■リヴァイアサン大祭2014『〜 I Love You 〜』
あちこちで甘い香りが漂っていた。リヴァイアサン大祭のこの日、小川に甘い蜜が流れている。その蜜を使ったお菓子の屋台も多いのだ。
「クレープってまんまるで太陽みたいで、寒い日によく食べてましたわ」
キドーと仲良く手を繋いで歩くラサティが口を開く。
その視線の先には、温かなランタンが吊るされたクレープの屋台。
「クレープ、俺も好きなんだよな〜」
キドーも明るく笑った。
お互いに目を合わせると、頷きあって、引き寄せられるように屋台に足を運ぶ。
2人でメニューを眺めて、
「蜜煮リンゴと生クリームのクレープを1つ♪」
「俺は苺とカスタードにすっかな?」
2つの注文に、「かしこまりました」と笑顔の店主は慣れた手つきで2つのクレープを作り、差し出した。
「ラサティちゃんのも美味そうだな、一口交換すっか?」
受け取ったクレープを一口食べたキドーが、ラサティの幸せそうな顔を見て口を開く。
「はい♪ 交換ですの♪」
ラサティは、笑顔でキドーに自分のクレープを差し出した。
「じゃ、俺のも」
キドーも自分のクレープを差し出す。
お互いに交換して一口ずつ食べ、
「大発見! 二人だと増えますの♪」
美味しいくて幸せな気持ちが。
キラキラ輝く笑顔でラサティが笑った。
(「一緒になるって、こういう事ですのね」)
美味しい物でも気持ちでも、違う喜びを少しずつ交換して、更に幸せが増える。
「とても美味しいのに、食べる機会が減ってしまいそう」
幸せそうな笑みを広げた後、少し残念そうに呟いた。
将来を誓い合ったキドーが料理人を目指しているから。キドーの作るものばかりを食べて外で食べるという事が減りそうだから。
「クレープなら俺も焼けっから、ラサティちゃんの為に作るぞ? クレープも、そして飯もな」
これからずっと一緒にいるんだしな〜、と照れ笑いを浮かべて。
『俺とこれからずっと一緒にいてくれっかな?』
左手の指輪と共に、キドーがラサティに贈った言葉。
キドーの言葉に、それを思い出したラサティの顔に照れ笑いが浮かぶ。
心に太陽を貰ったみたいに、ポカポカに暖まる魔法の言葉。
「忘れないで、大事にします。今夜の事も、貴方の事も」
「俺も忘れねぇようにするな。ずっと大切にするから、ずっと傍にいてくれな」
幸せに包まれた2人には、雪の寒さなど感じない。
手にした甘い幸せのクレープも、互いの左手薬指にはまる指輪もほんのスパイスにすぎない。
大切なのは、お互いを想う気持ちと笑顔だから――。