■リヴァイアサン大祭2014『ねー!ダラン楽しいねー♪』
ラーラは作戦を練り、それを実行した。「ねー、ダラン♪ 一緒に買い出しに行かないー?」
孤児院でのパーティー。しかし見てみると、料理の数がずいぶんと少なくなっている。
料理の買い出し同行依頼に、彼……ダラントスは、無言で頷いた。
今宵は、リヴァイアサン大祭。
夜のこのひと時、夜空に輝く星々と、冷たく白い羽毛のような降り始める雪。それらを見ているだけで、どこか心が浮き立ち、心が幸せになっていくかのよう。
そんな空気の中、買い出しにと、ラーラはダラントスを連れて食料品店を訪れていた。
ダラントスは無口な人。大きな人。武骨な人。頼りになる人。傭兵な人。そして……。
ラーラの、命の恩人な人。
ラーラが危機に陥った時、この人が助けてくれた。それ以降、ずっとその後を、その背中を追って、側について歩いている。
自分の父親ほどもある年齢の、ダラントス。でも……そんなことは構わない。
こうやって、一緒に歩くだけで。幸せ……。
と言いたいところだったが、もうちょっとだけわがままな事をしたくなり……。ラーラは更なる作戦を開始する。
「あー、疲れたー! もー足が動かないー! ダラン、腕組みたいなー?」
大荷物を両手に抱え、ラーラはわざとその場にしゃがみ込む。時折、チラッ……と、ダラントスの様子をうかがいながら。
優しいダラントスの事だから、きっと手を差し伸べて、腕を組んで……いや、ひょっとしたらおんぶしてくれる……いやいや、お姫様抱っことか……。
といったラーラの期待は、全て裏切られる結果になってしまった。かの武骨な傭兵は、ラーラを無視してそのまま先を急ぎ、彼女をそのまま放置していたのだ。
「うー……ダランのばかー! 疲れた疲れた疲れたーっ!」
と、先刻までの幸せな気分などどこ吹く風。まるでわがままな幼女のように、ラーラはダダをこねて泣きわめき始めた。
ひとしきり騒いだラーラは、やがて……。
目前に、見知った武骨な手が、大きな手が差し出されているのを見た。
固く、厚く、見るからに古強者といった様相の、その手。幾千もの戦いを潜り抜け、大きな武器を扱いつづけ、実戦で鍛え上げられた者の、頼りになる手。
手の持ち主たる傭兵は、そっぽを向いていた。そのせいで……彼の顔の左側面についた、大きな古傷の痕が見える。心なしか……いや、確実に、照れている様子。
「……だから、ダランの事好き!」
閉じかけた花が再び咲くように、明るい表情を浮かべ……ラーラはダラントスが差しのべた手にしがみつき、すがりついた。
ごつごつとした感触が、頬ずりするラーラの頬から伝わってくる。
けど、それすらもラーラにとっては、とても愛しい。とても……愛おしい。
「……メリー、リヴァイアサン」
今年も良い、リヴァイアサン大祭を。その気持ちを伝えるかのように……。ラーラは、彼の手に口づけた。