■リヴァイアサン大祭2014『君に贈る最愛』
花の形をした柔らかい灯りだけが、他の照明を全て落とした静かな部屋を優しく照らす。大切なロゼリアが横にいるにも関わらず、ガルデニアの顔には迷いの表情が見え隠れしていた。
服の下に隠した金属が何故こんなに熱いのか。
勿論『ソレ』が発熱しているわけがない。
胸元にある『ソレ』が触れている胸を熱くする。不安と焦燥を呼び起こして。
「……」
本当は、昨日一緒に過ごす予定であった。それなのに心がすれ違い、顔を合わせたのが今。
些細なすれ違いが多い。どうしてこんなにすれ違ってしまうのか。そんなすれ違いばかりで彼女を傷つけてしまっている。本当にいいのだろうか。渡しても――。
「……クレル」
不安と迷いの中にあるガルデニアを艶のある声が名を呼ぶ。そちらに視線を向けると、柔らかく微笑むロゼリアの顔。
「それ……嵌めてくれないかしら?」
胸元を、服の中で熱を持つ金属――プラチナのリングを見つめながら左手を差し出してきた。
「……喜んで」
声に導かれるまま、首のチェーンを外して襟元から姿を現す白銀の輝き。その輝きから丁寧にチェーンを外す。そして、右手でロゼリアの左手を取り、左手で薬指にそっと通した。
「……交換」
満足そうに微笑んだロゼリアは、柔らかい笑みを広げて、その指で輝く白銀と同じデザインの少し大きい指輪を左手薬指に嵌めてくれた。
2つの輪が一か所だけ交差した、二重のプラチナリングはメビウスの輪をイメージ。途切れない永遠を願って。
彫りこまれている花模様はライラック。
白いライラックの花言葉は『美しい契り』
未来の約束の為の指輪だから。
指に咲くライラックを見つめる。そして、顔を上げるとロゼリアと視線が絡まった。ほんの少しの間見つめ合って、2人で照れくさそうに微笑み合う。
どれだけすれ違っても、こうやって顔を合わせて言葉を交わせば分かる。互いの想いが。
何度すれ違っても、このメビウスの輪のように途切れない永遠。
だから約束をしよう。未来を――。