■リヴァイアサン大祭2014『この後、美味しくいただきました』
「ケーキも嬉しいけど、ビビの方がうまそうだなー♪」青い瞳にいたずらっぽい笑みを浮かべ、ケイジャンはビィの背後から彼の手元を覗き込む。
ケイジャンとビィが恋人同士になってからはじめてのリヴァイアサン大祭。ビィが手作りのケーキを作ってくれるということで、ケイジャンは手伝いと見学のためにキッチンにいるのだが……。
「ちょっと邪魔しないで!」
ビィの背中にぴったりくっつくケイジャンのせいでビィは気がそがれ、手伝いというよりは邪魔をしている形になっていた。
「えっと、分量はこれで……あっ!」
ビィが本に目を落とせば、ケイジャンは秤を手にするビィの手に自分の手を重ねる――そのせいで、クリームに入れる砂糖が多くなりすぎてしまった。
「あっち行ってるっすよ!」
手伝いと見学のため、などと言いながら。
邪魔ばかりしてキッチンを追い出されるケイジャンなのだった……。
ケイジャンを追い出した後、どうにかビィはケーキを完成させることが出来た。
「邪魔してごめん、凄く美味かった! サンキュな」
邪魔をしてしまったことに反省しながらも嬉しそうにお礼のキスをされると、ビィも笑顔になる。
「少し失敗したけど……喜んでもらえて嬉しいっす!」
二人で美味しく分かち合ったケーキは、少しばかり砂糖が多すぎたようで甘かった。
しかし、二人でリヴァイアサン大祭の日を過ごせたこと、好きな人に手作りのケーキを食べてもらえた、あるいは好きな人の手作りのケーキを食べたこと。それらが嬉しくて、ちょっとの失敗などまったく気になるものではなかった。
ケイジャンはビィを抱きしめて、もう一度口づけをする。ビィがケイジャンの顔を見上げると、ケイジャンは真剣な顔をしていた。
「――今夜のビビ、俺にくれ」
「……っ!」
真面目な口調で囁かれ、顔を真っ赤にしながらビィは無言でひとつ頷いた。
――初めての二人のリヴァイアサン大祭の夜は、ケーキよりも甘いものだった。