。
(「ほんとの親はわからないままだけど、わたし達エルフを産んでくれたあなたへご報告です。こうやって、かけがえの無い大切な人と出会えた事を感謝します。だから、ありがとうございます」)
心からの祈り。感謝を込めて。
(「……貴方のおかげで私達は出会うことが出来ました。私達は二人で必ず幸せになります、どうか見守っていてください」)
クリムは瞳は閉じぬまま、誓いを胸に秘めた。
シルは静かに瞳を開き、クリムを見上げる。
「……これからも、よろしくね? 私の素敵なだんな様♪」
「……勿論、ずっと一緒だよ。私の可愛いお嫁さん」
微笑み合う2人は、しっかりと抱きしめ合った。
母なる世界樹に見守られながら――。