■リヴァイアサン大祭2014『鐘を鳴らす前に』
星霊リヴァイアサンが泳ぎ、純白の雪が柔らかく降り続く星空の下――。建物から「綺麗だったね」とか「幸せそうだね」とか笑顔を浮かべた者が次々と外に出てくる。
(「皆の前だからか、照れくさかったな」)
建物から人の気配が少なくなっていき、隣には最愛の人だけが残る空間。
カルディノは小さく息を吐き、少し肩の力を抜いた。
自分も外へ出ようと歩き出した時、
「カルディノ」
ふと最愛の――ダリスの声がカルディノの足を止める。
「ドレス、しっかり似合っているぞ」
照れくさそうにしているカルディノに柔らかく微笑んだ。
「このドレス、凄くその……照れるよ」
カルディノは、やはり照れくさそうに、そして、まだ少し緊張が解けていない顔で苦笑する。
「本当にこんな日が、来たんだな」
苦笑したまま、ぽつりと呟いた。
「……あぁ」
ダリスは、ゆっくりとカルディノの頬を撫でる。優しく、緊張が解けるようにと。
「……ダリス。私を拾ってくれて、有難う。肉親もなく、戦場で捨て駒になっていたあの頃は……いつ死んでもいいと、思っていた」
優しい大きな手のぬくもりに、ぽつ、ぽつと言葉を漏らすカルディノ。
執事として傍に置かれた最初の頃は、反抗ばかりしてたのに、いつも優しく包んでくれた。
「今日の私は、お前が居てくれたからいるんだ」
そこで一度言葉を区切り、真っ直ぐダリスを見つめる。
「私を選んでくれて、有難う……これからは、2つの意味で『旦那様』だな」
そして、ふわりと幸せそうに微笑んで、
「まだ暫くはお前の執事でいるさ」
笑いながら付け加えた。
ダリスは、カルディノの頬を撫でていた手はそのままに、もう片方の手でブーケを持っていない方の手に指を絡める。
「お前がどの立場でも、俺の一番大切な人だ……」
「……少し世界が落ち着いて、私も少し落ち着いたら……その時はお嫁さんに、なってみようかな」
手と頬に愛しい温もりを感じながら、カルディノは真っ直ぐダリスを見つめて微笑んだ。
「愛してるよ、カルディノ」
「これからも、宜しく。私の旦那様」
――扉が開く前に2人きりで交わされた誓いの言葉とくちづけ。