■リヴァイアサン大祭2014『そして、おやすみなさいを』
「お元気そうで良かったです」「主も元気そうじゃのぅ」
嬉しそうに笑うシヲンに、リンも笑顔で返す。
2人は、滅びの大地で共に戦った戦友。戦いの後にはバラバラになってしまったのもあり、この再会をどんなに待ち望んだことか。
「さて、せっかく二十歳になったのじゃ。今宵は約束通り盃を交わそうぞ」
「はい。やっとリンさんとお酒が飲めます」
にやりと楽しげに笑うリンに、シヲンは口元でパンっと両手を合わせ瞳を輝かせた。
ゆっくり盃を交わすなら、自由にできる自宅だろう、とシヲンの家に辿り着いた2人。
1人で住むには少し広く思える部屋。きちんと片付けられているからか、空間が広く感じてしまう。
「お酒はこれでいいですか?」
言いながら、シヲンはアマツカグラの酒とグラスをテーブルに出した。
「おお! 素晴らしい選択じゃ!」
「ふふ……リンさんがよく話してたので……」
瓶のラベルに瞳を輝かせたリンに、シヲンはにこやかに答えて、自分もテーブルに座る。
「では、主が目出度く酒が飲めるようになった事を祝して!」
「乾杯!」
チンッっと小気味良い音が響くと、リンはグラスの中身を一気に飲み干す。
「美味いのぅ」
「喜んでもらえて良かったです。あの時の約束がきちんと果たせましたし」
満足げなリンに、シヲンは微笑みながら約束をした時――滅びの大地での事を思い出す。
激しい戦い。傷を負い、それでも立ち上がる11人の仲間達。
あの時はダメかと思った、あれは助かった、そんな思い出話に花を咲かせていると、用意した酒の瓶はどんどん中身を減らしていく。
「……面倒じゃ、そのまま飲むろじゃ!」
極端に色白なリンであるが、随分顔が赤くなっていた。しかも呂律が回っていない。
「ええ!? リンさん?!」
リンは、シヲンの声など気にせず瓶を持ち、そのまま口をつけると一気に飲みだした。
ゴク、ゴク、ゴク……。
「かーっ! 美味いのぅ!!」
「もう、リンさんってば……」
豪快にラッパ飲みを始めた時には慌てて心配そうに見ていたシヲンだったが、瓶から口を離しても上機嫌で笑っているリンを見て楽しくなってくる。
「……」
しかし、へにゃっとテーブルに伏したリンはそのまま何も言わなくなった。
「リンさん? ……こんなところで寝たら風邪引いちゃいますから……ベッド行きましょう」
シヲンが心配そうに声をかけると「ん〜……」と、のっそり椅子から立ち上がったリン。シヲンは、すぐにでも倒れてしまいそうな彼女を支えて、何とか自分の寝室まで連れて行くことに成功した。
リンをベッドに横たえさせると、動いたのもあり、随分酔いが回ったと自覚する。
「……本当に色々ありました……辛かった戦いも、皆と一緒だから感じた幸せも……」
自分もそっとベッドに上がると、静かにリンの横で瞳を閉じた。
繋がった縁が途切れぬよう、出会った人たちが幸せであるよう、そう願いながら――。