■リヴァイアサン大祭2014『天上の花』
1年に1度だけ、星霊リヴァイアサンが舞う空を目指す雪と氷の魔法――天上蓮華。ばりん、ばりん――。
ねえ、どうかお願い、泣かないで。
ねえ、どうかお願い、諦めないで。
だから、どうかお願い、ずっとずっと、笑顔のままでいて。
その天上蓮華の唄はルィンとゼルディアの足元から響き、2人を包む。
「寒くねぇか?」
手を繋いで歩くゼルディアに問いかけるルィン。
「大丈夫。ルィン君は大丈夫?」
ゼルディアは、微笑んで問い返した。
「おう、大丈夫だぜ」
ルィンも、にっこり微笑んだ。
雪と氷の蓮葉が奏でる旋律に包まれ、とん、と2人が降り立つ。冬の青空めいた淡青の天上蓮華の上に。
「哀しみや苦しみを越えて咲く花……今の私は、楽しかったこと苦しかったこと哀しかったことだけじゃない。いろんなことがあったから咲くの」
ゼルディアが静かに口を開く。自分が舞台の上で綺麗に咲けるのは、色々な経験があるから、と。
「……そうだな」
ルィンの脳裏には、1年通してゼルディアと一緒にしてきた沢山の経験が浮かんだ。ゼルディアを咲かせるための栄養になれたかな、と思いながら。
「……」
ふわりとゼルディアが微笑む。それはまるで、ルィンの問いを肯定するように。
(「手の届かないお星さまみたいと想っていたルィン君……今だけは……」)
「……」
ルィンも無言で微笑み返した。
(「今だけでもゼルディアを俺だけの……」)
二人きりの今だけは――。
(「ルィン君だけの私にしてほしい……」)
それは言葉にできなくて。でも、いつも一緒にいてくれたルィンが大切で、今がとても幸せで、少しでも気持ちが伝わる様に繋いだ手をそっと握るゼルディア。
「……」
ルィンは、微笑んで手を握り返す。
(「誰をも魅了する煌めく星の様なトコも……誰にも囚われないトコも……」)
手のひらから伝わる温もりも、気持ちも――。
ひとりじめ――したい。
笑顔を咲かせる2つの想いは重なっていた。