■リヴァイアサン大祭2014『今日はあんまり寒くないね』
「お疲れガルー。なんだかんだでリヴァイアサンだね」「……そうだなぁ」
ねぎらいの言葉と共に、カイはケーキを口に運ぶ。
ここはガルシアの営むケーキ屋。営業は既に終了しているため客の姿はなく、店の中はガルシアとカイ、2人の貸し切り状態となっていた。
(「疲れたなぁーっ」)
思いながらガルシアは伸びをして、自作のケーキを一口食べる。目の前のカイがケーキを口にした途端に顔いっぱいに笑みを浮かべるので、ガルシアは思わず笑ってしまった。それだけ美味しいと思ってもらえるのは、作った側としては嬉しいことだった。
(「別にガルを好きになった理由はこれじゃないと思うけど……」)
でも、美味しい――思ってカイはガルシアの作ったケーキを食べる。ガルシアとしても疲れているから甘い物が欲しくて、カイよりもゆっくりなペースだが、ケーキを食べ進めていった。
(「……ホント、会った頃と性格変わったよ、ガルシアは」)
ケーキを頬張りながら、カイはそう思う。まったく真逆の性格に変わったガルシア――ガルシアの変化が分かるほど一緒にいられていることが、どこか誇らしかった。
「ガルシアはさー……今後どうするの?なんかこう、未来とか」
少しだけ口調を改めて、カイはガルシアに問いかける。
もしもこれからもずっと一緒にいるなら――それは、知りたいことだった。
「……」
少しだけ悩んだ表情になって、ガルシアは考え込む。
先のことなどガルシアの予想通りになったことはなかった。だから、はっきりとしたことは言えない。
「分かんないけど……でも、もっと、自分のことも、好きになれたらとは思う」
(「好きになれたら、ねぇ」)
思って、カイはガルシアに微笑みかける。
「なれるよ」
――少なくとも俺は君が、好きだから。
カイの言葉に、ガルシアの僅かに笑顔を見せた。
(「自分を好きになれたら、もっと人を好きになれるだろうし……」)
少しだけ、そんなことも考えてみながら。
2人の夜は過ぎてゆく。