■リヴァイアサン大祭2014『とある夫婦のリヴァイアサン大祭』
窓の外は雪。今日はリヴァイアサン大祭。暖かな部屋から外を眺めながら、フィルは前の大祭のことを思い出していた。
以前の大祭の日、時計の下で彼と愛を誓い合って、気付けばこうして一緒に暮らしている。
そして今年は、2人で家でのんびり過ごそうと決めた。
(「なんだか不思議なものだな」)
けれど、それがとても幸せだから、君には感謝しているよ。
そんなことを思いながら少し笑みを浮かべたフィルを、カオルが呼んだ。
「フィル、お鍋出来たよー」
「……! あ、ああ。ありがとう」
彼の声に、つい照れて慌ててしまいながらも、フィルはテーブルの前に座る。
カオルはテーブルの上に出来立てほかほかの鍋を置くと、いそいそとフィルの隣に座った。
そして盃にお酒を注ぎ、お互いにそれを手にする。
「では、かんぱーい」
「乾杯」
カオルの声に合わせて、フィルも言って微笑み、盃を軽く合わせる。
仲良く2人の食事が始まった。
話をしながら、温かい鍋を食べるフィルとカオル。
しばらく食事を楽しむと、カオルは隣にいるフィルをちらりと見やった。
(「せっかく夫婦になったんだし、甘えてもいいかな……?」)
「なぁなぁ、フィル」
カオルはフィルの肩をツンツンとつつく。
「あーん、して?」
口を開くと、カオルは自分を指差した。
「君は子供か」
「えー」
「えー、じゃない」
フィルは素っ気なく言ったが、しばらくして鍋の具を箸でカオルに差し出した。
「……ほら、あーん、するのだろう」
少し呆れたような返事をしながらも、ちゃんとリクエストに応えてくれるフィル。
そんな彼女にカオルはつい頬が緩む。
「……あーん」
やはり少し恥ずかしいな、と照れながら、フィルはカオルの口に具を運ぶ。
「あーん……。うん、フィルが食べさせてくれたから美味しい」
カオルが嬉しそうに言って、フィルもつられて笑顔になった。
こんなふうに一緒に過ごせるのが、とても嬉しくて幸せだと感じる。
ずっとこうして過ごしたい。
これからもずっと、一緒にいられるといいな。
2人は互いに思い、顔を見合わせて笑った。