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2人でリヴァイアサン大祭

森辺の謡い・ロナ
千の緑陽・シシリー

■リヴァイアサン大祭2014『香らず花の夜に』

「お待たせー」
 手にお菓子や温かい飲み物を持ったロナが笑顔で口を開く。
「ありがとう。あ、これ美味しそう♪」
 シシリーは、ロナが持ってきたチョコレートのかかったお菓子に目をつけると、遠慮なく取って自分の口に入れた。
「美味しい?」
 片手のお菓子がなくなったことで、一緒に持っていたマグカップを両手で持って手を温めるロナ。
「うん! 甘くて美味しい!」
 シシリーは満面の笑顔で頷き、空を見上げた。
 空からは純白の雪が静かに舞い降りてくる。
「あたしも小さい頃から旅暮らししてきて雪も何度か見たけど、やっぱりエルフヘイムのリヴァイアサン大祭の雪は格別ね」
 瞳を輝かせて雪に見惚れるシシリーが楽しそうに口を開いた。
「そうだね」
 ロナは、小さな1頭立ての馬車に繋がる灰茶色の愛馬を撫でながら、ぼんやり相槌を打つ。
(「雪っていうと大祭だしなぁ……」)
 エルフであるロナにとっては、雪は大祭の日に見るものであり、それが当たり前だったせいで、シシリーほどの感激はないらしい。
「……神様の降らせる雪だからかな」
 ずっと雪を見続けているシシリーは、何かに憧れるような眼差しで呟いた。

 お菓子を食べて、温かい飲み物を飲んで、他愛ない話をして、笑って。
 いつの間にかお互いの家族の話になる。
「ぼくは家族がダークエルフだったから早い段階でアレ? って思ったんだけどねー。あんまり血の繋がりとか拘ってなかったかも」
「あたしとこは皆の素性バラバラで……家族っていうより一座って感じ」
 世間話でもするかのように軽く話すロナと、自分も家族という感じではなかったと笑うシシリー。
「ぼくもシシリーも天涯孤独? じゃあどうせなら一緒にならない?」
 ロナが笑顔で提案した。
「……あら。それってつまりプロポーズ?」
「そうそう」
 シシリーが小さく笑いながら楽しそうに問いかけると、ロナは笑顔で頷く。
「冗談とかノリではなくて?」
 ロナの軽い感じの言葉に思わず聞き返したシシリー。
「ノリではあるけど寝ぼけてはないよ?」
 ロナは笑いながら、でも、その目は真っ直ぐシシリーを見つめて答える。
「こういう夜にはロマンチックよね……OK、OK、今までと別段変わらないし」
 少しだけ夢見る乙女のような瞳になったシシリーは、すぐにロナに向き直って笑った。
「軽いねー」
 軽いノリでプロポーズをしたロナの台詞でもないような気もするが、
「こういう時は慎重すぎてもダメかな、って」
 きっと2人にはこのくらいが丁度良い。
「そんなもんかね。じゃあ、改めてよろしく」
イラストレーター名:YAB