■リヴァイアサン大祭2014『little elysium』
1年に1度の、大切な日。多くの人たちがこの日を祝い、思い思いに過ごすだろう。
仲間たちと過ごすというのも悪くない。
そして、特別な相手と過ごす日というのもまた良いものだ。
アリーセとサラもそんな特別な相手と過ごすことを選んでいた。
2人きりの穏やかな祝いの日。2人でソファーに腰掛けて、寄り添い合い温かな部屋の空気にまどろんでしまいそうだ。
「こうして2人っていうのもなんだか素敵よね」
特別な気分になるものと、穏やかな声で呟く。
「特別……そうね。私もこうして2人で過ごす方がいいのかもしれないって、思うわ。だって、こんなに楽しかったパーティはちょっと今までなかったもの」
本当よ? と少し悪戯気に、けれど心からの言葉で念を押した。
緩やかな空気と一緒に、時の流れももゆっくりと過ぎていくかの様だ。何にも遮られることの無い幸福の時。そんな時間だから、少しだけ悪戯心がアリーセに生まれた。
自らの体を倒して、隣に座るサラの膝へと頭を乗せて。どんな反応をするのだろうかと、ついつい考えてしまう。
サラはその狙い通りに、少し驚いた表情を浮かべた。一息ついた時間だからこそ、ついつい無防備になってしまう。
「もう、アリーセったら……ビックリしちゃったじゃない。それじゃあ私もなでなでとかしちゃうんだから」
その言葉に嫌な響きはなく、楽しげな声で言葉通りに優しくアリーセの頭を撫で始めた。
「何だか小さな子供みたいよ?」
「自分でやっておいてちょっぴり恥ずかしい。………でも、なんだかこうしてると落ち着く」
何処か懐かしい様な気持ちがする。郷愁はまどろみに少しずつ吸いこまれ、意識と一緒に朧げになっていく。
もっと話していたい、一緒にいたい、この時間をずっと過ごしたいと思うのに。けれど、この懐かしく暖かい温もりに触れて眠るのも良いとも思う。
「私も……貴女とこんな風にしてると、暖かい気持ちになれるの。何だかとても安心出来る……そんな気分に」
サラはアリーセを慈しむように撫で、穏やかな水面に沈む相手に寄り添い続ける。
「大丈夫、私はずっと貴女の傍に居るもの。また、いつだってこんな風にお喋りしたり、穏やかな時間を過ごす事が出来るわ」
この時間を惜しむアリーセの内心を汲み言葉を重ねていく。言葉に何も嘘はない。何があろうとも、こうして穏やかな時を一緒に過ごすだろう。
それに安堵したのか、アリーセの唇からふと零れる言葉があった。
「おやすみ……夢の中でも、貴女と会えたらいいな」
それに、嬉しそうにサラは笑う。優しく穏やかに、心の底からの笑みで。
ずっと傍に居ると言ったのだ。なら夢の中であろうとそれは変わらない。
「おやすみなさい、また夢で、ね……」
イヤって言われても、ずっと傍に居るんだから。最後に零れた言葉をアリーセが聞こえたかは、本人だけが知っている。
特別な日も、そうでなくとも……2人は寄り添い合い続ける。