■リヴァイアサン大祭２０１４『…call me』
白く染まる静かな夜の街並み。２つのハミングが歩く。
（「あと少し……あともう少しでこの愛しい人と一緒になれる」）
カルミアは、繋ぐ手の――愛しい温もりを感じながら目を閉じた。
目を閉じて浮かぶのは、今までのこと。
何度も幸せな気持ちをくれた。
しかし、自分が本当に彼にふさわしいかという不安も湧き上がる。
（「……滑稽だね」）
昔の自分から考えたら。戦闘狂で刹那的だった昔の自分。それが、こうして誰かとの未来を見るようになるなんて。
（「カミリアも何か考えているの？」）
目を閉じて何かを考えている風なカミリアがロシェの視界に映った。
（「それは多分あなただけのもので……」）
自分は訊かず見ない方が良いのだろう。
ロシェが大人になるまで待ってくれている愛しい人。
もうすぐこの関係は変わる。ロシェが成人することで。
それはひとつの『終焉』。
（「何かが変わってしまうのかな」）
ふいにロシェの口から歌が流れなくなった。
カミリアは何かあったのかと目を開く。その目には、どこか遠い空に想いを馳せているロシェの顔が映る。
（「ロシェ……」）
その横顔が、こんなに近いのに遠くに感じられて、カミリアは再び目と閉じて俯いた。
（「僕はカミリアを愛していく。それは不変」）
星霊が音が、世界がずっと在る様に、何かが変わってもそれだけは変わらない。
ロシェの心は誓いに変わり、繋ぐ手に少し力をこめる。
（「僕達に必要なのは多分言葉じゃない」）
再び歌いだしたロシェはカミリアを見つめた。
ロシェの歌と強く握られた手にカミリアの不安はゆっくりと溶けていく。
カミリアが自然と瞳を開くと、強い意志を宿した優しい瞳が自分を見つめてくれていた。
歌いながら静かにカミリアに顔を寄せるロシェ。そっと唇を重ねてカミリアの口の中へ歌を、誓いを流し込んだ。
（「愛してる……」）
言葉にはせずとも、その想いを込めたカミリアの歌はロシェの中に吸い込まれる。
２人の想いの込められた歌は互いの口から心まで浸透して――。
