■リヴァイアサン大祭2014『溶けない約束』
「ね、一曲、どう?」氷のダンス会場、クラースはヴァルイドゥヴァに声をかける。
手を差し伸べるクラースの表情には、二度目のヴァルイドゥヴァと2人きりで過ごせる大祭への喜びがある。口元を緩ませるクラースを見て、ヴァルイドゥヴァは答えた。
「君と、喜んで」
差し出されたクラースの手に、ヴァルイドゥヴァは自身の手を重ねる。
ヴァルイドゥヴァはクラースをリードしようと思えばすることも出来たが、そうはしなかった。
――今日はリードしていて欲しい。
そう思って身を委ねているヴァルイドゥヴァの意図に気付いているかのように、クラースはヴァルイドゥヴァをリードしていく。
(「……緊張してるのかな?」)
いつもと雰囲気の違う装いのヴァルイドゥヴァを見つめ、クラースは自問する――だが、近い距離で目が合って、自分のこの気持ちが緊張ではないことに気付いた。
「綺麗、だね。……一番」
ヴァルイドゥヴァの頬が赤く染まり、ダンスのステップがぎこちなくなる。クラースはそんなヴァルイドゥヴァに微笑みかけ、そっと彼女を抱き締めた。
「僕の永遠でいて、ヴァルイー」
言葉は、ずっとクラースの心の奥にあったもの。
ずっと言えていなかった、かつてヴァルイドゥヴァから受け取った言葉。
クラースから抱き締めて貰うのも、自分が捧げた願いをクラース自身の願いとして口にしてくれたのも、ヴァルイドゥヴァにとってはあまりに不意打ちのこと――思わず、ヴァルイドゥヴァは呆けてしまっていた。
「こ、これじゃ通じないか、やり直すねっ!」
呆けた表情で見つめられ、クラースははっと我に返る。
しかし、ヴァルイドゥヴァが呆けた顔をしたのはドキドキと幸せの熱のため。分かっていると伝えるように微笑んで、ヴァルイドゥヴァはクラースの背に腕を回した。
やり直す、と口にしながらもクラースはヴァルイドゥヴァを抱き締める腕を緩めはしなかった。
「……でもごめん、もう一回言えるまで、まだこうしていさせて」
クラースの胸に抱かれ、ヴァルイドゥヴァは願う。
――2人が永遠でありますように。