■リヴァイアサン大祭2014『恋咲く花の物語』
ブルーだけの本――そう言ってシャラは彼に本を贈った。贈ったシャラと贈られたブルーは、枕元で本を読むことにした。
緑色の表紙の本を開くブルーの顔は、どこか嬉しげだった。枕元で読み聞かせるというのはシャラと交わした約束。その約束が叶ったことが、嬉しかったのだ。
隣にいるシャラのことも見つめながら、ブルーは本を開く。
そこに記されているのは――。
――秘密の花園を護り続けた花守の娘の物語。
娘の愛情と心は花に注がれ、健気に咲く花は娘の心を癒した。
ある日、娘は心儚い青年に出会い、まるで糸を結ぶように惹かれあう。
娘の世界は青年の色で満たされ、どんな小さな喜びも尊い幸せに変わる。
花蜜よりも甘く、時に切ない――そんな恋の物語。
ブルーの甘い声で紡がれる物語を聞くシャラの胸は、期待と愛情で高鳴っている。
シャラの期待通りにブルーの顔は赤く染まっていく――この物語が、ブルーとシャラの物語そのものなのだと気付いて。
頁の隅のお話に関わる景色の絵や押し花は、廻りゆく季節、二人が過ごした記憶と想いをシャラが描き出したもの。嬉しさと照れ臭さに思わずブルーは枕に顔を埋めてしまう。
「世界に一つ、ブルーの為だけの本だよ」
甘く幸せそうなはにかみを浮かべ、シャラはブルーに囁きかける。
枕元で物語を読んでもらうという夢を叶えてもらったというのに、シャラのブルーを求める気持ちは変わらない――恋しさも、愛しさも止めることが出来ない。
それはブルーも同じだった。嬉しい、愛しい、可愛い、大好き……深く愛せば愛するほど愛に溺れ、もっと欲しいと求めてしまう自分がいた。
「愛しているよ、シャラ」
その気持ちのままに、ブルーは言葉を紡ぐ。
「君の笑顔を護るよ。シャラの幸せを叶え続けたいんだ」
「ずっと傍にいたい」
答えるシャラの顔には満開の花のような笑みがある。
「わたしが、ブルーを微笑ませてあげたい……愛しているよ、ブルー」
色褪せることのない愛情が溢れて、ブルーはシャラへと口づけをする。
シャラは目を閉じ、口づけを静かに受け入れる。
――変わらない愛を誓いながら。