■リヴァイアサン大祭2014『少し気の早いプロポーズ』
「あの、フェリシスさん……」意を決し、リェルは言葉を切り出した。
目前には、町灯りが煌めく夜景。それに、フェリシスは見入っていた。
フェシリス。リェルより年上の、リェルの婚約者。
リェルは、覚悟を決めていた。あと4、5日で自分は19歳。結婚できるまで、一年とちょっと。どれだけ長く感じたことか。だからこそ……この指輪を渡したい。
「なに、リェル?」
「……い、良い眺めですよね」
覚悟が鈍り、失敗。
「うん、すごく素敵な眺めですよね」
そんなリェルの逡巡など知る由もなく、フェリシスはにこっと笑顔。
「で、ですよね。思わず見とれてしまうっていうか……」
と、フェリシスの胸元へ視線を注いでいる自分に、リェルは気づいてしまった。
フェリシスは恥ずかしがりや。なのに……かなり、露出度の高い服を着ている。
ただでさえ、ものすごく大きな胸をしている彼女。今も、この寒い中、露出度の高いダンス用の装束の上から、外套を羽織っているといった姿。
いかんいかん、これじゃあセクハラじゃあないかっ!
心の中で焦った彼は、今度こそ覚悟する。
「で、でも! それも……」
「?」
「それも、フェシリスさんが一緒に居てくれるから、ですから」
ポケットに手を突っ込み……リェルは、指輪を取り出した。
「……ずっと、一緒に居てくれませんか?」
指輪をフェリシスへと差し出し……リェルははっきりと、彼女へそう告げた。
「? へんなリェル、もうずっと一緒に居るのに」
が、首をかしげたフェリシスは、不思議そうな口調で返答。
空振りにずっこけそうになったリェルは、何とか持ち直し……訂正する。
「ええと、じゃあ……『僕の物になって下さい』」
「……ええっ?」
今度の言葉には、フェリシスは意外そうな顔と反応を。
「……ええっと……私、もう身も心も……リェルの物だけど……まだちょっと、恥ずかしいな……」
「え?」
もじもじしつつ、顔を真っ赤にしている。
「それで……これからはリェルの事、ずっと『ご主人様』って呼んでいいんだよね?」
今度は、リェルの顔が真っ赤に。
「ご主人様って……明らかに勘違いしてますよね?」
「え? 違うの? 私に、奴隷になってほしいんでしょ?」
「違いますよ」
改めて、指輪を差し出すリェル。
「……結婚して下さいって、言ってるんです」
時が止まったかのような、沈黙が訪れた。
「……えっと、えっと……えっとね」
沈黙を破ったのは、フェリシス。
「えっとね……凄く、うれしくて……その、うん」
再び、小さな沈黙。そして……。
「……いいよ」
その言葉を聞き、リェルは、
愛しい恋人を、妻となる女性を、抱きしめた。
「あ、ありがとうございますっ!」
手の中、腕の中から伝わる、柔らかい温もり。胸いっぱいに、愛しさがこみ上げてくるのがわかる。
「……幸せに、しますから」
誓いの言葉を告げるリェル。
二人を祝福するかのように、星空は煌めき続けていた。