■リヴァイアサン大祭2014『大祭の夜に』
「暖を取ります。少しお待ちください」暖炉に火をくべながら、ハイドはソファに座ったシフィルに声をかけた。
街には大祭の熱気があり、その中で2人の体は温められていた。しかし、祭りの後で帰ってきた家は火を消してあったためやはり寒い。そこで、眠る前にもう一度温まることにしたのだ。
パチパチと音を立てながら炎が揺らめき、やがて燃え方が安定する。それを見届けたハイドはソファへと戻り、シフィルの隣――ではなく、シフィルの膝の上に倒れ込んだ。
「今日一日お疲れ様でした……」
ハイドに膝枕をしながら、シフィルは微笑む。シフィルの手はハイドの頭の上、優しく頭を撫でていた。
「ハイドさ……いえ」
名を呼ぼうとして、シフィルは口ごもる。
「もう……夫婦ですし、あなたと……言ったほうが、良いでしょうか?」
「んー、さん付けを取った呼び捨てでもいいんだよ?」
あやすようなシフィルの手つきを心地良く思いながら、ハイドは答える。
「今年の大祭はあなたの支えもあって、とても……とても充実しました」
安らかな気持ちで目を細めつつ、ハイドはシフィルの言葉を聞いた。眠そうな表情のハイドに、シフィルは首を傾げる。
「日々の支えで疲れたのでしょうか……?」
「支え疲れた、というよりはいつも以上に激戦続きだったから平和な空気に触れて気が抜けた、ってところかな?」
――だから目一杯甘えているんだ、という言葉はシフィルには告げず、心の中で付け足すだけ。
「これからもあなたが支えてくれるように私からもあなたを支えます……」
眠たげなハイドの目が、シフィルを見上げ、
「ですから今はゆっくり、おやすみなさい……」
その言葉で、完全に目を閉ざした。
「次回の大祭が平和になりましたら……今度は家族で、迎えましょう」
シフィルも疲れから来る眠気に抗わず、静かに目を閉じる。
「ん、おやすみ、シフィル」
――暖炉の火が消えかかる頃にハイドは目を覚まし、寝入ったシフィルを寝室へ運ぶ。
ベッドにシフィルの体を横たえて、ハイドも再び眠るのだった。