■リヴァイアサン大祭2014『いってらっしゃい、お兄ちゃん』
柔らかく降り続く純白の雪。星霊リヴァイアサンが優雅に泳ぐ空。雪が降り続き、泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れる1年に1度の奇跡。この大祭を兄妹で過ごそう、そう約束していたシフォンとシフィル。
戦いの中で生き別れになってしまっていたが、先日やっと再会を果たす事ができた。
「ありがとう」
降る雪を捕まえ、シフォンの唇に乗せたシフィルが口を開く。雪の華が広がる丘で。
「……ありがとう、だって?」
シフォンは妹の感謝の言葉の意味がわからない。この大祭をともに過ごす事に対してだろうか。それなら自分も同じ気持ちだ、そう続けようとしたが、
「ええ、ありがとう、命を助けてくれて」
シフィルは、かつて『棘』に囚われていた自分を救ってくれた事だと、付け加える。
彼女はずっと父の仇である兄のシフォンを追っていた。しかし、自分が天啓を受けてエンドブレイカーに覚醒した事で知る事になる。兄がどんな想いで戦ってきたのかを。
「私をずっと守っていてくれてありがとう」
更に言葉を重ねた。
「でも、今日一緒に居たいのは、私じゃないよねっ」
「……え?」
急に明るくなったシフィルの言葉に、シフォンは目を見開く。
「ね、好きな人居るんだよね? 分かるよ。……生まれた時から一緒の双子だもの!」
シフィルは先日、兄のこれまでの苦悩とともに知ったのだ。そういう相手がいる事を。
「……本当に、シフィルには勝てないんだな……」
妹の言葉に、自分の気持ちを再認識したシフォンは、照れたように苦笑する。
「だからね……いってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
元気に見送る妹に、元気に返事をした兄。
シフォンがシフィルに背を向け歩き出そうとした瞬間、
「……ありがとう」
振り返ってシフィルをぎゅっと抱きしめた。その行動に一瞬驚いて、はっとしたシフィルだが、優しくぽんぽんと軽く手を叩いて体を離す。
「聞かせてね、素敵な恋人さんができたって!」
シフィルは、輝くような笑顔を咲かせ、想いを伝えたい人の下へと走る兄を見送った。