■リヴァイアサン大祭2014『【始まり】の記念日』
――今年もまた、二人の出会った季節がやってきた。ヘカテイレスは自身の経営するバーで、カクテルを二つ用意する。グラスを両手にカウンターの外に出るヘカテイレスを、キャロルは微笑んで見つめていた。
(「もう、三年経つなんて……」)
初めて二人で出かけてから、もう三年の時が経った――キャロルはその年月を思う。
三年も経っているなんて信じられなかったが、三年もヘカテイレスと一緒にいるのだと思うと非常に嬉しい気持ちになった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、ヘカさん」
キャロルの隣に腰掛けたヘカテイレスは、手にしたグラスのひとつをキャロルに手渡す。
「――乾杯」
ヘカテイレスが言って、二人はグラスを重ねる。
澄んだ音が、二人きりのバーに響いた。
カクテルを含めば、柔らかな甘みが口に広がる。リヴァイアサンの蜜を使ったカクテルを飲むと、キャロルの顔は笑顔になった。
三年前――ヘカテイレスとキャロルが出会った時。
「覚えてる? サプライズで砂絵のカードを贈って――」
語りかけるキャロルに、ヘカテイレスは頷きを返す。
キャロルから砂絵のカードを受け取って、その一ヶ月後にはヘカテイレスはキャロルにプロポーズをしていた。
交わす言葉は出会った頃の昔話。冗談めかして語られる話はやがて過去から現在へと移り変わる。
「今年もありがとう」
ヘカテイレスは言って、今日という大事な一日を慈しむようにグラスを撫でる。
「これからも何度でも、この日を二人で祝いましょうね」
現在から未来へ――これから二人で過ごす時を、どうやって生きていきたいか。語らうことは多く、話し声はやむことがない。
「これからも宜しく」
言って、ヘカテイレスはグラスを掲げる。キャロルもヘカテイレスの動きに応えるようにグラスを掲げ、二人は再び乾杯をした。
愛しい人と過ごす、三年目のリヴァイアサン大祭。
カクテルの中の蜜よりも甘く濃く、その時は過ぎてゆく――。