■リヴァイアサン大祭2014『想い合う優しさ、寄り添う温もり』
窓の外は静かに雪が降り続き、世界を白く染め上げていた。パチ、パチ――。
薪の爆ぜる小さな音を奏でる暖炉。柔らかな灯りに部屋のツリーや飾りは静かな夜を彩る。
「へへ、可愛らしい顔して寝てるわ」
ソファで寛ぐトウジュは、肩にかかる心地よい重みに目元を柔らかくした。
漆黒の長く美しい髪。いつもつけているキングサリの華やかな髪飾がない、真っ直ぐで艶やかな髪は暖炉の火を映して柔らかく見える。
安心しきって眠るその顔は、いつもより少し幼く見えて――。
「どんな夢見てるんやろうなぁ……ええ夢見ててくれたら嬉しいな」
頬を緩めて呟いた。
(「でも、風邪引いたらあかんわ」)
軽く苦笑すると、キサの膝にかかっていた毛布を、そっと肩まで掛ける。
「……よし」
小さく呟くと、ソファにゆったりと背を預けた。
(「ん……こら、あかん……」)
静かで柔らかな光、そしてキサの温もりがトウジュの瞼を重くする。
「ま、どうせ寝るなら、キサの傍がええしな……」
幸せそうに微笑むと、夢の中へと歩き出した。
「……ん、今は……まだ、夜、でしょうか……」
トウジュが夢の中へと旅立ってすぐ、うっすらと目を明けたキサ。
「ええと、ここは……」
少しずつ意識を覚醒させる。肩にかかる、自分では掛けた覚えのない毛布。
「あ、トウジュさんが……」
トウジュの気遣いにキサの口元は小さく緩んだ。
(「ふふ、この毛布と、お隣さんのおかげで、あったかかったのですね」)
『お隣さん』の優しさと温もりに心まで温かくなる。
「でも、眼鏡をかけたまま、寝るのは……よくない、ですよ……」
小さな寝息を立てるトウジュに、起きないように小声で優しく囁く。
起こさないように、そうっとトウジュの眼鏡を外して、その寝顔をじっと見つめた。
優しい目元は、いつもは眼鏡越しにしか見ていないが、眼鏡を外すと、いつもより更に優しく見えて――。
「……幸せな夢を、見てらっしゃるでしょうか……」
今年は辛いことのあった1年だった。だから夢の中では幸せであって欲しい。祈りにも似た願望。
「あなたの心が冷え切らないように……このまま隣で……」
お休みなさい、小さく呟いたキサは、再び瞳を閉じた。
暖炉の温もりは、優しく2人を包み込む。
眼鏡を手にしたまま、トウジュの胸に頭を預けるキサ。
胸元に心地よい温もりを感じながら幸せそうな寝顔を浮かべるトウジュ。
リヴァイアサン大祭の夜――寄り添ってみる夢は、きっと同じ夢。