■リヴァイアサン大祭2014『奇跡への感謝を君に、秘めた想いを貴方に』
雪と氷で創られた神秘的なダンスフロアに、音楽が響き渡る。リヴァイアサン大祭の夜、光る氷雪の薔薇のホールで、クレスクリトとモニカは手を取り合い踊っていた。
曲が一段落すると、クレスクリトはドレスアップしたモニカに微笑みかける。
「お疲れ様です。……疲れましたか?」
柔らかな笑みを向けられ、モニカは首を横に振った。
「ううん、とっても楽しかったよ!」
でも、たまに足踏んじゃったり、迷惑いっぱいかけちゃったな……。
モニカはそんなふうに思って少し俯いたが、クレスクリトはちっとも気にしていないようだ。
慣れないダンスは体に響くだろうと、モニカを休める場所へふわりと手を引いて導く。
おめかしした姿で手を引かれるのは、まるでお姫様のようで……。
(「クレスが王子様だったらなぁ」)
そう心の中で考えて、モニカは自分の考えに恥ずかしくなり肩をすくめた。
クレスクリトは、そんな照れくさそうにしている彼女も可愛らしい、などと思っていたのだけれど、もちろんモニカはそれを知るはずもない。
2人はホールの端へ寄り、氷の円舞場を眺める。
(「せっかくのリヴァイアサンなんだから、今日こそは自分の気持ちを伝えようって、思ってたんだけど……」)
モニカはちらりと彼を見る。
(「タイミング、逃しちゃったかな」)
お祭りの夜、キャンドルの暖かな光で照らし出された薔薇に抱かれてなら、言えるかと思ったのだけれど。
2人の前、きらめく舞台には、無数の薔薇が咲き誇っている。
想い合うふたりの流した愛の滴が、凍れる大地を潤して咲かせたという伝説の光の薔薇……。
だから、光の薔薇は奇跡の象徴なのだという。
その話を思い出したクレスクリトは、近くの薔薇を一輪手折ると、去年のように優しくモニカの髪に挿した。
「モニカさんに出会えた奇跡に感謝して」
そう言って、再び彼女に微笑む。
奇跡の薔薇は、去年の花と同じように、モニカの金色の髪に良く似合った。
(「俺は優しく微笑んでいるだろうか」)
クレスクリトは思う。
嫌な過去も、彼女のお陰で薄らいで来れたのだから。
せめて一年に一度は、言葉にして感謝を伝えたい。
「アタシも、クレスに会えて……良かったよ!」
ありったけの大好きの想いを、薔薇に託してモニカもそう伝える。
今日もまた言えなかったけど、きっと、きっといつかは。
決意と想いを添えて、モニカも彼の胸元に光の薔薇をそっと飾った。