■リヴァイアサン大祭2014『二人次第』
「あ、エヴァノくん、鳩がいるよ」穏やかな公園のベンチに座るフィリアスが楽しげに口を開く。その装いは、肩口から腕を露出した黒のドレス。この平和な公園には少し不釣合い。どこかに行った帰り道といったところだろうか。
フィリアスは、露出している腕を何度かさすっていた。寒いのもあるだろうが、恐らく落ち着かないのだろう。普段は腕を絶対出さないように長袖の服を着ているから。
「さっきもね、ハトがぱーーって飛んでてとっても可愛かったね!」
隣に座る白いタキシードに身を包むエヴァノが思い出しながら明るく答えた。
「……私はトリモモが好きかな」
ハトを見ながら呟くフィリアス。
――バサバサバサ……!
公園の地面をちょこちょこ歩いていた数羽のハトが、一斉に大空へ飛び立ったのだ。まるで、フィリアスから逃げるように。
「あはは、食べられると思っちゃったのかなー?」
楽しそうに笑うエヴァノ。
「別に捕まえて食べたりしないのに、失礼な……」
フィリアスは、ぶつぶつと飛び立ったハトにむけて口を尖らせた。だんだん小さくなっていくハトを見ながら、
「そういえばあの花束って投げちゃうんだね、勿体ないな……」
ふと先程までの事を思い出して、どこか残念そうに口を開く。
「フィリアスはお花好きなの? 今度一緒に見に行こうよーー!」
その表情が本当に残念そうだったから、エヴァノは明るく提案した。
「そうだね、夏になったらヒマワリでも見に行こうか。あれは種が美味しいし」
フィリアスは、エヴァノの提案に笑顔になって頷く。
「えー? 美味しいの? そりゃリスとかは美味しそうに食べてるけどさ……」
「うん。美味しい。ポリポリしててオヤツ感覚かな」
エヴァノは食べた事がないのか、軽く小首を傾げると、フィリアスは楽しそうに言葉を弾ませた。
「フィリアスはお腹ぺっこぺこだね!」
「食べ物の話してたらお腹空いてきたよ」
笑うエヴァノに、その通りだと軽く苦笑するフィリアス。
「じゃ、帰ってお夕飯にしよっか!」
エヴァノはベンチから立ち上がると、元気に提案した。
「そうだね。帰りに買い物して帰ろっか」
フィリアスも続いて立ち上がる。
その時、雪を乗せた風が少し強く吹いた。
「……さむ」
フィリアスが小さく呟くと、ふわりとその肩に何かがかかった。
「風邪引く前に早く帰ろ!」
ジャケットを脱いだエヴァノが笑いかける。
「うん」
フィリアスは、まだエヴァノの体温が残るそのジャケットをぎゅっと抱きしめた。
「フィリアスの綺麗な腕が隠れちゃうのは勿体無いけど、風邪引いたら大変だもんね!」