■リヴァイアサン大祭２０１４『Live,Love,Laugh,and be happy.』
最初の出会いは、些細なことから。依頼の酒場で出会った時。最初に彼を見た時に思ったのは『まるで物語に出る、騎士』。
あれから三年、ミュゼッタは予想もしていなかった。彼と……このような日を迎える事を。
森の中にある、薔薇の庭園。
天空からリヴァイアサンの輝きとともに、雪の結晶が舞い落ちてくる。
その一角で、ミュゼッタは佇んでいた。その肢体に纏うは、花嫁衣裳。その顔を覆うは、薄布のヴェール。
周囲に居るは、花嫁と花婿の家族や友人たち。
これから、２人は『おしゃれな』結婚式を挙げる。
これから、ミュゼッタは妻となる。
彼女の目前には、これから夫となる者が立っていた。
フェルネス。ミュゼッタの愛しい人。
「……あれから、三年。……たくさんの事がありましたね」
ミュゼッタは、フェルネスへと言葉をかける。
エルフであるミュゼッタにとって、人間であるフェルネスとの出会いは、驚きの連続。彼からは、たくさんの事を、たくさんの感情を教わる事が出来た。
嵐のような、恋の激情。歩み寄り、寄せ合う愛情。
それを教えてくれた本人が、目前にいる。
フェルネスはまるで、照れているようにも見える。三年前に出会った時、水神祭都での怪盗との戦いの中で初めて出会った時。あの時と同じような、そんな感じ。
日頃の『おしゃれ』な雰囲気とは、また違う彼の一面。そんな意外な一面を見る事が出来て、意外な嬉しさをミュゼッタは覚えていた。
「……ミュゼッタ」
微笑みながら、彼が口を開く。
「……本当は、君と初めて出会った瞬間から、私は恋に落ちていたんだよ」
その言葉に、胸が痛いほどに締め付けられる。その痛み、心地よいその痛みが、胸の中にいっぱいに広がり……これ以上に無い幸福感が、体の中を満たしていくのをミュゼッタは実感した。
エルフと人間の寿命は異なる。だからこそ、フェルネスは『時の玉座』に座り……自分と同じ年の取り方を選択してくれた。自分と、同じ時を生きてくれるために。
その事に……感謝したい。
それとともに、この奇跡に、ミュゼッタ自身を望んでくれたフェルネスに、感謝したい。
「きっと……」
その感謝の言葉が、ミュゼッタの口をついて出てきた。
「きっと、私にとって。貴方は最初で最後の恋です」
滞りなく、結婚式は進み。
最後に、指輪の交換とともに誓いの言葉を口にする。
「時の流れが許す限り、彼女を愛する事を誓います」
「時の流れが尽きようとも、彼を愛する事を誓います」
誓いの言葉が交わされた後……ミュゼッタのヴェールがあげられた。
フェルネスの顔が、ミュゼッタへと近づく。ミュゼッタもまた、くちびるを差し出し……フェルネスのくちびるが、重ねられるのを感じた。
口づけを交わす２人を、世界が祝福していた。
