■リヴァイアサン大祭2014『きみがいるから、』
「とても綺麗だったね」年に1度だけ星霊リヴァイアサンの奇跡によって純白に染まった樹氷の森が。
ロレンツォは『夜の森の入り口で、待ってる』というワールドエンドの言葉に、森の入り口に赴いた。白以外の色のない純白の世界。本当に綺麗だった。感動を言葉に言い表せないのが悔しいくらい、本当に綺麗で。
流石に冬の夜、しかも雪がずっと降り続く寒空の下では体が冷えてしまうので、ロレンツォとワールドエンドは、森の近くの町まで帰って来ていた。
「すいません、グリューワイン1つとココア1つお願いするっす。ココアにはマシュマロ浮かべてもらえるっすか?」
屋台で2人分の飲み物を注文するロレンツォ。
「はいよ。森綺麗だったろ」
店主は笑顔でマグカップを2つ手渡す。
「はい! すっごい綺麗だったっす!」
ロレンツォが笑顔で受け取ると、マシュマロの浮いたココアをワールドエンドに差し出した。
「ありがと」
嬉しそうに受け取ったワールドエンドは、マグカップを両手で包んで冷えた手を温める。
「どこか座れる場所は……あぁ、あそこにしようぜ」
辺りを見渡すロレンツォが、レンガでできた花壇を指して、2人で移動して腰を下ろした。
「大丈夫? 寒くない?」
寒さで頬や鼻の頭が赤くなっているワールドエンドに、ロレンツォが優しく口を開く。
「ん……そういうレンツはどうなの?」
両手で持ったココアを少し啜るワールドエンドが問い返した。
「オレは、きみがいるから寒くないよ」
ロレンツォは、へにゃっと幸せそうに緩んだ笑顔で答える。
「……僕も」
ワールドエンドは、ぼそっと小声で呟いてマグカップを口につけた。
その言葉が嬉しくて、ロレンツォの頬は更に緩んで、幸せそうに目を細める。
(「まだまだ一緒に居たい……」)
今は想いが通じ合ったばかりでも、これからもっとこういう時間は続いていくのだろう。
それでも、今この瞬間を大事にしたくて、ロレンツォは、ゆっくりゆっくり飲み物をすすった。
2人のリヴァイアサン大祭はまだ、終わらない――。