■リヴァイアサン大祭2014『今日は記念日』
大空を星霊リヴァイアサンが優雅に泳ぎ、青空から純白の雪が降り続く。街は賑やかで活気に溢れていた。
華やぐ街を並んであるく2つの影。
ヴィンツェンツの黒地に金の装飾がアクセントとなるロングコートの裾が風に翻ると、サイドテールに纏められたリセリアの髪も踊る。
他愛のない日常の出来事を笑顔で話すリセリアに、ヴィンツェンツが穏やかに微笑んで相槌を打って――そんな微笑ましい2人。
高級感のある店構えと看板の前で2人の足が止まった。
静かに扉を潜ると、店員が笑顔で迎える。
店内は落ち着いた照明で、あちこちに高級そうな指輪やネックレス等の装飾品が飾られていた。
リセリアの瞳は輝きながら、店中でキラキラ光る装飾品たちを見回す。しかし、ヴィンツェンツがリセリアの肩に手を置いて何か言うと、2人は沢山の指輪が並ぶショーケース前まで移動した。
シンプルなものから凝ったデザインのものまで様々な指輪たち。
ふとヴィンツェンツの視線を留まらせた白金の指輪があった。
まるで、リセリアの瞳のような紫水晶を銀色の輝きが美しさを引き立てる指輪。
ヴィンツェンツがその指輪を指差してリセリアに笑いかけた。
リセリアはヴィンツェンツの指の先を見ると、驚いたように軽く見開いた瞳を輝かせる。
ヴィンツェンツは店員を呼び、その指輪を見せてもらうように頼んだ。
笑顔でショーケースの鍵を開けた店員は、静かに取り出し、2人の前に差し出す。
近くで見ると、その紫水晶は普通のものより赤みが強く、本当にリセリアの瞳のよう。
店員の説明によると、宝石に加工される前、発掘された時からその色だったのだという。だから、例え同じデザインにしたとしても、同じものは決してできないのだと。
――決して他の誰にも代わりはできない、大切な少女の指にこそ輝かせたい指輪。
少し未来の約束には、これほど相応しいものはない。
ヴィンツェンツの意思は決まった。
あとは、この指輪をリセリアが受け取るだけ――。