<子供達に未来へ続く明日を>
■担当マスター:タカノベタカノブ
薄汚れていくつもの擦り傷のある子供達が、4人ほど狭い牢屋に押し込められていた。
同じような牢がいくつも並び、すすり泣く声が薄暗闇の中に響いている。
一人の青年が牢までやってくると、鉄格子を乱暴に蹴りつけた。
「うるせえんだよ、ガキどもが! 気が滅入るじゃねえか!」
先ほどまで泣いていた子供が、ビクンと体を震わせて、喉の奥で小さな悲鳴を漏らす。
「まだ、わかってねえのか? 売り手が決まるまで、静かに待ってねえとどうなるか……」
青年は凄味をきかせた視線で子供達をにらみつける。
金属音とともに扉の鍵を開けた青年が牢内へ入り、手近な子供の手首を握って外へ連れ出そうとする。
その先に待っていることを知っている子供は、必死で首を振って拒否を示すが、青年に応じるつもりはない。そして、子供の力ではとうてい抗えるものではなかった。
青年が癇癪を起こして子供を連れ出すのは、これまでに幾度もあった。そして、子供の泣き声と悲鳴が牢屋まで届き、やがて物音は聞こえなくなる。連れ去られた子供が戻ってくる事はない。
今回の子供もそうなった。
「こんな形でエンディングを迎える子供を見つけたの。この子は夕方にならず者に襲われて、アジトまで連れて行かれるのよ」
剣の城塞騎士・フローラは自ら知った情報を告げ、自分と同じエンドブレイカー達に対処を願った。
「犯人の正体は、子供を狙った人買い集団のようね。あなた達には攫われるはずの子供だけでなく、率いているボスを倒して、すでに捕まっている子供達も助け出して欲しいの」
実行犯そのものは、彼女も重要視していないようだ。金で雇われているだけでボスに対する忠誠心もなく、子供でなければ狙えないような小物だと判断しているからだ。
「一番警戒すべきなのはボスの存在ね。手足となる人間を追い払っても、頭が健在なら似たような事件を何度でも起こすはずだもの。幸いと言っていいのか、その日の収穫を待つためにボスはアジトにいるみたい。そこへ行けば確実に補足できると思うわ」
その時ならば廃墟に存在するのはボスと攫われた子供達ばかりで、周囲に住んでいる人間もおらず、戦闘となっても余計な邪魔は入らないらしい。
敵はボス一人のはずだが、それでも彼女は心配して警戒を促す。
「このボスはマスカレイドではないかと私は考えているの。武器として使うのは、子供に向けて振るった大きな鎌よ。マスカレイドなら他にも力を持っている可能性があるし、配下マスカレイドを召喚するかもしれないから警戒は怠らないようにしてね」
救出した子供達をどうすべきかという質問に対して、彼女は自分に任せて欲しいと請け負ってくれた。城塞騎士の詰所まで連れてきてくれれば、自分たちが責任を持って親元まで送り届けておくと。
フローラとしても話を持ち込んだ人間として、全て彼らへ任せきりにするつもりはないのだ。
「子供というのは、この街やこの国を支えていく大切な存在よ。そんな子供達の未来を、あなた達の手で守ってあげて。それがエンドブレイカーの果たすべき役割だものね」
●マスターより新人エンドブレイカーの皆さん、初めまして。私もまた新人マスターであるタカノベタカノブといいます。この世界が始まる当初から、こうして関わる事が出来たのは、非常に幸運な事だと思っています。長くおつき合いできるよう頑張りますので、共に『エンドブレイカー!』を盛り上げていきましょう。敵マスカレイドの武器は、柄の長さが身長ほどもある大鎌で、風を切り裂くことでカマイタチを飛ばすことが出来ます。 また、子供の背格好をした配下マスカレイドを5人召喚します。 こちらは両手に小さな鎌を握っており、投じるとブーメランのように弧を描いて戻ってきます。 身軽さと飛び道具で戦う敵となりますので、そのあたりにご注意ください。 |
<参加キャラクターリスト>
● 太刀の城塞騎士・タツキ(c00213)
● 弓のスカイランナー・ベニート(c00390)
● 大剣の城塞騎士・ルリム(c00665)
● 杖の星霊術士・ユミル(c00694)
● ナイフのスカイランナー・セルフィリア(c02914)
● 大剣の魔法剣士・レイヴァン(c03395)
● 竪琴の狩猟者・ユレルミ(c04147)
● 鞭のスカイランナー・クレイ(c05193)
<プレイング>
● 盾の城塞騎士・ヒロポン(c00070)
マスカレイド(略称:ボス)
【準備】
まずは全体と静かに行動。ボスを見つけたら出来るだけ、敵が壁を背にする逃げ辛い場所で攻撃を仕掛ける。存在がばれそうな余裕がない場合は即戦闘へ。
【戦闘】
(発見時、もしボスが子供を連れているような状態だったら:突撃組とタイミングを合わせてボスに突撃する。その時はシールドバッシュでうまく子供達と引き離したいな)
まずは子供を戦闘から離す。牢の中ならそのまま、外に居たら攻撃が届かないところまで後衛組に連れて行ってもらおう。俺はその間防御を固めつつ足止め重視の戦闘だ。
戦略はまずは配下→ボスの順で倒す。
配下はシールドバッシュをメインに戦う。その間基本的にボスの攻撃は耐える一択。ボスが前に出てきた場合は後衛と子供を守るため全力で止める。
配下の殲滅が終わり次第ボスを倒しにかかる。
● 太刀の城塞騎士・タツキ(c00213)
(行動指針):しなければならないのなら、連れ去られる子供達の後を追い、敵のアジトに潜入後はベニート等斥候に向く者を先頭に侵入。こちらはプレートアーマーなので無茶な行動、または音がなるような行動は慎む。(事前に音がならないように布などをはさんでおきたい)
その後に子供達を確保して、ボスが近くにいるまたはボスの所へ向かったら戦闘に移れる体制をとり、前衛に出る。
ボスが配下を呼び出したら先ずは配下を他の前衛組と共に攻撃をしかけ、ボスが前に突撃したらそれを切り上げボスへの攻撃へとシフトしていく。
(戦闘指針):戦闘が開始された時、先ずは前衛に出て配下マスカレイドを前衛攻撃組と一緒にディフェンスブレードで防御を整えた状態にて攻撃を仕掛ける。その際、星霊術師等のサポート役の術効果範囲に気をつけて行動する。
ボスマスカレイドに関してはディフェンスブレイドを使い防御を整えて、居合い斬りでボスマスカレイドを叩き斬る
● 弓のスカイランナー・ベニート(c00390)
●潜入
まず敵を探すが先に子供たちを見つけたら牢の中で少し静かに待っていてほしいと伝える
敵を発見したら逃げ場をふさぐように位置取る
もし敵のそばに子供がいるような状況ならば、iniの高い人に確保に向かってもらい、安全な場所へ移動させる
●攻撃
前衛としてタツキとレイヴァンと一緒に配下の1人を集中攻撃
どの敵を攻撃するかはお互い声を掛け合って連携をとる
まずはスカイキャリバーで近接攻撃
ボスが接近してきたらタツキとレイヴァンはボスに対峙するが私は配下攻撃継続
配下を倒したら他の配下に対処するが、弱っている敵から確実に沈めに行く
敵が複数残っている間はプラスワンもあるのでスカイキャリバー
ガッツが減ってきたら後衛に下がって弓射撃
配下やボスとの対峙の際は臨機応変に声を掛け合って対応
配下が全て倒れたらボスへの攻撃に弓射撃で加勢
●救出
牢を探し子供を救出し連れ帰る
他の参加者と連携を取り、必要であればいつでも指示に従う
● 大剣の城塞騎士・ルリム(c00665)
ポジション
前衛を担当
私たちが入ってきた入り口以外に入り口があればそれをすぐにふさぐように
【作戦概要】
相手のアジトに潜入したら敵を捜索→もし先に子供たちを見つけたら助けに来た事を伝えて牢屋の中でじっとしてるようにいう
敵発見→戦闘開始→配下を優先攻撃
細かな動きについては個別に
【行動】
戦闘前の単独行動は避けるようにするわ。一人のときに敵に発見されては間違いなくやられてしまうから
ボスの場所へ突入後すばやく状況を確認。ボスのすぐそばに子供がいたら突っ込んでボスと子供の間に立つように移動してワイルドスイングで攻撃。子供を安全な場所に移動or隠れてもらうor他の仲間にゆだねる
子供がいなかった場合は敵に逃げられないように出入り口を背にして戦う
配下→ボスの順で撃破してく
攻撃は【盾】の効果を得られるまではディフェンスブレイドで攻撃。効果を得られた後はワイルドスイングに切り替えていく
【戦闘終了後】
子供達を保護します
● 杖の星霊術士・ユミル(c00694)
【行動】
皆さんと一緒に、敵・子どもの探索を行います。
<敵と対峙時>
私は後方支援という事で、皆さんの後方より「マジックミサイル」で援護(攻撃)します。
皆さんが傷付いた場合は、攻撃を中断して、素早く「スピカ」を召喚して回復させます。
(この場合使用回数に限りがある為、ギリギリまで回復はさせない)
回復は、同じ聖霊術士のサアラさんと分担して行います。
<子どもたち>
牢の中で発見した場合は、その場でもう暫く待ってもらうよう話します。
牢の中にいない場合は、安全圏まで避難させた後に待ってもらうよう話します。
子どもたちは不安でいっぱいだろうから、笑顔で話をし、少しでも安心させるように心がけます。
<戦闘終了時>
まだ回復できるようなら、一番傷の深い人を癒します。
できない場合は、応急で処置。
子ども達には、頑張った事を褒めてあげる。
● ナイフのスカイランナー・セルフィリア(c02914)
アジト潜入後、まずボスを捜索
子供達を先に見つけた時、牢の中だったらそのままいてもらうね。本当はすぐに助けたいけど、
敵を倒してからの方が子供達も安心すると思うしっ
万が一ボスの近くにいた場合は突撃してボスから引き離すか、先に行動した仲間から預かって
安全な場所へ避難させるね!
戦闘時は敵の逃亡を防ぐ為に出入り口を背にして対峙
あたしは前衛でスカイキャリバーと切り裂きを使って攻撃。確実に倒すことを意識しながら、
積極的に皆と連携して戦う!
攻撃対象は配下を優先。複数いるから臨機応変に声を掛け合って狙う
一掃したら皆でボスを集中攻撃するよ!
敵が遠距離攻撃を使って回復を使う仲間を狙う可能性もあるから、動きに注意するね
仲間がピンチになった時はすぐフォローに回るよ!
ボスが逃げようとしたら退路を塞いだり攻撃で阻止する!
戦闘が終わったら、子供達を安心させる為に目線を合わせて笑いかけてみるね
「もう大丈夫だよっ」
● 大剣の魔法剣士・レイヴァン(c03395)
▼心境
すぐに悪党を懲らしめて助けてやっからな、もうちっと辛抱してろよ?子供達。
▼行動
夕刻に人買い集団のアジトへ乗り込みボスのマスカレイドを補足
子供達を先に発見した場合、”助けに来た”と安心させ、敵を倒して安全確保するまで大人しくさせておく
実行犯を見かけたら、殺気を込めた一睨みで黙らせる
▼戦闘
ボスの逃走を阻害する意図を含め、出入り口を背に陣取る
前衛として敵と対峙し、初手で敵陣へダッシュ
タツキ、ベニートと共に1体の配下に狙いを定めて集中攻撃
配下へはプラスワン効果を期待して残像剣で攻撃
狙った1体を撃破後、ボスに接近して応戦
ボスに対してはワイルドスイングで攻撃
裂帛の気合を込めた攻勢で、ボスの注意を眼前に引きつける
狙いを合わせるときや、危険を察したときは各自声を掛け合って対応
▼戦闘後
ボスの死亡を確認後子供達を解放・保護し、フローラの下へ連れて行く
可能ならば実行犯をふん縛って然るべき場所へ突き出す
● 竪琴の狩猟者・ユレルミ(c04147)
【心境】
私の里では子は貴ぶべき宝、財産だ。
都市も同じと思うんでござんすがね、
…ここの賊どもは違う価値を見い出している様ですな。
卑しき行いは必ず身に還る。草原の常識でござんすよ。
…と、たまにはちゃんと働かないと、
家主先生に叱られるってもんでござんすよぅ。
【突入】
夕刻。
まずは子らの捜索と頭目の探索でござんすね。
子らが先に見つかれば牢で待つよう指示。
頭目が先ならば言わずもがなすぐに討伐致しやしょう。
同時となれば面倒でござんすが…
ま、討伐が先でしょうな。
【戦闘】
私は後方からの遠距離攻撃を。
私の仕事は頭目にディスコードで牽制する事。
不協和音は好きでないですが、下衆に聴かせる曲はござんせんよ。
もし戦闘区域に子が居る場合、
子に近付く敵があればファルコンスピリットで牽制を。
鷹よ、無垢を脅かす者を齧り取れ。
頭目が先に倒れりゃ勿論配下に標的を移しやす。
弱っていそうなのから集中的にファルコンスピリット。
● 鞭のスカイランナー・クレイ(c05193)
「子供が未来の欠片にゃ、それを食いものに仕様にゃんてもってのほかにゃ。
そういう大人は大っ嫌いにゃ。
親子が離れ離れになるにょはぜったい嫌にゃ。」
幼少時に両親と死別した経験から、親子が望まずして離れ離れになる状況に憤慨する。
【口調】
おそらく猫語
自分:クレイ
他者:名前+しゃん
【行動】
夕刻にアジト潜入、単独で動かない様に。
子供達を捜索し牢の中なら事が終わり次第救出する為、今しばらく静かに待っていてくれるようにお願いする。子供がボスの近くにいる場合、突撃し鞭で腕を絡めて子供に攻撃できない様にし、引き離して安全圏へ避難させる。
ボスを部屋(もしくは牢屋に近い部屋)の出入り口、扉や窓などを塞ぐ様に半包囲で囲む。
【攻撃】
始めは配下を相手する。
配下殲滅後ボスに一斉攻撃。
臨機応変に声を掛け合いながら対応しながら、展開攻撃。
鞭で絡め取って動きを封じることをメインにスカイキャリバーは適度に混ぜつつ、攻撃。
<リプレイ>
●潜入時は夕刻。
それこそ子供一人が入りそうな大きさの袋を肩に担ぎ、男は廃墟へ入っていった。
敵のアジトを確定し、様子を眺めていた集団からは不機嫌そうな声が漏れる。
「全く……、人身売買をした挙句マスカレイドとは……」
憤慨する盾の城塞騎士・ヒロポン(c00070)の言葉に、竪琴の狩猟者・ユレルミ(c04147)は故郷を思い返した。
「私の里では子は貴ぶべき宝、財産だ。都市でも同じと思うんでござんすがね。……ここの賊どもは違う価値を見い出している様ですが、卑しき行いは必ず身に還る。草原の常識でござんすよ」
「子供は未来の欠片にゃ。それを食いものにしようにゃんてもってのほかにゃ。そういう大人は大っ嫌いにゃ。親子が離れ離れになるにょはぜったい嫌にゃ」
幼少時に両親と死別した経験から、鞭のスカイランナー・クレイ(c05193)は我がことのように腹を立てた。
「子供達を食い物にして命まで奪うなんて……許せないね。絶対ぶっ飛ばす!」
「塾で生計を立てている身としては許せない行為ですね。飯の種……もとい、教え子候補達を助けに行きましょうか」
ナイフのスカイランナー・セルフィリア(c02914)と弓のスカイランナー・ベニート(c00390)も同様のらしい。
仕事内容を知って参加を表明しただけあり、誰もが今回のマスカレイドを許せない存在として認識している。
「身軽な人間を先頭にして、アジトを探るとしよう」
太刀の城塞騎士・タツキ(c00213)がベニートを促すと、スカイランナー達が先行してアジトへ足を踏み入れる。
奥を彼らに任せ、残りは手前の部屋から探索を行っていった。
廃墟はひっそりと静まりかえっており、音を殺すために鎧へ布を詰めておいた成果をタツキは実感する。
いくつもの通路や部屋の探索を終えて、杖の星霊術士・ユミル(c00694)が扉を開けた時、息をのむ声が耳に届く。わずかな灯りによって、鉄格子と小さな人影が確認できた。
「……さらわれた子供達ね。あなた達を助けに来たの。……ごめんね。もう少しの辛抱だから待っててね?」
不安を和らげようとユミルが微笑んで見せる。
「戦いが終わるまで、ここで待っていた方が安全なのよ」
「すぐに悪党を懲らしめて助けてやっからな、もうちっと辛抱してろよ」
大剣の城塞騎士・ルリム(c00665)と大剣の魔法剣士・レイヴァン(c03395)も言葉を添えた。
「さらわれた子供はここに全員そろっているのか?」
ヒロポンの質問に子供は頷いてくれたものの、どうやら、先ほど子供が連れ込まれた事実は知らないようだ。
「まだボスのそばにいるということか?」
不意に扉が開けられその場に緊張が走った。
顔を出したのがセルフィリアだっため、仲間達からはため息が漏れる。
「奥の広間にボスがいたよ。子供も一緒みたい」
厄介な情報をもたらした彼女の先導で、一行は決戦の場へ向かった。
●戦端
扉を開け放ち、エンドブレイカー達が一斉に広間へ飛び込んだ。
「なんだ、てめぇら?」
貧弱とも見える青年は、酒器を手に侵入者をにらみすえた。
傍らにいた人さらいの実行犯は、いっそ潔いとも言える反応を示し、一番奥の扉から脱兎のごとく逃げ出してしまう。
身動きできずにいる子供を見て、二人の人間が即座に動いた。
子供と青年の間に割り込むと、大剣を構えて青年を牽制するリルム。ヒロポンは盾ごと体当たりして、青年の体を子供から突き放した。
青年が逃亡できないように、セルフィリアは背後の扉へ回り込んだ。
逆にベニートとレイヴァンは足を止めたまま、入ってきた出入り口をふさいでいた。
「何者か知らねぇけど、今の俺に勝てると思ってるのか?」
嘲りを込めて凄む声に、怯えるような人間などいなかった。
クレイ等、残りのメンバーは間合いを保ちながら青年を半包囲していく。
「我が名はタツキ。騎士の誇りにかけて子供達の未来を護らせてもらう。では、推して参る!」
青年の顔を仮面が覆った。
「そんなに守りたいなら、せいぜい子供を傷つけないように頑張るんだな!」
青年に召還された小柄な配下マスカレイドは、エンドブレイカーの作る包囲の内側で、さらに小さな円陣を組むように出現した。その数は5体。おそらく、青年の犠牲となった子供達であった。
事前に配下マスカレイドを倒すと決めていた彼らは、まず仮面を被った子供達から倒さねばならない。
「子供に対してひどいことをするのは許せないわ。あんな未来、絶対に起こさせるものですか!」
自身の子供と重ね合わせて、ルリムは子供を後方に下がらせた。
威嚇も兼ねて大剣を大上段に構える。
(「どうか子供たちを守るために力を!」)
亡き夫に祈りつつ、彼女は配下マスカレイドめがけて大剣を振り下ろした。
前衛を務めるメンバーはほぼ一対一で戦いの臨んでいた。
クレイの振るった鞭が、子供の腕に絡みついて攻撃を封じる。その隙をつき、後方でチャンスをうかがっていたユミルの3連ミサイルが直撃した。
その攻撃が配下の注意を引いてしまう。
「やらせないよっ」
いち早く気づいたセルフィリアが、急降下とともにナイフを突き出して相手を買って出る。
対峙している子供へ集中していたヒロポンを、飛来した風が切り裂いた。放ったのは、大鎌を手にした仮面の男だ。
配下との戦いに手を取られ、ボスはほぼフリーの状態かと思われた。
「あまり体を動かすのは好きやせん。心強いお仲間もおいでだ……」
ユミルと同じく後方に位置するユレルミが、涼しい顔で竪琴をかき鳴らす。
「……サボってる? 合理性、でござんすよ」
ディスコードに破壊音波が、離れた距離から青年マスカレイドへ襲いかかった。
●決戦
「ちっ。ガキの姿ってのはどうにもやり辛ぇ……」
レイヴァンは無意識に手加減しているのか、残像剣の回数も控えめであった。
子供は容赦なく鎌を投じて、レイヴァンの体に裂傷を刻んでいく。
代わりに、彼と組んでいたタツキのディフェンスブレイドと、ベニートのスカイキャリバーが攻撃を加えていた。
確実に敵を仕留めるべく、この三人だけが組んで戦っている。
追撃のチャンスを活かして、ベニートはギロチン斬りで配下を倒した。
「まずは一体目ですね」
つぶやいたベニートが負傷する。肌を裂いた風で血の飛沫が舞った。
配下を始末した彼らへ、青年マスカレイドが歩み寄ろうとしていた。
「ボスは頼みます」
事前の打ち合わせ通り、青年を二人に任せてベニートは、配下の掃討を優先する。
これまでくわえタバコを宙へ放り、レイヴァンは大剣でタバコを切り裂いて見せた。
「手前勝手に子供の未来を閉ざすたぁ……、その腐った性根、断ち斬ってやるぜ!」
それまでの鬱憤を晴らすかのように、レイヴァンはダッシュして大剣を叩きつける。
ユミルは回復役を担うのが自分一人だったため、これまで回復アビリティの使用を控えていた。
「大丈夫ですか!? 今回復します!」
ボスとの遠距離攻撃の応酬で深手を負ったユレルミのために、彼女は杖を抱きしめる。
「スピカ、お願い……」
召還された星霊がユレルミをなでなでして力を取り戻させた。
「……さて、仮面の子らは生きているか死んでいるか」
配下の子供達に哀れみを感じつつ、彼は竪琴をかき鳴らしてボスに毒残響音を浴びせるのだった。
「っと、ごめんね!」
配下マスカレイドの肩を踏み台にして飛び上がったセルフィリアが、スカイキャリバーによる頭突きを成功させる。
「いたたた……、キミ石頭過ぎだよっ」
仕掛けた本人が左手で頭を押さえつつ、涙目で訴えている。
「クレイの技の練習台ににゃってにゃ」
彼女の捕縛撃が、手法を変えて幾度も配下の体に絡みついた。まだ試行錯誤中なのか、変な縛り方となって逃げ出されてしまうことも多々あった。
投じられた鎌を受けて負傷を重ねるヒロポンだったが、足を止めるどころかむしろ戦意を高ぶらせていく。
「どこ見てるんですか。こちらですよ!」
壁を蹴って飛び上がったニートが参戦し、真上から敵に向けて矢を降らせる。
訪れたチャンスに、ヒロポンは盾を掲げて突進し、さらに殴りつけることで叩きのめした。
これまで、ディフェンスブレイドを主体に戦っていたリルムは、防御の成功率があがったと感じ、戦法を切り替える。ワイルドスイングによる薙ぎ払いと不意打ち蹴り。最後のダブルスイングが命中して、配下を葬り去った。
●結末
「援護します!」
ユミルのマジックミサイルやユレルミのディスコードが、横合いからマスカレイドを狙い撃つ。
「よそ見をするなよ。貴様の相手は俺だ!」
敵の注意を引きつけるべく、レイヴァンは気迫の攻勢でワイルドスイングを繰り出した。
タツキは後方のサポートを受けられる間合いを保ちつつ、居合い斬りで太刀を一閃させる。
大きな円を描いた大鎌がタツキに傷を与えて、ユミルに回復を強要する。
タツキと入れ替わるように、ヒロポンとルリムが前衛に加わり青年へ挑みかかった。
「おじさん、縛られるのは好きですかにゃ」
担当していた配下を倒し、クレイが挑発とともにマスカレイドへ鞭を伸ばす。
「あばよ、仮面野郎! この剣戟を冥土の土産に逝きやがれっ!」
ダブルスイングによって、レイヴァンの大剣が青年を負傷させた。
マスカレイドの反撃がレイヴァンを押し返すと、ダッシュで飛び込んだセルフィアがナイフを連続で突きを放つ。
「残りはキミだけだよっ!」
「くそがぁっ! てめぇらなんかにっ!」
9人のエンドブレイカーから集中攻撃を浴びながら、マスカレイドは大鎌を手に荒れ狂う。
時間の経過と共に力を削られていった青年の胸に、タツキの太刀が一閃して背中まで貫いた。この一撃がマスカレイドを滅ぼし、青年に死をもたらす。
死体を見下ろしながら、ルリムの手がペンダントらしき物を握りしめる。
「貴方……私はうまくやれたかしら?」
細いチェーンを通した指輪は、亡き夫との思い出の品だった。
「もう大丈夫だよっ」
戦いの一部始終を見ていた子供に、セルフィリアが笑いかけた。怯えてはいたが子供の体には傷一つ存在しない。
その傍らで、ベニートは懐事情もあり、使用した矢を使い捨てにできず拾い集めている。
敵を倒し終えた彼らは、救出を約束していた子供達の元へ駆けつけた。
「よく頑張ったね。もう、おうちに帰れるよ♪」
笑顔で話しかけながら、ユミルは見つけた牢の鍵で子供達を解放していく。
「もう、安心だぞ」
声をかけながらヒロポンが力強く肩をたたく。
「後は、この子達をフローラの元へ連れて行くだけだな」
満足感を得ながら、レイヴァンは泣いている子をなだめようと、肩車を試みていた。
「この子達を直接家まで送っていけたら、夕飯くらいはごちそうになれたんでしょうね……」
ベニートの漏らした即物的なつぶやきを、仲間達は無言のままに聞き流した。
エンドブレイカー達が子供達の瞳を覗き込んでも、そこに不幸なエンディングを見ることはなかった。