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2人でリヴァイアサン大祭

魔法剣士・クロービス
青嵐の星霊術士・エルシェ

■リヴァイアサン大祭2014『相奏』

 ――サク……サク……。
 世界樹のふもとの賑わいを抜け出した2人は、人気のない静かな街並みを歩いていた。
 降り続く雪は街並みを白く染め上げ、響くのは2つの足音だけ。
「あーあ。雪、服の中まで入っちゃってる」
 クロービスは、コートをバサバサと払いながら情けない顔を浮かべた。
「はは、オレなんか雪の上に倒れたからね……冷たくてしょうがないよ」
 並んで歩くエルシェも苦笑する。
 少し前まで、世界樹のふもとにいたクロービスとエルシェ。いつの間にか雪合戦になり、いい年した大人の男が数人全力で雪玉を投げ合っていたのだ。
 そのときの事を話す2人は、なんだかんだで楽しそうな明るい声を弾ませる。

 クロービスは『他に何も予定が無いなら』そう手紙でエルシェを誘った。珍しく緊張の見え隠れする手紙で。
 世界樹のふもとには大勢の人が集まってきて、『折角の祭、楽しまなくちゃ♪』なノリで、場を賑やかして楽しんで――、
(「そこまでは予想はしてたけど……あの抜け出し方、流石に強引過ぎたかな……」)
 ――真っ先に世界樹見に来たから、祭りはまだ見て回れてないし付き合ってくれ、なんて。
 クロービスはポケットに手を入れ、中に用意した小箱をぎゅっと握る。ずっと渡せないでいる小箱を。
(「今まで誰にでも容易だった事が、急に出来なくなるなんて」)
 頭の中が真っ白になる感覚。
(「雪でもあるまいし……」) 
 クロービスは軽く白い息を吐いて、気付いた。自分が思考の海に沈んでしまったから他愛無い会話が途切れている事に。
「……はしゃぎすぎちゃったね」
 沈黙に気付いたクロービスが振り返ると、エルシェは穏やかに微笑んでいた。
(「君はそこに共に居て、笑ってくれる。それだけで――」)
 クロービスの思考はそこまでで動かなくなった。
(「――あぁ。まただ」)
 思考も打算も真っ白に、一面の銀世界のように真っ白に染まる。でも、表情は綻んで――。
「ルーチェ」
 ポケットから出した手を、エルシェに差し伸べていた。

 君が俺に翼をくれた。
 君は共に飛んでくれるかい?
イラストレーター名:七雨詠