■リヴァイアサン大祭2014『貴方と共に歩む、今までと、これからと』
窓の外では静かに雪が舞う。遠い空では星霊リヴァイアサンが優雅に泳いでいた。「乾杯」
小さな宿の一室。窓辺の席から、お揃いのグラスが鳴って、2つの男女の声が重なる。
「やっと、こうしてカザリさんとお酒が飲めるようになりました」
チナは、手にしたグラスに瞳を輝かせた。
生まれて初めて飲むお酒。好きな人と一緒に選んだペアグラス。この幸せに包まれてどんな味がするんだろう、と。
「あぁ。俺もチナと酒が飲めるようになるのを楽しみにしていたよ」
柔らかく微笑むカザリは、グラスに口をつけてその味を楽しむ。
チナもドキドキしながらグラスに口をつけ――。
「……」
ほんの少し顔をしかめた。
(「いくら20歳になったとはいえ、チナには少し早かったか……?」)
「ちょっと渋いですけど……でも、美味しい」
カザリの心配を裏切って、チナは嬉しそうに笑う。
「……改めて、20歳で大人の仲間入りおめでとう」
(「付き合い始めた時は16歳だったのに、もう20歳なんだなぁ」)
カザリは優しく口を開いて、しみじみと感慨に浸った。
「もう4年か。長いような、早かったような」
そして、ぽつりと呟く。
「ね……カザリさんは、この戦いが終わった先、どうするんです、か?」
ふとチナが問いかけた。
(「ん? いつもと少し雰囲気が……」)
もしかして酔ったのか? と思いつつも、
「ん、ああ……チナと穏やかに過ごせれば……というくらいか」
ぽつりと答えた。
カザリは、今まで多くを失い、捨て鉢に生きてきた身。なので、将来についてはあまり具体案を持っていないのが正直なところなのだ。
「どこに住んで、何をして、どんな風に暮らしたい、ですか?」
いつも控えめなチナとは思えないくらい、勢いよく質問を並び立てる。
「な、なんというか……今日はずいぶん、積極的だな?」
酒の力とは恐ろしい、そう思いながら軽い苦笑を浮かべた。
「ふふ、だって気になります……カザリさんの未来は、わたしの未来、でもあります、から」
アルコールで赤くなった顔で、にこっと笑うチナ。
「ずっと傍に、いるんですもの、ね」
そう付け加えて、20歳の誕生日にカザリから貰った指輪――婚約指輪を愛しげに撫でた。
「ああ、自分はこんなにも幸せ者なのだな」
チナの言葉に胸が熱くなって、思わず口から零れた言葉。
「私も幸せ者、です」
幸せそうに笑うチナ。その笑顔を、その笑顔だけは失くさない、カザリの胸には改めて強い誓いが宿った。