■リヴァイアサン大祭2014『雪灯』
楽しそうな笑い声や笑顔が溢れる街並み。華やかな街の灯りに降り続く雪の白が、いつもと違って見せる。
「あとは……他に何かあったっけ?」
買い物袋を両手で持っていたシツキが、袋の中身を見遣りながら口を開いた。
「んー、大丈夫、やないかなぁ……?」
ティエフェルは背伸びをして袋の中身を確認する。
――くしゅんっ。
袋から顔を背けて、小さなくしゃみ。
「大丈夫か?」
シツキが心配そうに顔を覗き込むと、
「へへ、大丈夫や。せやけど、はよ、あったかいとこで、ご馳走食べようや」
ティエフェルは、にこっと笑った。寒さで赤くなった鼻で。
「おう」
笑い返したシツキは、両手で持っていた荷物を右腕だけで抱えるように持ち直し、左手でティエフェルの右手をぎゅっと握った。
「……あったかい……おっきい手……」
シツキの手の温もりに、ティエフェルは嬉しそうに顔を綻ばせる。
(「やっぱ……笑ってる方がいいよな」)
普段、無表情が癖のように張り付いたティエフェルの幸せそうな顔。自分といる時には見せてくれるその笑顔が嬉しくて、シツキの頬も緩む。
「少しはあったかいか?」
「うん……ありがとう、なん」
シツキが優しく微笑むと、ティエフェルは満面の笑みを広げて、温かな手をぎゅっと握り返した。
ゆっくりと歩き出すと、
「あ……リヴァイアサンや」
ティエフェルの瞳がキラキラ輝く。
雪の海をゆっくりと泳ぐ幻想的な星霊の姿を見つけたから。触れる筈などないのに、思わず手を伸ばしていた。
「ん?」
シツキも無邪気に空に手を伸ばすティエフェルの視線の先を見上げる。
その姿は、2人を祝福しているように見えて――。
「あんな……傍におれて、しあわせ」
ふとティエフェルが小さく口を開いた。頬が赤いのは寒さのせいだけではないだろう。
「俺もだ」
シツキは柔らかく微笑むと、繋いだ手に更に力を込める。
ティエフェルも、ぎゅっと握り返した。
手から伝え合うぬくもり。温かくて幸せで――。