■リヴァイアサン大祭2014『二羽の兎さん〜リヴァイアサンの祝福〜』
リリーナの家をジィリオが訪れたのは昼間のことだった。笑顔で出迎えられたジィリオは、さっそく家の主であるリリーナに連れられてキッチンへと向かう。今日はリヴァイアサン大祭。夜に二人でささやかなパーティを催すため、その料理を二人で作ることになっていたのだ。
「やっぱり、ちょっと狭いわね」
普段リリーナが一人で使っているキッチン。そこにリリーナとジィリオが並べば狭さはあったが、ジィリオの表情に不満の色はない。
「狭いけど……でも」
ふとしか瞬間に腕が触れ合う。
わざとジィリオがリリーナに身を寄せれば、リリーナはくすぐったそうに笑った。
狭いが、だからこそ寄り添っている。そうして共に何かしているという感じが、なんだか幸せだったのだ。
料理をテーブルに運び終えたら次は今日のメインともいえるケーキ作りに取り掛かることになる。
リリーナが材料をキッチンに並べるのを眺めながら、ジィリオはどこか不安そうな顔をしていた。
「ケーキなんて、作ったこと無いけど……大丈夫かしら」
「大丈夫、私に任せて!」
頼もしい笑顔を浮かべるリリーナにジィリオがリードされるようにして、二人のケーキ作りは始まる。
リリーナの指示に慎重な手つきで、真剣な面持ちでケーキを作っていくジィリオ……あまりにも集中している姿がどこかおかしくて、リリーナの口からは笑みが漏れる。
「リィナ?」
くすくす笑いを漏らすリリーナにジィリオが不思議そうな顔を向けながらも、どうにかケーキは完成した。
――最後に、兎をモチーフにしたマジパンを二羽。
『二羽の兎さん』は、リリーナとジィリオの関係を表す特別な言葉。
親友、幼馴染、恋人、そしてもっと他のものにも――これから先、どんな関係にもなれるとという想いをこめて、ケーキの上に兎を置く。
兎は寂しがり屋だから、いつまでもいつまでも二羽とも互いを求めて寄り添い温め合う。
――そうやって、いつまでも一緒にいられたら。
願いを胸に秘めたまま、リリーナはケーキの上の兎の角度を少し変え、ケーキの上でそっと口づけさせる。
それからジィリオの方に向き直り、二人も同じことをした。
もっともっと近くにいたい――そんな願いがジィリオを求めるリリーナの胸に溢れる。
二羽の兎は二つで一つ。だから、とリリーナはジィリオを見つめ、言う。
「ね、今日は、くっついて寝よう?」