■リヴァイアサン大祭2014『星空を踊る』
星を映してキラキラ輝く一夜限りの銀盤。周りでは、楽器を持った演奏者達が準備をしている。
そう、これから『星の鏡』でのダンスパーティーが始まろうとしているのだ。
(「やっぱりちょっと緊張するな……飲み物でも飲んでおこうかな……」)
少しだけ緊張に顔を強張らせたツクヨミは、併設されたバーでソフトドリンクを頼んで一口。唇と喉を潤して、少しだけ気を落ち着ける。その時、ふわふわと柔らかい生地のドレスを纏った今宵のパートナーを見つけた。
(「あれって……ファシオさん!?」)
ツクヨミは、何度かパチパチと瞬きをしてしまう。
いつもは、カジュアルな格好をしていることの多い彼女。だが、今日は柔らかな可愛いドレス。いつも1つに纏めている髪も下ろしている。
「わ、ファシオさんドレス似合ってる! 普段見られない姿だから新鮮だなー」
瞳を輝かせて口を開く。
そのギャップにドキリとしたツクヨミだが、それは言葉にはならなかった。
(「……どないしよ、めっちゃかっこええわ……」)
普段は着物が多いツクヨミだが、今日は白いタキシード。そんな彼を目にしたファシオは、高鳴る胸を押さえて平常心を心がける。
「ありがとう。ツクヨミさんもタキシード姿、かっこええね」
高まる胸をどうにか沈めて、にっこりと笑うファシオ。
「あっという間だよねー。もう大祭なんてさ。来年の今ごろは、どうなってるんだろ……」
ファシオは、緊張をほぐすように他愛ない話を切り出した。
しかし、今が平穏なだけに、これから激しくなるだろう戦いへの不安が口をついてしまう。
「来年も、またお祭り、一緒にこよね」
その不安を汲み取ったのか、ファシオが明るく笑いかけた。
ツクヨミは、ファシオの笑顔に、はっとする。
(「……駄目だね、エスコートする側が弱気になってちゃ! 来年、来年もきっと……」)
思わず出てしまった弱気を打ち消すように、グラスの中身を一気に飲み干した。
そして咳払いを一つ。
「お手をどうぞ、お姫様?」
ツクヨミが手を差し出すと、丁度緩やかに流れ出した音楽。
ファシオがその手を取り、2人は星空のフロアへ――。