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2人でリヴァイアサン大祭

天狼の黒魔女・サクヤ
月紅の雪彪・シュナイエン

■リヴァイアサン大祭2014『月夢雪花』

 空には星霊リヴァイアサンが泳ぐ年に1度の夜。
 広大な森を抜けると、そこには、温かそうに湯気を立てた湖があった。
「ここだな」
 地図を広げて場所を確認しつつ、サクヤが口を開く。
「そうみたいね」
 シュナイエンも湯気を立てる湖に確信のような表情を浮かべた。
 この1日限りの温かな湖にある言い伝え――身を浸して眠ると希望する者と夢の中で再会する事が出来る、という。
 湖への地図を書いてくれた友人は、『夢は見れなくても温泉は楽しめるだろ』と付け加えた。だからサクヤとシュナイエンは面白半分でこの場所に来ることにしたのである。
「本当にあったかいな」
 湖に手を入れてみたサクヤが、シュナイエンに笑いかけた。
「早速入ってみましょうよ」
 シュナイエンはコートを脱ぎ、靴を脱いで裸足になると、温泉と化した湖につま先を入れる。
「あぁ」
 サクヤも頷いて、コートと靴を脱いだ。

「雪を見ながら温泉、なんて、お酒があればもっと良かったのに」
「本当に好きだな」
 ふぅ、と息を吐いて残念がるシュナイエンに、サクヤは少し呆れたように小さく笑う。
 寒い中森を歩いてきた疲れもあり、温泉の心地よさに2人の意識は段々薄れていった――。

『サクヤ、何ぼんやりしてるの』
 サクヤの耳に、ふと懐かしい声が届く。師であり育ての親である先代の声。
 もう会える筈のない人。今の自分を見せたかった人。貴方のお陰で今の自分がある、そう胸を張って伝えたい人。

 ――バサバサ……。
 シュナイエンの頭上を一羽のフクロウが飛ぶ。
「……あ」
 見間違える筈などない。あのフクロウはこの道――狩猟者の道に進む原因。
 貴族令嬢として生まれた自分。上に2人の姉もいたし、自由にさせてもらっていた。それでも、憧れた。自由に大空を舞い、鋭く獲物を獲るフクロウに。

 ヒュゥ……。
 ふいに冷たい風が抜きぬけ、サクヤとシュナイエンはふと目を覚ます。
「……」
「……」
 お互いの顔を見合わせ、同時に小さく笑った。

 ――再会できましたか?
 雪の中を泳ぐ星霊リヴァイアサンは、そう笑いかけているようで。
イラストレーター名:たがみ千