■リヴァイアサン大祭2014『揺籃ユーフォリア』
シックなゴシック調の装飾がされた部屋。灯りはランプの柔らかい光と、差し込む月明りだけ。
窓から広がる夜の空は、見事な月を浮かべ、雪を舞わせる――。
「黒色のドレス似合っているかしら?」
セレネが微笑んで口を開いた。
漆黒のドレスは、彼女の青白い肌と溶け合い、恐ろしいまでの美しさを見せている。緩やかに波打つ銀の髪は、窓から差し込む月明りを受けて輝いていた。
「白色も素敵だったのだけれど……きっと今日は雪のものと思ったの」
一面を白く染め上げる雪に、白という色は譲ったのだと、無邪気に笑う。
「雪よりもお前が……綺麗、だと思う」
クライドが静かに口を開く。しかし、その声はどこか上ずって不自然で。
(「慣れない事はするものじゃないな……」)
心の中で苦笑を広げた。
一面銀世界の雪化粧よりも、セレネの方が美しい。それは偽りのない想いではあるのだが、普段言い慣れない言葉はすんなり口から出て行ってくれないのだ。
「ふふ……無理しないで……いつものお兄様がいいわ」
セレネは小さく笑う。そのままクライドに寄り添い、
「こんな日が来るのを望んでいたの……夢なら、ずぅっと覚めないままがいいわ」
その胸元に頭を寄りかからせた。
クライドは、銀の指輪が光るセレネの左手をそっと取る。その手の甲に静かに唇を寄せると、うやうやしく口付けた。
「一人の男としてお前を愛していくよ」
ふと顔を上げて真っ直ぐにセレネを見つめ、優しく微笑む。
先ほどのような言い慣れない言葉ではなく、自分の言葉で伝えた。嘘偽りのない想いを。
「空に舞う星霊とお前に誓う」
セレネの瞳を見つめて、真剣な表情をしたクライドが静かに誓う。
抱いた恋心は罪だと思っていた。何も知らない彼女を偽り続けて、その上で恋心を抱くなど――けれど、想いは受け入れられる。ならば、愛し守り抜くと。
「大好きよ、お兄様」
その誓いの言葉に、セレネは微笑んだ。
漆黒のドレスに青白い肌を際立たせて、妖しくも美しく――。