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闇夜に舞う銀月のロンド

アイスレイピアの魔法剣士・ダリア

<闇夜に舞う銀月のロンド>

■担当マスター:志羽

●闇の中に浮かぶ銀色
 夜の帳が落ちきった刻限、事件は起きる。
 今夜の寝どこはどこにしようかと、ふらりふらりと歩く男が細く暗い路地に一人いた。
 そして、その男の後ろを少し離れてついていく影が一つ。
 男はついてくる影には気がついておらず、歩みの速度は変わらない。
 男の後ろをついてゆく影の頭上には仮面がついていた。
 その仮面の主は男を標的と定めたのか、一定の距離をもって様子を見ているかのようでもあった。
 やがて仮面の主は腕を上げる。その腕の長さは、仮面の主の身体からすれば長すぎるほどのもので、両手にはぎらりと鈍く光るダガーが一つずつ。
 仮面の主は男との距離を縮めるべくたんっと軽快に一歩を踏み出す。
 ひゅんっと風の音がしたかと思い、男が後ろをむけば闇の中に浮かんだ銀色の刃が二つ、踊るように円を描きながらこちらへ向かってくるではないか。
「な、うわあああっ!!」
 突然襲い来る攻撃に男は叫ぶことしかできない。
 人の気配がないこの場所では、助けが現れるという希望を持つことはできなかった。
 叫び声の後に残ったのは、ずたずたに切り刻まれ赤を纏うことを余儀なくされた男と、ダガーを持つ仮面の主、マスカレイドのみ。
 マスカレイドはもう動かない男の足をがしっと掴み、その体をずるずるとどこかへ引きずっていくのだった。

●凶行の痕跡
「まずこれを見てほしい」
 アイスレイピアの魔法剣士・ダリアは、難しい顔をしながら見てほしいと言ったものに対して、視線を移した。
 人通りの少ない路地。この場所に飛び散った赤い血の痕跡。
 そして、路地に残る何かを引きずったことでできたであろう、ところどころかすれた赤い道。
「最近似たような血の痕跡を他にも見つけ、調べているうちにマスカレイドではないかという結論に至ったのだ」
 血なまぐさい事件が起こったと思わせる痕跡がまた一つ、増えた。
 もしかしたら、この事件を起こしている犯人は、今この瞬間も誰かをその手にかけようとしているのかもしれない。
 そんなことを見過ごすわけにはいかないのだ、とダリアは力強く言った。
「これだけの血の跡があって、襲われた人が生きているとは残念ながら思えない。この何かを引きずっていく跡は、この先にあるごみ捨て場へと続いている」
 この場所以外の凶行の痕跡でも見られた、何かを引きずった跡は、途中で途切れたりし、結局どこへ向かっているのかはわからなかった。
 だが今、目の前にあるこの跡は、ごみ捨て場へと続いているのだ。
 状況から考えて、死体はごみ捨て場へと持って行かれたと思うのが妥当なところ。
「この先にある、ごみ捨て場は生ゴミを捨てて堆肥とする場所だ」
 生ゴミを捨てて堆肥とするごみ捨て場。
 調理の際などにでたゴミが、朽ち果てながら入り混じっているということだ。
 そんな場所ならば臭いが強烈であることもたやすく想像できる。
 死体の臭いをごまかすのも簡単。そして次から次へとごみが捨てられるのだから、死体もどんどん埋もれてしまい、見つかりにくくなってゆく。
「ごみ捨て場から被害者の身体を探し出し、何が起こったのかその身体から情報を得れば犯人の正体は分かるだろう」
 そこまで言って、ダリアはきりりと表情を引き締め、言葉を続けた。
「犯人の正体がわかったら、新たな犠牲者を出す前に倒してほしい」
 そこでダリアは一度息をつき、この場にいる全員の顔を順々に見つめる。
 そして言葉を続けて、というような雰囲気にダリアはまた話し始める。
「マスカレイドはいつもは普通の人とは変わらない姿をしている。マスカレイドとしての姿を現す時まで監視しながら待つのは歯痒いが、相手も慎重に動いているはずだ」
 普通の人として潜んでいるマスカレイド。
 マスカレイドを叩くタイミングは、彼らが行動を起こす時が一番良いだろうとダリアは言う。
「マスカレイドが行動を起こす時は、標的とした者を狙う時のはず。その時を狙って戦ってほしい」
 ダリアはそれぞれを見回しつつ、言葉の続きを紡ぐ。
「マスカレイドを倒したら、すぐその場を離れてくれ。もし一般の人に目撃されていれば、マスカレイドだった者を殺した犯人とされてしまうだろうから」
 くれぐれも気をつけ忘れないでほしいとダリアは念を押す。
「相手は私たち一人一人よりも強い。油断は禁物だが協力すれば勝てる相手だろう」
 一対一では勝てない相手だが、力を合わせれば倒せるはず。
 一人でマスカレイドと対するわけではないのだからと、ダリアは皆を力づける。
「よろしく頼む。皆であれば、良い知らせを届けてくれると信じている」
 ダリアはそう言って、ごみ捨て場へと向かう者たちを送りだすのだった。

●マスターより

はじめまして、志羽と申します。
β版シナリオ、沢山惹かれるシナリオがあると思います。その中で私のシナリオに目を通していただけて嬉しい限りです。私なりのできる限りでともに世界を紡いでいけたら幸いです。
と、このように改まっておりますが緊張でカチコチなだけでそのうちはっちゃけてくると思います。

さて、この皆さんの行動はごみ捨て場から始まります。そこで身体を見つけまず情報入手。
犯人を見つけ、戦うことになります。
戦闘に現れるのは皆さんの標的であるマスカレイドと、その配下となる3体です。
この配下3体はマスカレイドとお揃いのダガーを持ち切ったり突いたりなどの攻撃をしてきます。
マスカレイドは、痩身であり体格の割に腕が長いです。
その長さを活かしつつ両手に持ったダガーで切ったり回転しながら攻撃してきたりします。
皆さんが強力すれば、勝てない相手ではありませんので頑張ってください。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 太刀の狩猟者・シキヤ(c01155)
心情
ん、闇夜に乗じてマスカレイドが徘徊してるなんて、
まったく物騒なものです

調査
まずはゴミ捨て場で遺体を探しですね。
もし被害者の遺体を発見できたら
犯人の情報を得る為に傷の状態の調査と、眼を覗いてみます
「ん、御冥福をお祈りします……」

◆犯人が特定できた場合
もし遺体から特定できなかった場合は、
被害者を探し護衛&現場付近で張り込み
定期的にゴミ置き場に集まって情報を共有します
「何か犯人に繋がりそうないい情報はありましたか?」

戦闘
私は前衛担当です
手下を倒すまでは敵が後衛までいかない様に押さえ込み

手下が倒れたらマスカレイドに総攻撃。

最初は太刀で、GUTSが1/3を切ったら一旦下がって弓で攻撃
もし敵が後衛を狙いだしたら弓で牽制をします。

呼称
基本「〜さん」
敵「アナタ」

● アイスレイピアの星霊術士・ヒナ(c01283)
■流れ■【1】ゴミ捨て場で遺体を探し、犯人の情報を得る。(エンディングから情報を得る)
その際、もし人が来た場合、尋ねられたら「大事なものを間違って捨ててしまったので探している」と答える
→【2】犯人が特定できた場合。全員で犯人の監視。
→【3】特定不可能の場合。被害者を探し護衛&現場付近で張り込み。定期的に集まり情報を共有する。
調査中正午と夕方にゴミ捨て場にて情報交換
→【4】戦闘。

戦闘になったら、即座に武器を構え、まず手下に攻撃を仕掛けてく。
足を狙い、相手の動きを鈍くさせるように狙っていく。
なるべく相手に休む暇を与えないように間合いを詰めながら攻撃を繰り出す。
近くの傷付いた仲間が更に攻撃を受けそうな時はすぐにそちらの手助けにいく。もしくは敵から離れて、その人に回復を行う。
手下を殲滅したら、マスカレイドに集中して皆で攻撃。その際、後衛になり、主に回復を行って前衛の補助をしつつ、危なくなったら助ける。

● ソードハープの魔曲使い・シュウ(c02053)
ゴミ捨て場でエンドブレイカーの力を使い、死体から犯人へとつながる手掛かりを探す。
犯人を特定したら、マスカレイドとして行動を起こすまでは監視。

マスカレイドの正体が現れたところで戦闘開始。
前衛にて攻撃。
回復人員の仲間に極力負担がないようにソードハープのアビリティ「十字剣」で配下を攻撃していく。
あとのマスカレイドとの戦闘に備え前衛のトリニティ、シキヤ、ナツミ、ヒナ、シャルリートと共に後衛の援護を受けながら配下3体を素早く倒す。

最後に残る敵はマスカレイド。
この段階で、近距離攻撃アビリティで戦闘可能な仲間が多い場合、後衛にまわり「誘惑魔曲」でマスカレイドに徐々にダメージを与え前衛を援護。前衛の誰かのGUTSが2分の1に達した場合、一番にその仲間と交代し前衛にて「十字剣」で戦闘を行います。
配下撃破後、近距離攻撃の戦力が明らかに低い場合には前衛のまま「十字剣」で戦闘を行います。

● 鞭の星霊術士・シャルリート(c02223)
◆調査
基本は指示に従って行動する
人がきたら、探し物をしているって誤魔化す
探し物は本当だし嘘ついてないもん
遺体が見つかったらまずは黙祷。その後眼を見る
他になにか手がかりがあるか調べてみよう

犯人がわかったときは、犯人を監視
犯人がわからなかったときは、被害者探して護衛と現場付近で張り込み
なにかわかったらゴミ捨て場に集合だね

◆戦闘
前衛担当

攻撃は捕縛撃
手下を攻撃、手下全員倒したらマスカレイドを攻撃
回復は様子を見て、前衛で傷ついたひとがいたらする
マスカレイドの攻撃範囲に入らないようにと、ひとりにならないように心掛ける

「小さいからってなめてちゃ痛い目みるんだぜ!」

一人称:オレ

● 杖のデモニスタ・シェリーローズ(c03076)
■行動
ゴミ捨て場に向かい遺体を探す。必要なら明かりを用意。
他にも人がいて(来て)見咎められた場合には
「大事なものを間違って捨ててしまったので探している」
と対応。人払いを。

遺体が出たら情報を得るため、まずその瞳を見る。
死者の瞳だとしてもこの力なら最期の想いは受け取れるかもしれない。
傷の形状等も確認して、得た情報は皆で共有。

●犯人が特定出来た場合
全員で犯人を監視。傍から見て怪しまれないよう適度に距離を置く。

●犯人が特定できなかった場合
街中に散り次の被害者を探し現場付近を張り込む。
正午、夕方、日没後はゴミ捨て場に集合して情報交換。

■戦闘
撃破順:配下3体→マスカレイド。

私は後衛からマジックミサイルを使用。
攻撃時は皆で対象を揃え確実にダメージを重ねる。
敵数を減らせれば前衛や回復手の負担の軽減にも繋がるだろう。
陣形を維持する為にも移動は必要最低限に留め、ひたすら攻める。

戦闘終了後は急いで現場を離れる。

● 杖の星霊術士・ナシャ(c03314)
【調査】
まずはゴミ捨て場へ直行。
被害者の外傷等から、犯人が何らかの痕跡を残していないか調べる。
瞳も覗き、エンドブレイカーの力で情報を掴めないかも試してみる。

犯人を特定できた場合は出没しそうな場所へ赴き、発見次第監視。人気の無い所へ移動してくれたら戦闘を開始する。

出来なかった場合はとにかく街中を駆け回り、被害者候補を足で探す。
正午と夕方に集合し情報交換を行う。

【戦闘】
位置は純後衛。
敵味方をアビリティの範囲に納められるギリギリの、再奥に陣取る。

行動は回復優先で余裕がある時に攻撃。
攻撃する場合は周りの後衛陣と狙いを合わせ、
マジックミサイルで集中攻撃する。
自分で選ぶ場合はなるべく敵の数を減らす為消耗していそうな敵から狙う。

回復は疲労や傷が目に見えて酷い場合に星霊スピカで行う。
何度か使ってどれ位回復するか感覚を掴んだら
全快一歩手前に無駄なく回復出来る様、狙ってみる。

● 弓の狩猟者・トルセ(c03840)
悲劇に終止符を打つために全力で頑張りますよ!

ゴミ捨て場で遺体を探し、犯人の情報を得ます。
怪しまれた場合の言い訳は、『大切なものを誤って捨ててしまったから探しています』で。
犯人が特定できた場合は全員で犯人の監視に移りますが、
特定できなかった場合は能力を使って未来の被害者を探し護衛します。
外見が花売りの少女なので、
「お花、いかがですか?」と言いながら人の目を覗き込みます。
定期的にゴミ捨て場付近に集まり情報を共有し、
護衛にうつります。

「不謹慎かもしれませんが、戦闘前にはどうも血が騒いで仕方がないです。
いい戦いになることをっ!」

後衛ですが、場合によっては前衛に来ることも。
前衛が疲労した頃を見計らってすぐにでも交代できるように構えています。
序盤は雑魚を減らすことに重きをおきます。

弓攻撃:「逃がしませんよっ!」

ファルコンスピリット:「(鷹に向かって)よろしく、ね。……行けっ!」

● トンファーの群竜士・トリニティ(c04578)
ゴミ捨て場で遺体を捜し、遺体の目を見ることで、
エンドブレイカーの能力で、犯人を特定できないか試す。
万が一、一般人に捜索を見られた場合、
ゴミと一緒に間違って捨てたものを探していると
ごまかす。

犯人を特定できなかった場合、遺体の損傷や遺留品から、
犯人を導き出す。

犯人を特定できたら、その犯人を監視し、
戦闘に持ち込めるタイミングになれば全員で仕掛ける。

犯人が特定できなかった場合は、犯行現場の周囲を
周り、仲間と定期的な合流(ゴミ捨て場)をして情報交換しつつ、
エンドブレイカーの能力、遺体から得た情報を
もとに犯人を特定させる。

■戦闘
前衛を担当。
トンファーコンボで、仲間と連携しつつ、
雑魚から確実に仕留めていく。
GUTSが半分を切った場合、後衛にいる前衛に
出ることのできる仲間と入れ替わる。
交代できる相手がいなければ、全力で持ち堪える。
また、敵の攻撃が回復アビの使い手に向かないように、
極力挑発、位置取りをする。

● アックスソードの城塞騎士・ナツミ(c04761)
★目的
マスカレイドとその配下3人の打倒よ!

★行動
1.ゴミ捨て場で遺体探し&情報収集
→亡骸から犯人の痕跡を探すわ!犯人の持ち物の遺留品とかを重点的に。
→怪しまれた時の言い訳は「落し物探してるの!」

2-a.犯人特定時
犯人を見つけて、後はみんなで犯人を尾行するわ!必要なら囮も試みるわよ!

2-b.犯人未特定時
その時点での情報を元に、散開して犯人探索!
→エンドブレイカーの力で、被害者を探せた場合、それとなく護衛するわ!
→または殺人現場付近での張り込み。場合によっては囮役も買って出るわ!

2-a、2-bどちらでも、犯人&被害者探しのために正午、夕方にごみ捨て場に集まって情報交換するわよ!

★戦闘
→最初はわたしは前に出て、目の前の敵と直接やりあうわ!
→ディフェンスブレイドと十字剣を交互に使って、一気に畳み掛けるわよ!
→GUTSが半分以下になったら回復されるまで後ろに下がるわ!

→4人戦闘不能者が出たら、負傷者を担ぎ撤退!

● 大鎌のデモニスタ・ゼディス(c04777)
【思考】
血の痕が残っているという事は遺体の移動は隠蔽目的ではなさそうだな。
まぁ詰めが甘いだけかもしれないが。

【事前準備】
まずは道具の調達を行う。まさか素手で掘り起すわけにもいかないだろう。少なくとも俺は嫌だ。

【調査】
調査方法は四つ。
・遺体の負傷状態からの凶器及び死因の推測。
・エンドブレイカーの能力で遺体からでも情報を得られるのか確認。
・犯行現場と被害者(性別、体格、職業)から、次に犠牲になりそうな人間の予測を立てる。
(例えば犠牲となった人間がどの程度の頻度で犯行場所を通過、または使用していたかで
偶然巻き込まれたのか、特定の人間として狙われたのかを推測する)

・犯行現場と街中を散策し、関連しそうなエンディングが視える人間を捜索。

4つ目は最終手段だ。視える確率も予測すらできない。
余裕があるか、または情報収集に行き詰った時に行う。

【戦闘時行動】
配置は後衛。遠距離攻撃手段で牽制、排除を行う。

<リプレイ>

●ゴミ捨場の中で
 臭いが鼻をさすかのような場所。
 そこでゴミの山を掘り返し、遺体を探す事はとてもきついものだった。
「こういうのってあたしの出る幕じゃないと思うんだけど!」
 高らかに叫びながらアックスソードの城塞騎士・ナツミ(c04761)はゴミの山をざっと掘り返す。叫んで少しスッキリしたのかナツミはまた真面目に捜索を再開。初陣はかっこよく、と思っていたのにやっているのはゴミ捨場でのちまちまとした捜索。叫びたくも、なるわけだ。
「おっと。人が来たかもしれない。見てくる」
 トンファーの群竜士・トリニティ(c04578)は物音を聞きつけたのか、ゴミの山を下りていく。
 誰かが来たかもしれない、というのは建前でこんな臭いの中での調査は御免被る! と少しばかり隅へと退避しに行ったのだった。わかりやすく言えばサボりタイム。
「悲劇に終止符を打つために全力で頑張らないといけませんね」
 きりっと表情を引き締めたまま、弓の狩猟者・トルセ(c03840)は呟く。
 掘り返してもゴミばかり。捜索範囲はどんどん広がっていかざるをえない。
 広いゴミ捨場から犠牲者の身体を探し出せるのだろうか、と思ってもやらねばならないのだ。
「事件の現場には血の痕がそのまま……遺体の移動は隠蔽目的ではなさそうだな。道具を調達してきた、必要だろう」
 気になることがあると離れていた大鎌のデモニスタ・ゼディス(c04777)はゴミを掘り返すための道具を持って仲間たちに合流した。
 ゼディスが離れていたのは近隣の酒場などから情報収集をするためだった。一日にでるゴミの量と捨てられる時間帯や、血の痕から経過時間を推測してどのあたりかの予測をつけるためだった。
 鞭の星霊術士・シャルリート(c02223)はその予測を聞き、手袋をもう一度しっかりと嵌め直すと場所を変えてまたゴミを掘り返す。
 結果が出ないまま遺体の捜索を始めてから数時間、もうすぐ薄暗くなり始めるといった頃あいのことだった。
 ゴミの山を崩すように蹴っていた杖の星霊術士・ナシャ(c03314)は近づいてくる者に気づき、視線を向けた。
 一生懸命探していた杖のデモニスタ・シェリーローズ(c03076)もつられるように顔をあげそちらを見た。
 そこにいたのはゴミ袋を持ち、ゴミを捨てに来たことが一目瞭然の初老の男。
「ゴミを漁っても良いものはないですよ?」
「大事なものを間違って捨ててしまったので探しているのだ」
 シェリーローズは男にそう答え、側にいたアイスレイピアの星霊術士・ヒナ(c01283)も探し物を手伝っているのだと声をあげた。
「そうですか、みつかるといいですね……じき暗くなりますから、お気をつけて」
 男は離れ、自分が持っていたゴミを捨てて立ち去っていく。
「ん、あのあたりは……まだだった気が……」
 なんとなく男の姿を追っていた太刀の狩猟者・シキヤ(c01155)は男がゴミを捨てた場所を見つめる。
 その場所を少し掘り返すと変色した血がこびりついた手が現れた。
 これは、と思い皆を呼びその場所を一気に掘り返せば身体に無数の切り裂かれた痕を持った遺体がそこに埋もれていたのだった。

●マスカレイドの姿
 掘り出された遺体には刃物で切り付けられた無数の傷跡のみ。
「理不尽に命を奪われ、悼むものすらなくゴミに埋もれて……どんなに無念だったろう」
 最初にシェリーローズが瞳を覗き込み、皆も続く。
 覗き込んだ瞬間、見えてくるのは暗闇に浮き上がる銀色。
 それはダガーだった。
 両手にダガーを一つずつ持ち襲い来る者。その頭上にはあるのは仮面。
 抵抗する間は無く身体は切り裂かれるのみ。
 そして最後にみえたのはマスカレイドの顔だった。
 その顔は先ほど数人がみた顔、そのもの。
「さっきの……」
 シェリーローズはこみあげる思いをぐっと堪えながらその心に解決を誓う。そしてそっと、ただ優しく遺体の瞼を下ろした。
「まだあいつがこの場所を離れて時間はたってないしすぐに追えば見つかるはずだよ」
 ナシャの言葉に異論を持つものはいない。
 だがその前に自分たちへ情報を与えてくれた遺体へ向き直る者もいる。
「ん、御冥福をお祈りします……」
 シキヤは言葉を投げ、トルセは手向けの花を捧げる。
「殺しただけじゃなく、遺体をゴミ捨て場にすてるなんて……許せない。これ以上犠牲者を増やさないためにも、がんばらないと……!」
 シャルリートの言葉にシェリーローズは緑の瞳に決意を浮かべ頷きを返す。
 まだ先ほどの男がこの場を離れて少し。
 ゴミ捨場から街へ向かう途中には分かれ道がいくつもある。
 網目のように拡がる路地を見える範囲で覗き込みながら一向は犯人を探していく。
 と、ヒナが覗き込んだ路地の先。後ろ姿であったが先ほど見た姿があった。
「間違いない、あいつだ」
 ヒナはその腰にあるアイスレイピアに添えてある片手にぐっと力をこめた。
「おい、誰かのあとをつけてるみたいじゃないか?」
 トリニティは身を乗り出し、目を細める。
 その視線の先、探し求めた人物の前には、一人の小さな少女がいた。
「次を許すわけにはいかない。必ず終わらせる」
「ん、その通りだね……」
 シェリーローズの言葉にシキヤは相槌を打ち、シュウはこれからすべきことを口にする。
「このまま行動を起こすまで監視だな」
 気づかれず、見失わず、だがすぐ反応できる距離を保ちながら犯人を追った。
 と、しばらくするとその場の雰囲気ががらりと変わる。
 男は立ち止り、その頭上には先ほどまでなかったはずの仮面。
 そして腕は長くなったように見え、その両手にはダガーが握られていた。
 それはマスカレイドの姿以外の何でもない。
「今だ!」
 誰が叫んだか、それが戦闘開始の合図。

●共に踊りてかわすは刃
 狙われていた少女は声や物音に気付いてぱっと後ろを見た後、驚いたのか走って逃げ始める。
 少女を追おうとするマスカレイドへと遠慮なしに叩き込まれたのは数本の魔法の矢。
「あなたの相手はこちらです」
 シェリーローズの放った魔法の矢はマスカレイドの意識を引き寄せた。
 どこからともなくマスカレイドと同じダガーをもった者たちが現れ、立ち塞がる。
 その一人を魔法の矢が三つ、そして五つと連続で綺麗な軌跡を描き敵を撃ち抜いて消えていく。
「ていうかー、その仮面辛気臭くてイラつくんだよね。さっさとボッコボコにしてイイ? ちょっとは色男になるんじゃない」
 言葉よりも行動のほうが早いナシャのその表情は強気。意気込みは十分だ。
「ん、闇夜に乗じてマスカレイドが徘徊してるなんて、まったく物騒なものです」
 配下と思われるマスカレイドにシキヤは太刀を向ける。
 走りこみ、精神を統一しその胴めがけて水平に太刀を振るった。
「不謹慎かもしれませんが、戦闘前にはどうも血が騒いで仕方がないです。いい戦いになることをっ!」
 シキヤの攻撃の後、間を開けずトルセは己の気持ちを矢に乗せるように胴と足を撃ち貫く。
「キミの相手は僕だよ……」
 ヒナはまた別の敵と向かい合いアイスレイピアを鞘から抜く。そのアイスレイピアをくるりと一度回し、それを構えながら相手へと突っ込んでいった。
 ヒナの攻撃は受け止められ逆に反撃を受ける。マスカレイドのダガーがひゅっと音を立てながら顔の横を通り過ぎていくのが視界に入った。
 戦闘が始まれば、あとはそれぞれがやることをするだけ。ゼディスは掌から黒い炎を生みだし敵へと放つ。
「あたしを怒らせたこと、後悔させてやるわよ!」
 ナツミは一気にこの事件の犯人へと突撃し、踏み込んでアックスソードを振り下ろした。その攻撃は阻まれるが一人で戦っているわけではない。
「小さいからってなめてちゃ痛い目みるんだぜ!」
 ナツミの後ろからシャルリートは飛び出し、敵の腕へと鞭を巻きつける。
「狙われてるぞ!」
 トリニティの声が響く。その声に反応したシャルリートは鞭を捌き直し、ダガーでの攻撃を防御する。
「こちらだ」
 隙をついてシャルリートを攻撃した敵をシュウがソードハープで縦、そして横と舞うように身を翻しながら十字に斬る。
 連続するダメージを受けてもマスカレイドが倒れる気配はまったくなく、その強さを感じさせる。
「トリニティさんの攻撃をうけやがれ!」
 トリニティは身を低く沈め、トンファーで、そして蹴りでの攻撃を連続で織り交ぜ繰り出す。
「援護します」
 トリニティの攻勢を見て、シェリーローズは追い風を送るかのごとく魔法の矢を降らせる。
 さらにナシャもそれに合わせ攻撃を行えば、ダメージは確実に積もっていく。
 もう一押しというところ、トルセは狙いを定め弓を引き絞る。
「逃がしませんよっ!」
 力の限り放たれた矢が胴を貫けば敵の身体はざらりと崩れゆく。
「まず、一人」
 ゼディスは確認するように呟きシキヤの攻撃に合わせる。
 掌から立ち上った黒い炎は大きくつのったところで放たれ、その炎は敵を焼き消してしまう。
 ヒナは最後に残った配下に向かいアイスレイピアを振るう。その腕を凍らせ、胴を突き刺せばその場所から凍りつき、やがてがらりと敵の身は崩れ去った。
 残るは、犯人たるマスカレイドのみ。ナツミ、シャルリート、そしてシュウが抑えていたがその攻撃力などは配下よりも高く、未だふらつくこともない。
 だがここからは攻撃を一人に集中できる。有利な状況ではあるが、油断はできない。
 今まで一番攻撃を受けていたのはナツミ。その身体にはダガーで斬られたあとがいくつもあった。
 回復が必要とみてナツミに向け、ナシャは星霊スピカを呼び出し走らせる。星霊スピカはナツミの傷をぺろりと舐めて治し、そしてその場から姿を消した。
 だが少し回復しただけ、ヒナも傷だらけだったがナツミを優先して回復に力を貸す。
 その間にも早く倒すために、と攻撃は敵へと連続してたたみかけられる。
「私の歌の虜となるがいい……」
 後ろへ下がっていたシュウは髪紐をソードハープの切先で切った後、剣を地に突き立て歌い始める。
 ハープの音にのりマスカレイドへと届いた歌は警戒心を薄れさせ守る力を落とす。
 そこを狙ってトリニティがトンファーでの強烈な打撃。
 身体は傾くがまだ攻撃の意思があるマスカレイドはその長い腕を使い、目の前にいるトリニティへと連続で切り付けてくる。
「ぐっ……!」
 その攻撃をギリギリで持ちこたえれば、仲間たちはその姿に応えるかのように攻撃する。
「幕引きは僕等がくれたげるよ!」
「最後にしよう」
 ナシャが発するのはいきいきした声、対象的に静かに、だがその中にしっかりと強さを持つシェリーローズの声が重なる。
 そして声とともに攻撃も重なりあう。
 二人合わせての攻撃はマスカレイドの身体へと魔法の矢の雨を突き立てる。
 無数の矢に身体を撃ち抜かれ、大きく揺らいだマスカレイドの様子から体力がすり減っていることは明らか。
 一番近くにいたシキヤはこれを逃さずと間を詰め、太刀を鞘から抜き鮮やかに一閃した。

●終曲
 最後の攻撃を受け、仮面がばきりと音をたて真っ二つに割れて消える。
 それと同時にマスカレイドとなっていた男は道へと倒れた。
 じんわりとそこに赤い色が広がる。
「終わった……か……」
 男の沈黙は終わりを意味する。
 ゼディスの呟きを機にそれぞれ手に持っていた武器を収める。
「ここにいちゃまずいんだったな」
 この場にとどまっていてはだめだ、とトリニティは皆を促す。人気はないとはいえ、もしこの状態を誰かに見られたら犯人となるのは自分たちだ。
 傷を負っていてもそれを治療するのはあと。この場から迅速に離れるのが今すべきことだった。
「大丈夫か?」
「これくらい平気だよ」
 平気と言っても治療せずのままはつらいはず。ヒナの背中を励ますようにそっと支え、シェリーローズは歩みを速めていく。
 トルセも弓を一度抱え直すとそれに続く。
 段々皆の歩調は速くなり、やがて駆け足になる。
「貴方の死を悼んでくれる人が一人でもいること、祈っておいてあげるわ」
 ナツミはマスカレイドだった者の姿を肩越しに一度振り返り呟いた。
「それにしても、オレ、臭いが……」
 戦い終わって、今まで気が向かなかったことにシャルリートは気づく。
 ずっとゴミを漁って身体についた臭いは時間の経過ではとれない。
「確かにこれはいただけないね! うわー……」
 ナシャは臭いに眉をしかめる。これはとてもひどい。
「ゴミとかも漁りましたし、においが移ってないといいのですが……と思ってましたが遅かったみたいですね。帰って最初にするのはお風呂みたいです」
 シキヤは苦笑しながらそういえばナシャはそれを肯定して頷き返す。
 遠ざかる戦いの場には走り去る足音の響きではなくシュウが残す優しい旋律が小さく反響していた。
戻るTommy WalkerASH