■リヴァイアサン大祭2014『これからは、ずっと』
――リヴァイアサン大祭と引っ越し作業を終え、ユリウスとルシンは二人で一つの毛布にくるまっていた。「ふぃー……よーやく一息」
ココアの入ったマグを両手で持ち、気の抜けたような緩い笑顔で言うのはユリウス。大祭と引っ越し、両方をやるのは無茶かと思っていたから、無事に終わったことにとにかく安心していた。
「お疲れ様だね」
ルシンが口に運ぶカップの中にはユリウスのものと同じくココアがある。その甘さに癒されながら、ルシンは隣にいる相棒であるユリウスに微笑みかける。
先ほどまでの大忙しとは打って変わって静かな、心からくつろげる時間。そんな時間を楽しむように、二人はリヴァイアサン大祭の思い出を口にする。
「温泉、楽しかッたなァ」
「うん。いやー……溺れなくて良かった。本当に」
一つの毛布の中、互いの体温が近くに感じられる。
「蔦スライダー凄かったねっ」
「思ってた以上に高くて、スピードも出てて……」
温度だけではない。声も、吐息もこんなに近くにあった。
「薔薇鍵の誓いも、ご一緒ありがとう」
「綺麗だッたよね」
思い出すように、二人の緑色の瞳が細められる。
鍵は消えた。それでも薔薇鍵に誓った言葉、夜空を映した空は決して消えず、二人の心の中にずっと残り続けていた。
ルシンにとって、リヴァイアサン大祭をこうして過ごすのは初めてのこと――その新鮮さは、胸に温かく心地良い。
最後の一口を飲み欲し、ユリウスはカップを置く。
何気なく視線を上げ、顔を少し動かして部屋を眺める――ユリウスの隣には、ルシンの姿がある。
「……なんか、不思議」
いつもはこの時間には、またねと言い合って別れていた。それなのに、今日はまだ、こうして共にいる。
「僕はね、ユーリくんとの別れ際は寂しくて、この時間がずっと続けばいいのに……って、いつも思ってた」
いや、今日だけではなく、
「これからは,毎日一緒にいられるね」
「……ん」
幸せな笑顔でルシンの言葉に頷く――不意に眠気を覚え、ユリウスは仰向けに倒れる。
「ユーリくん?」
笑みはそのまま、ユリウスの目が伏せられる。ゆるゆるとしたユリウスの笑みを受けてルシンも微笑を浮かべ、「おやすみなさい」と口にした。
「……おやすみ、ルシン」
ほどなくして、ユリウスの安らかな寝息が聞こえてきた。
慈しむように、ルシンはユリウスの寝顔を見守る。
――優しく温かなこの時間がずっと続きますようにと、願いを籠めながら。