■リヴァイアサン大祭2014『小夜啼鳥とXIの操觚者』
色鮮やかな花々の咲く庭園が、チェルシーの舞台だった。「良い舞台に着席でき光栄です」
マスターであるネルフィリアに微笑まれ、チェルシーも笑みを浮かべた。
「確か、チェルシーさん。この庭園にはお好きな花が咲いているとか」
「嗚呼、色鮮やかな花も好きだよ」
ネルフィリア、チェルシー、そしてタンディオンだけで始めた密やかな夜の茶会。三つ並べたカップにチェルシーが茶を注ぐと、湯気がふわりと浮く。その様子に、失礼、とネルフィリアは呟いた。
「同居人の分も相変わらず有難うございます」
良い香りのカップに視線を向けてネルフィリアが礼を言えば、大したことはないとチェルシーがかぶりを振る。
テーブルの上には茶の他に小さなケーキセットもある。ケーキと茶を楽しみながら、二人は穏やかに言葉を交わしていく。
和やかな談笑の時がしばし過ぎてゆく――やがてチェルシーは立ち上がり、一曲、真夜中のティーパーティのお供に歌を披露することにした。
いつか、最上の舞台で歌を披露すると二人は約束をしていた。今がその時だという思いと共に、チェルシーは神聖なる讃美歌を歌いはじめる。
地には花の香り、天には泳ぐ星霊。そして聴こえるのは極上の歌声――。
(「……とても、綺麗だと――言えたらいいのですが」)
思いながら、ネルフィリアはチェルシーの歌声に聞き惚れていた。
歌い終わり、チェルシーは緩やかにカーテシーをひとつ。二人分の拍手が、チェルシーを包み込んだ。
「チェルシーさん、その……。――好い、歌声でした」
「ありがとう」
気に入って貰えたことを嬉しく思いながらチェルシーは礼を言い、リヴァイアサンの舞う星空を仰ぐ。
「メリーリヴァイアサン。来年もきっと、三人で過ごそう」
「ええ、メリーリヴァイアサン」
華やかな歌声の残響はまだネルフィリアの耳に残っていた。
それに名残惜しさを感じつつ、ネルフィリアは言葉を紡ぐ。
「来年も。こうして……過ごしましょう」