ステータス画面

赤き炎の翁

アイスレイピアの魔法剣士・ダリア

<赤き炎の翁>

■担当マスター:さかき


 都市国家の夜、人通りが少なく、夜の町を照らす明かりが届かない、そんな町中に生じた暗闇の一角で惨劇が起きていた。
 惨劇の舞台となった暗闇には、赤い炎が放つ光が瞬いていた。
 しかし、その炎は闇を照らす為では無く、ただ人を害する為に灯された魔の炎であった。
 そしてその明かりによって照らされたのは、炎よりもなお赤い真紅のフードと、魔力を放つ曲がりくねった巨大な杖、さらに顔が在るべき場所に見えるのは、マスカレイドの証たる『仮面』。
 その無表情な仮面の奥から、狂気を含んだ声が漏れ出してくる。
「ふはははは! 燃えよ、燃えよ、そして終われ! 燃え尽きる事、これこそが万物の終焉に相応しいのじゃ」
 笑い声に反応して炎がさらに燃え上がる。
 その燃えている物とは、いや、燃やされている物とは人の死体であった。
 哀れな犠牲者が燃え尽きるまで、異形の仮面の主は無表情のまま、狂気の笑い声を上げ続けるのだった。

「君達に集まってもらったのは他でもない。どうやら、この前起こった殺人事件……そう、あの焼死体が発見されたあの事件だ。あの事件にマスカレイドの影が見えたのだ」
 アイスレイピアの魔法剣士・ダリアが、集まったエンドブレイカー達にそう告げた。
 いつも真面目で落ち着いた雰囲気を持つ、彼女の声が微かに感情が込められ、羽帽子の下の顔がわずかに怒りを含んでいる。
 その理由は、この前の殺人事件の被害者が、焼死というむごい殺され方をしたためか、それとも、マスカレイドの存在を許すわけにはいかないという、責任感の為だろうか。
「これ以上の被害者を出すわけにはいかない。君達には、早急にマスカレイドの正体を探ってもらいたい。エンドブレイカーの力で、被害者の死体から敵の情報を読み取ってもらいたいのだ」
 そう言ってダリアは、被害者の死体は城塞騎士の詰め所に安置してあるらしい、という情報を皆に伝えた。
「幸いと言ってはなんだが、黒焦げにされた為に身元不明の変死体として、保管されているみたいだな。一工夫して、うまく死体と面会させてもらってくれ。手段は君達に任せる」
 ダリアは腰に差してあるアイスレイピアの柄を、無意識に触りながら、さらに言葉を続ける。
「敵の正体を見極めた後に注意すべき点は二つある。一つは戦闘の場所だ。マスカレイドは普段は人間の振りをしている為、うかつに手を出せない。その為、相手の居場所を突き止めた後は絶えず監視を行い、新たな事件を起そうと行動した時に撃破して欲しいのだ」
 なぜならマスカレイドが事件を起こす時は、自分が疑われるのを避ける為に細心の注意を払って目撃者が居ない様に計らうからだ。
 敵が行動する時を見極めれば、それが最大のチャンスになるのである。
「もう一つの注意点だが、マスカレイドとなった人間は救う事が出来ない。つまり、戦闘の後に人間の死体が一つ残ってしまうのだ。だから、戦闘後は急いでその場から離れるようにしてくれ。都市の人間は、この事件がマスカレイドの犯行だとは判らない。君達が、殺人事件の犯人にされてしまっては洒落にならないからな」
 そこまで話すとダリアは、気分を切り替え、微かに笑みをうかべて、激励の言葉をエンドブレイカー達に贈った。
「君達の中にはマスカレイドとの実戦が初めての者もいるかも知れないが、皆で協力すれば確実に勝利できるはずだ。私は君達の力を信頼している」
 私は人を見る目は確かなつもりだからな、ダリアはそう付け加えると、少し冗談めかしながらこんな言葉でエンドブレイカー達を送り出したのだった。
「そうだな。敵に無事勝利した暁には、お祝いとして手料理の一つでも振舞おう。ふふ、意外かもしれないが、私の料理の腕はなかなかの物だぞ」

●マスターより

 始めまして、オープニングを読んでくださった方、ゲームに参加してくださった方、ありがとうございます。今回マスターを勤めさせていただきます、さかきと申します。
 まだまだ、経験が足りない素人マスターですが、精一杯面白い事、皆さんに楽しんでいただける様、面白いゲームである事を追求していきたいと思っております。どうか末永くお付き合いください。

 今回の敵マスカレイドは、遠距離攻撃を得意とする魔法使いタイプの敵です。
 うまい具合に接近戦に持ち込めれば戦いを有利に進める事が出来るでしょう。
 逆に距離をとって戦う場合は仲間との連携や、作戦を立てないと不利となります。炎で攻撃する事も推測できるので、色々と対策を練る事も可能なはずです。
 また、正体を突き止めたあと、敵をどうやって見張るかも問題になると思います。ぜひ皆さんで良いアイデアを出し合って考えてください。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 大鎌のデモニスタ・イシュヴァーン(c01346)
心情

マスカレイド(以下標的)を自分とは相容れない存在と考えている為、何よりも標的の殲滅を第一に考える

準備

街で買い物をし、必要と思われる物を揃える
・顔を隠す布、覆面など
・ランタン
・水袋(水は河川、水道から調達

時間が余れば、現場検証班と合流し、作業に加わる

作戦
標的の情報が判明している場合

標的を尾行し、人間を狙って襲い掛かり仮面を顕現化させたのを確認し、戦闘に突入
事件に巻き込まれた一般人は即座に逃がす

標的の情報が不明な場合

夜の街を見回り事件が起きるのを待つ
以下は上記通り

戦闘
二班に別れ、標的をはさみ撃つ形で展開
標的の逃げ場を奪い、逃走を阻止
ザネリ、スズラン、リィン、ヘルマンと連携
自身は水で湿らせたマントを纏い前衛に立つ
基本は大鎌による近接戦闘、隙を伺いデモンフレイムを放つ

戦闘終了後
火の不始末を片付け、即座に撤収する
誰かに目撃された場合、待ち合わせ場所決め散開する事を提案

● トンファーのスカイランナー・ネフライト(c01372)
【調査】
事件があった現場検証
相手の手口やら被害者の情報やらを目視&聴取

調査終わったら全員で酒場に合流

【監視】
仲間と交代しながら監視
俺は相手の視界に入らないように屋根の上とかから動向を調べる
爺さんが動きそうな挙動があれば速効で戻って連絡
その後は二班に分かれて尾行開始

【尾行】
目深な帽子着用
二班体勢、ザネリとあらかじめ決めておいたハンドサイン・夜なら明かりの点滅(布を被せたり)を利用して連絡、連携して追跡
屋根の上や物陰から気取られないように
みっけたら仲間に同じように合図して仲間と突撃
この時、二班で挟撃する
もし一般人が今にも襲われそうなら飛び出すけど、それ以外は仲間を待つ

【戦闘】
前衛
立ち回りは観察しながら皆のサポートに徹する
誰かに攻撃が集中・後衛に攻撃がいきそうなら庇う
ダメージでかい人は後衛にさがらせるよう援護する

【撤退】
倒したら素早く撤退
証拠は残すなよ

その他作戦にズレや不足があれば仲間に合わせる

● 剣のスカイランナー・ザネリ(c01572)
ヘルマン、リィンと詰め所で遺体を確認。
「僕達兄妹、事情があり他の家族と別に暮らしていたのですが、最近連絡がとれなくなりまして。身元不明の遺体の確認をさせていただけないでしょうか」
遺体前では目等を確認して犯人情報を確認。他の二人と分担し、容貌や攻撃手段、手口や犯行場所を記憶。
「ありがとうございます。人違いだったようです。安心しました。よかったな、リィ」

遺体確認と街での聞き込みで容疑者の居場所を確認し、その後ネフライトと連携して容疑者を尾行。
2班に別れ行動。

A班:ザネリ&ヘルマン&イシュヴァーン&スズラン&リィン
B班:ネフライト&スバル&イブキ&フェイクスター&ダレン

屋根の上からの尾行で発見されないようにする。
犯人が行動を起こしたら班員にハンドサインで伝え、現場に突貫。被害者に逃げるよう伝え、味方が到着するまで敵の足止めに徹する。
味方が合流したら十字剣で攻撃。
その他は、他の方の作戦に従う。

● 弓の狩猟者・フェイクスター(c02377)
……ご飯の為に、頑張ろう。

■殺害現場調査
移動中は次の被害者又は犯人のエンディングが見えないか常に周囲に目を向ける

周囲の環境状況・立地条件
街からの距離
逃走ルート
焦げ跡や炎の動きの跡
有れば攻撃開始場所の推測
攻撃推測距離の測定

以上の調査から『自分なら何処から攻撃するのが一番目撃者も無く安全に確実に相手を殺せるか』等、犯人の行動や考えを模擬実験

結果を酒場で仲間へ報告

■基本行動
作戦に沿って行動

■戦闘
B班後衛
連携を意識
障害物を利用し、物陰から狙い撃つ
但し遠距離攻撃で味方がフリになるなら、接近戦へ持ち込む
「近くても、撃てる。……貴様は違うのか?」

炎が引火したら、慌てず騒がず地面に転がり消火

戦闘終了後は速やかに撤収

■ダリアの手料理
静かに期待して(無表情のまま)料理を待つ
「いただきます」
出てきた料理は全て無表情に完食する
「うん、美味かった。ごちそうさま」
どんな料理でも美味しいと言える素晴らしい味覚の持ち主

● 大鎌のデモニスタ・イブキ(c02411)
●事前
まず、亡骸を調査してる間に…現場付近で聞き込みなどの調査をする
その後、仲間と合流したら…昼間は、2班に分かれて夜に行動できるよう交替しつつ…夜は、全員で敵の監視をする

A班:ザネリ&ヘルマン&イシュヴァーン&スズラン&リィン
B班:ネフライト&スバル&イブキ&フェイクスター&ダレン

敵が外出したら…予めローブを湿らせておき、燃えにくくした後に尾行を開始する
万が一、何事もなく数日経過した場合…
『犯人である事は分かっている、黙って欲しければ〜…』という内容の手紙をポストに入れ…現場へと呼び出してみる

●戦闘
まずは、敵の射線上から一般人がいればそちらの…
いなければ、フェイクスターさんとの間に立ちふさがった後に…黒旋風を使う(回転防御が出るまで、当てれなくても使用する)
その後も、可能な限り射線をふさぐように動きつつ…隙があれば、デモンフレイムを使って攻撃する

●事後
誰かに見つかる前に速やかに撤退する

● 大鎌のデモニスタ・スズラン(c03177)
【買出し班】
荷物持ち、水モノって重いですからね

監視は下手は出来ないのでお任せします
事が始まるまで隠れたままで

・戦闘
まずは遮蔽物確認、大樽でも建物でも。
リィンさんが回復支援に集中できそうな場所を確保

私もその近くの遮蔽物に隠れ、万一こちらに来た場合押さえに入れるように、また治療に下がる人の支援を行う


状況見て必要なら水被って前に出ます。

味方の状況が悪いなら全て出し切る積りで突撃します。
自分は余力を残して帰還なんて、全力を尽くしてる仲間に申し訳が無いですから

近接して黒旋風放ちながら敵の懐に
回転防御での持久期待しながら体力を削ります

ダメージが蓄積し、持つか怪しくなったら
デモンフレイムのギガントフレイムの一撃にかけます
決着が付くまで、可能な限り

マスカレイドの死亡確認後はさらっと撤収しましょう
濡れたり、荒れたりしてるでしょうから
余力あれば、大変そうな仲間支えながら、一人でも欠けたら意味ないですから、ね。

● 杖の星霊術士・リィン(c03201)
●遺体確認
他メンバー:ヘルマン、ザネリ
「…家族かもしれないの…一目、会いたいの…!」
って、涙ながらに訴えるの…
…許可が出たら、何が見えるか、しっかり覚える…
終わったら、詰所の人にきちんとお礼…言うね。
それから…一旦酒場に全員集合…情報交換、するよ。

●犯人確認・監視
「エンディング」の情報を他の班に伝えて、犯人の居場所探し…するよ。
見つけたら、行方不明の家族(年齢など簡単な特徴をでっちあげておく)を探すふりをしながら…さりげなくキョロキョロ…
…できれば犯人の目を見て、次の犯行に関する「エンディング」が見えないか試す…ね。
次の犯行現場がわかれば…待ち伏せ場所の確認や準備しておくの…

●戦闘:回復役
…遮蔽物や物陰に隠れ、状況に応じて回復…
敵の攻撃が【バッドステータス:炎】付ならキュア…他の人が準備してくれたお水で消えるなら…お水で消すの。
ダメージが大きいなら回復を優先…するね。

● 大剣の城塞騎士・ヘルマン(c03206)
■詰所
死体との面会はザネリ君とリィン君と一緒に行く
用件を聞かれたら『この子達に「家族の行方が解らなくなった」と相談された。
 もしかしたら此処に安置されている焼死体の事かもしれないので確認の為に連れてきた。』
と理由を話して二人を死体と面会させ、可能であれば自分も同行
出来る限り敵の容貌や攻撃手段を読み取り、他の味方と合流してその事を伝える

■戦闘
戦闘時に一般人が近くに居る場合即座に敵と一般人の射線上に割って入り、
「私達は自警団だ!アイツは凶悪な殺人放火犯だから逃げろ!」と嘘を付いて一般人を逃がす
攻撃されない様庇いつつ安全な所へ誘導
誘導後は戦闘に参加、
味方の攻撃の邪魔にならない様に接近攻撃を仕掛ける

味方が倒されそうな時は間に入り敵の攻撃を遮る

■戦闘後
敵を倒した後は仲間と共にすぐにその場を退散
負傷して動き辛い者が居たら抱えて逃げ出す

・城砦騎士らしい全身鎧(顔が隠せる兜)着用
・記載無の作戦は他の方に従う

● トンファーの群竜士・スバル(c04823)
【買出から戦闘まで】
イシュバーン、スズランと一緒に買い出しに行くよ
買う物:【ランタン&キャップライト型の灯り】【皆の顔や体が隠れる覆面や布】【水袋】
「えっと…買うものはこれぐらいでいいかな?忘れ物ないよね?」
その後皆で一旦集合して詰所班の持ってきた情報をもとに犯人探し

犯人が外出すると2班に分かれて尾行
僕はネフライト、イブキ、フェイクスター、ダレンと一緒のB班

尾行班のネフライトのサインを見逃さず素早く現場に急行する

【戦闘時】
夜の場合:頭にキャップライト装着
戦闘中は僕は敵の懐に飛び込んで前衛
トンファーコンボで素早い攻撃を行うよ
仲間の中で集中攻撃を受けてる人、特に味方の事を庇いながら戦っている人や一般人を避難させてる子には特に注意を払いつつ危なくなったら庇ったり声かけで危険を知らせようと思う
「危ないよ!気をつけて!」

【戦闘後】
「…行こう」
死体になった人物を一瞬だけ見つめて素早くその場を後にするよ

● ナイフの魔法剣士・ダレン(c05020)
【調査】
事件があった現場検証班
痕跡から手掛かりがないか調べる他、付近の住民から世間話程度に事件当時の物音やら聞き込みもする
調査が終わって全員集まったら犯人の住処を割り出す
【監視】
仲間と協力して監視する
昼間に散歩して、周辺地理も頭に入れておきたい
【尾行】
犯人が外出すると、5人ずつ2班に分けて尾行開始
手始めに一般人を装い、ネフライトの指示に従い人気の無い場所に先回りして、単独の囮役として犯人に「近くに良い宿屋でもないでしょうか」と接触してみる
武器のナイフは目立たない場所に携帯する
犯人が別の道を歩いたり普通に受け答えされたらその場を去り、自分の班に急いで合流する(ここでローブ目深に、口元も布で隠して変装する)
【戦闘方法】
近距離に持ち込めるように果敢に接近する
近距離が自分含め2名以下のとき「切り裂き」、3名以上のとき「残像剣」
【事後】
ちゃんとトドメを確認後、他人に見つからないように急いで撤収する

<リプレイ>

●検死大作戦
「……家族かもしれないの……一目、会いたいの……!」
 杖の星霊術士・リィン(c03201)は涙ながらに受付の城砦騎士に取りすがって訴える。困り果てる城砦騎士に剣のスカイランナー・ザネリ(c01572)がすかさず割り込んでフォローを入れる。
「すみません、僕達兄妹は事情があって他の家族と暮らしていたのですが、最近本当の家族と連絡がとれなくなったのです。そんなおり、この事件の話を聞きまして……どうか遺体の確認をさせていただけないでしょうか」 
 リィンの迫真の演技と、まるで立て板に水のごとく流れるザネリの言葉は、城砦騎士からいとも簡単に確認の許可をもぎ取った。明らかに他殺と思われる死体の確認は下手をすれば疑われる可能性のある行為だったのだが。
「へへ、口調、見違えたでやんしょ。三下二枚舌一般人の演技力はダテじゃねぇでやんす」
 小声で勝ち誇るザネリに、大剣の城塞騎士・ヘルマン(c03206)は彼を素直に賞賛する。しかし彼にはもう一つ心配事があった。
「リィン……君は死体、怖くないのか?」
 ヘルマンは小声でリィンに話しかける。たとえエンドブレイカーと言ってもまだ彼女は若干6歳の子供だ。凄惨な死体の確認など荷が重いのではないのだろうか。
「死体……だいじょぶ……こわくないよ。おじさまとおにいちゃんが……いるもの」
 そう言う彼女の微笑みに自分の心配は余計だったとヘルマンは思う。子供である以前に彼女はエンドブレイカーで、共に戦う仲間だ。
「……強いんだな、君は」
「……おとなはこどもの涙に弱いって、ほんとだね……」
「ほ……本当に強いな、君……」
 いや、彼女の強さに感心している場合ではない。これからが今回の任務の本番なのだから。
「こちらです」
 案内された部屋の中に安置された焼死体を三人のエンドブレイカーはしばし無言で見つめる。数日前まで生きていた人の成れの果て。しかし、今は悲しむ時でも憤る時でもない。彼か、彼女かもわからないこの死体の最後を見るのだ。この死体のエンディングを、手を下した犯人を、見極めるのだ。
 見えたのは赤いフード、一見普通に見える老人の顔、そしてなによりその顔を覆った仮面。
「ありがとうございます。人違いだったようです。安心しました。よかったな、リィ」
 ザネリは再び流暢な丁寧語で城砦騎士に挨拶すると二人を伴って詰め所を飛び出していく、この情報を一刻も早く皆に伝えなくてはならない。

●現場検証大作戦
 弓の狩猟者・フェイクスター(c02377)は被害者が見つかった現場の調査を行っていた。とんがり帽子とぼさぼさの髪からのぞく美しいクリアブルーの瞳が辺りを注意深く見渡す。被害者の倒れていた場所や地面に残った微かな焦げ後、そういった手がかりから、『自分なら何処から、どうやって攻撃するのが一番目撃者も無く、確実に相手を殺せるか』を思考する。
「聞き込みは終わったぜ、あの夜にこの辺をうろついている奴は大体わかった」
 ナイフの魔法剣士・ダレン(c05020) と、辺りで聞き込みを行っていた者達が集まってきた。事件そのものの目撃者は見つからなかったが、事件当日にこの周辺にいた人物を何人か調べる事が出来たのだ。死体の確認にいった者達の情報とあわせれば犯人を絞り込む事が出来るだろう。
 其処に買出し組も合流してきた。
「えっと……買うものはこれぐらいでいいかな? 忘れ物ないよね?」
 トンファーの群竜士・スバル(c04823)が買ってきたものを確認する。夜間戦闘用のランタン、張り込み時に使う覆面と顔や体が隠れる布、そして水袋。
「水は私が汲んで来ましたわ」
 大鎌のデモニスタ・スズラン(c03177)が購入してきた水袋に近くの井戸から水を汲んできた。これで戦闘に対する備えも完了だ。
「フェイクスター、君の方はどうだ、何か判ったかね」
 大鎌のデモニスタ・イシュヴァーン(c01346)の問いに、今まで沈黙して思考を続けていたフェイクスターがようやく口を開いた。
「……所詮はこんなものか」
 断片的な情報からの思考実験には限界がある。推測できた敵の情報はほんのわずかだ。だがわずかなパズルの欠片でも、多数集まれば全体像は見えてくる。
「よし、一旦皆の情報を集めるとしよう」
 イシュバーンの提案に皆が頷いた。そしてその全員が戦いの時が近い事を感じてわずかに緊張を高めるのだった。

●挟撃大作戦
 時は深夜、場所は人通りの少ない路地裏。迷路のように枝分かれし、ゴチャゴチャと曲がりくねったこの道は人一人を尾行するのは難しい地形であった。普通に尾行していては道を数回曲がっただけで敵を見失う恐れすらある。
 しかし、建物の屋根を縦横無人に駆け巡る事が出来るスカイランナーの二人は道などに縛られない、彼らにとっては建物の屋根とその上に広がる空間がすなわち道だ。
 トンファーのスカイランナー・ネフライト(c01372)は細心の注意を払って屋根の上を飛びながら一人の老人の姿を追う。いや、あれは只の老人ではない、今まで集めた手がかりを全て組み合わせる事で判明したマスカレイドだ。
 緊張で喉が渇き、喋れない分考えだけが暴走していく。尾行している為に自分達は明かりを点けられないが、仲間達は自分を見失っていたりしないだろうか。ザネリと予め決めておいたハンドサインの会話がもどかしい。あとさっき偶然目が会ったあの人に対して上手くごまかせただろうか。
 そんな事を考えていた時、突然ザネリの手が激しく動いた。監視していた老人の前に、近くの横道からひょっこりと一人の酔っ払いが現れたのだ。
 人通りの無い場所、警戒心の無い獲物、なんと言う好条件か、目に見えて老人から発せられる気配が変わってゆく。
 みなぎる狂気、掲げた右腕にともる赤い炎、そしてその炎に照らされるのは白い仮面。
「させねえっす!」
 しかしその炎よりも早く二人のスカイランナーは飛び出していた。ザネリが身を挺して酔っ払いを庇い、ネフライトがその二人を守るべく、敵マスカレイドに先制攻撃を繰り出す。二人の抜群のコンビネーションはマスカレイドから一人の命を守る事に成功した。しかしその代償としてザネリは負傷し、ネフライトは無力な一般人を守りながら戦わねばならなくなった。
 奇襲による混乱から回復したマスカレイドの怒りの攻撃を二人で裁くのは限界がある。もし仲間達が自分達を見失っていたらそのまま倒されていたかもしれない。しかし、
「火遊びしてると……大火傷じゃ済まないぜ?」
 大鎌のデモニスタ・イブキ(c02411)の言葉がこれほど力強く響いた事はあるまい。
「私達は自警団だ! アイツは凶悪な殺人放火犯だから逃げろ!」
 イブキと反対方向から現れたヘルマンの声に恐怖で固まっていた酔っ払いがはじかれたように逃げ出した。ネフライトとザネリが時間を稼いでいる間に、挟み撃ちの陣形が完成し、かつ無力な一般人を逃がす事にも成功したのだ。隠す必要の無くなったランタンの光がマスカレイドとそれを包囲した五人組み2チームを照らし出し、今ここに最後の戦いの準備は整ったのだった。

●最終決戦
「貴様ら何者だ。ふん、まあ良い、火に群がる虫けらの如く燃え尽きよ!」
 マスカレイドのこの言葉で戦闘の火蓋は切って落とされた。その右腕から放たれる炎が炸裂し、夜の闇を一瞬で吹き散らす。
「アンタの手の内は読めているぜ!」
 ダレンがその炎をかいくぐって敵に突進した。そう、エンドブレイカー達の事前調査の結果、敵マスカレイドの攻撃が炎によるものだと予測できていたのだ。そしてその対策の為に、エンドブレイカー達は予め用意してきた水を被って全身を濡らしていた。炎そのものは防げないが、炎が発する熱を弱める事には成功していたのだ。
 ダレンに引き続き、スバルとイシュバーンも敵に肉薄する。ダレンの残像剣が、トンファーから繰り出されるコンボ攻撃が、回転する大鎌が連続で敵に叩き込まれる。
「こざかしいわ!」
 しかし、次の瞬間赤き閃光がエンドブレイカー達に向かって弾けた。マスカレイドの全身より炎が放たれ、周りにある物体に次々に燃え広がり、そして、その炎がまるでそれ自体が別個の生き物のようにその身をよじって襲い掛かってきたのだ。
「危ないよ! 気をつけて! この炎こいつの配下だ!」
 トンファーを振り回しながらスバルが警告する。そう、高位のマスカレイドは己の配下を生み出す能力を持っている。マスカレイドを中心として燃え広がる炎は徐々にその大きさと数を増してゆき、巻き上げた灰がまるでマスカレイドの仮面のように炎の中に浮かび上がった。
「これじゃあ……近づけない……」
 負傷した仲間を回復しながらリィンが呟く。もはや状況は十対一の包囲戦ではなく、十対無数の殲滅戦に変わっていた。まともに続けたら数の力で押しつぶされる。
「でもさあ、さっきまで隠密に徹していた奴がこれだけ派手に暴れ始めたって事は、それだけさっきの接近戦の攻撃が効いてるって事だよねえ」
 イブキが必死に炎を食い止めながら、それでも欠片も諦めずに発言する。そう、彼の言うとおり戦況は絶望的ではない。どんな大軍も大将を討ち取れば勝利はこちらのものだ。
「道を作る」
 イブキに守られながらフェイクスターのファルコンスピリットが空を舞い、本体のマスカレイドを守る炎を吹き散らす。
 その動きに呼応してヘルマンが動く炎を食い止め、イシュバーンとリィンが最後の水を仲間に振り掛ける。そしてスバルが、ダレンが、リィンが、負傷したザネリやネフライトすら全ての力を使って援護する。その援護に最終的に答えた者は、
「私が貴方のバットエンドですっ!」
 スズランのデモンフレイムが放たれる。赤ではなく、黒い炎がひときわ巨大に燃え上がり、その決定的な一撃がマスカレイドの本体に炸裂した。
「わしが……燃えるのか……ひひ、そうじゃ、焼き尽くされる事こそ正しき終焉……」
 マスカレイドは笑いながら燃え尽きてゆく。只の黒焦げの死体になってゆく老人を見ながらスバルが呟く。
「悪意とか欲望とか……誰にでもあるものだけど」
 その悪意を他人に向ければ自身に帰ってくるものなのだ。強すぎる炎は自分を含めた全てのものを滅ぼしてしまう事になるのだ。
「だが、炎も欲望も正しく使えば人に光や食をもたらし、生きる希望を感じさせる」
 イシュバーンがスバルの呟きにそう答える。
「とりあえず仕事は終わりだ。急いで撤収しよう、放火の犯人にされたらたまらない」
 全ての炎が消えたのを確認したダレンの言葉に皆が頷いた。恐ろしい敵を討ち果たしたエンドブレイカー達は疲れた体を引きずりながら急いでその場を離れ始めたが、
「さて、後はお楽しみの食事会っすね」
 ネフライトのそんな言葉で皆の足取りが軽くなる。不安がる者、辛いメニューを希望する者、肉は避けたいとこぼす者とそれをからかう者、好き勝手な事を言いながら、一仕事終えたエンドブレイカー達の顔に笑顔が戻ってきたのだった。
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