■リヴァイアサン大祭2014『師走、灯る宿り木への帰路』
「ねぇねぇっ! 喜んでくれるかなぁー!?」大小さまざまなプレゼントを抱え持ち、イバラギは大はしゃぎだった。
今日はリヴァイアサン大祭の日。いつも以上に賑やかになりそうな一日を、チドリと『おかーさん』の三人で過ごせることが嬉しくて、イバラギは笑い声を街に響かせる。
「……あぁ、そうだといいな」
言葉にはしないが、その気持ちはチドリも同じ。密かに心待ちにしていた大祭の日が訪れたことに、チドリは微笑みを浮かべていた。
小さな獣が爪を隠してはしゃぐ様子を、保護者であるチドリは微笑ましく思う。しかし、危なっかしくも思える足取りに、チドリはイバラギに声をかける。
「イバラ、転ばないように気を付けて」
「はーいっ!」
外はちらちらと雪が降って、二人の白い肌に冷たく触れる。街に溢れる大祭の熱気にほてった二人の顔には、それが気持ちよかった。
舞い降りる雪を嬉しそうに見上げるイバラギの笑い声はキャッキャと楽しげで、イバラギは上を見たままくるくると回り出す。
「とうとう転ぶなよ」
「はぁーい!」
チドリから注意を受け、イバラギの身体がチドリの隣へと戻って来る。小さな笑い声をこぼして、チドリはイバラギの手を握る。
手綱の代わりに手を繋ぎ合う二人。雪を踏んで、二人は歩く。
――来年のこの日も家族でいられるかどうかは分からない――そんな不安がチドリの胸をよぎる。
「チドリさん?」
「……いや、なんでもない」
しかし、隣にいるイバラギが屈託のない笑顔を見せてくれる間は、その不安もかき消される。イバラギの手を握る力を少し強めて、チドリは歩みを進めた。
「ねぇチドリさん、このまま帰ったら驚くかな?」
チドリの不安を打ち消すような明るい笑顔でイバラギに問われて、チドリは少し考えてから、微笑みを浮かべて答える。
「悪戯だね」
寒い冬だけれど、隣に立つ人と家で待つ人のことを思えば気持ちは暖かくて――。
――二人のリヴァイアサン大祭の夜は、こうして更けていく。