■リヴァイアサン大祭2014『Night On The Milky Way Train.』
静かな夜。静かに深々と降り続く雪。誰もいない廃墟に2つの影がこっそり入っていった。2つの影はぴったりと寄り添うように長椅子に腰を下ろす。
「は、カムパネルラ。寒くないかな、大丈夫かな」
年に1度の特別な夜。特別な相手と2人きり。ドキドキで頬を緩ませたアリスティドが口を開いた。
「ネルは大丈夫だよっ。アリスティドは寒くない?」
カムパネルラは少しだけ頬を染めて笑いかける。
(「こんなに近くで……ネルのどきどき、アリスティドに聞こえちゃわないかな……」)
他には誰も居ない、アリスティドと2人だけの世界のようで、カムパネルラの心臓はドキドキとうるさい。
「僕も大丈夫だよ。カムパネルラとくっついてると毛布よりあったかいから」
アリスティドもにっこり返した。
(「手も繋いだらきっと更にだ!」)
すっと自然にアリスティドの手がカムパネルラの手に重なる。カムパネルラもぎゅっと握り返した。
(「……ぽかぽか……あったかい……」)
ずっとドキドキして落ち着かなかったカムパネルラだが、手を繋ぐと、アリスティドの体温に安心しきってしまう。
「今日の空はいつもと違ってきらきらしてとってもきれい!」
カムパネルラは、安心したら窓の外に顔を向けて瞳を輝かせた。
「まっしろ世界の星空、すごくきれいだね」
アリスティドも窓の外を見て瞳を輝かせる。
「あれはサソリ? や、リヴァイアサンだ!」
そのまま雪の夜空を泳ぐ白い筋を見つけて、嬉しそうに見入った。
「ほんとだ! リヴァイアサンが星をつれてきたのかな?」
カムパネルラも、身を乗り出すように窓の外を見つめる。
「……ね、カムルネルラ。ずっと一緒に居ようね」
アリスティドは、リヴァイアサンにはしゃぐカムパネルラの耳元に、そっと秘密話みたいに呟いた。
「うん。ずっと一緒にいようね。アリスティドとネルは、ずっと一緒だよ」
カムパネルラは振り向き、アリスティドの目を真っ直ぐ見て、小声で約束する。
2人だけの秘密の約束。くすぐったくて、どちらからともなく、くすくす小さな笑い声が漏れた。
そんな2人を夢の世界が手招きしている。胸があったかくて幸せな2人は次第にまぶたが重くなって――。
「……夢の世界でも一緒に……」
カムパネルラが小さく微笑んで、アリスティドの肩に頭を寄りかける。
「おやすみ……」
アリスティドも、そっとカムパネルラの頭に凭れた。
共に星空辿る夢の中、どこまでも一緒に――。