■リヴァイアサン大祭2014『平穏と喜び』
「わぁ! ホントに真っ白だね! どこも雪でいっぱいだよ!」降りしきる雪に、シャティニュエールは歓声を上げた。
シャティニュエールをはしゃがせているのは初めて見る雪と、久しぶりのタケマルとのデート。ハイテンションに笑うシャティニュエールの横、タケマルも空を見上げる。
「いやぁ、いい具合に積もってるねぇ」
空気は冷え冷えとしている。タケマルは首に巻いていたマフラーを軽くほどき、ほら、とシャティニュエールに言う。
「僕のマフラー、一緒に使おうよ」
タケマルに言われてそのマフラーに、シャティニュエールは目を留める。
そのマフラーは、シャティニュエールがタケマルの誕生日に贈ったものだったからだ。
「有難く使わせて貰ってるよ」
そんな言葉にはにかみながら、二人は一本のマフラーを巻いて歩く。
「む、あの露店、良い物を置いてる気がするなあ。見てみない?」
気になる露店があったらしいシャティニュエールの指す方向へ行けば、そこには宝石露店があった。
「うん、結構いい物だよコレ」
宝石の知識があるタケマルが宝石を凝視する間、こっそりとシャティニュエールは腕輪を買う。
(「だって、タケマルに似合いそうなんだもん」)
その思いとプレゼントを差し出したのは、宝石露店を離れてしばらく経ってから。
「エメラルドの腕輪……! もしかしてさっきのお店で?」
シャティニュエールから差し出されたプレゼントに、タケマルは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「お返しじゃないけど、僕からも」
言うタケマルが差し出したのは翡翠のイヤリングだった。
翡翠はジェダイドとも言い、平穏を表す宝石だ。
「僕があげても説得力無いかもだけどね、あはは」
「平穏の象徴か……ありがとう、タケマル!」
シャティニュエールの笑顔を見つめながら、タケマルはもう一つ隠し持っているプレゼントに思いを馳せる。
――内緒で買った指輪にはペリドット。その石言葉は『夫婦の幸福』。
(「でも、今はもう少しだけ……」)
――彼女と『恋人』を楽しみたいから。