ステータス画面

逃亡の先にある希望

剣の城塞騎士・フローラ

<逃亡の先にある希望>

■担当マスター:清澄ゆかた


 ある居住区の正午、家々に住む人たちは仕事に出ており、家には誰も居ない。
 そんな中、必死に家々が立ち並ぶ路地裏をすり抜けるように男は走る。
 その隣には、男に手を引かれて息を切らしながらも必死に走る男の恋人がいた。
 ある組織の手下だった男はボスに恋人を横取りされそうになり……恋人と手に手を取って逃げた。
「早く、早く逃げないと……逃げないとっ!」
 恋人に、自分に言い聞かせるように男は言う。
 細い路地裏へ逃げ込もうとしたが、男の元手下仲間たちが先回りをしていた。
 それが何度も続き、胸が張り裂けそうになりながらも、男たちは必死に走り続ける。
 少しでも止まったら、殺される。
(「あそこまで行けばっ、あそこまで行けばもう追いつかれる心配は無いはずっ!」)
 細道の出口が見え、男は安堵しながら出口を抜ける。
 これでもう、逃げられた……そう思っていた。
 だがそれは……。
「残念、お前たちは逃げられねぇよ」
「あ……あぁ……」
 出口を抜けた直後、笑みを浮かべたボスが……立っていた。
「分からなかったのか、オイ。何で簡単にここまで逃げられたって思ってたんだぁ? 答えは簡単だ、お前たちは誘い込まれたんだよ、オレによ」
 その言葉に、男は力なく崩れ落ちる。
「さぁ、アジトに戻って、お前は女の前でオレが打ち殺す。そして、女はオレの物になる……連れて行けっ」
 ボスの掛け声と共に、男は元手下仲間たちに両脇を押さえられた。
 恋人の叫び声が聞こえた、きっと男と同じように拘束されたのだろう。
 男が理解した。
 自分たちは逃げることが出来ないのだと……。

「皆さん、新たなマスカレイドを発見したわ」
 そう言って、剣の城塞騎士・フローラは説明を始めた。
 時刻は、正午。場所は居住区の路地、男は恋人と共に路地を逃げているが、このままでは路地の出口でマスカレイドである組織のボスに捕まり、手下と恋人はアジトへと連れ戻され、殺されてしまう事だろう。
「恋人同士を力で引き裂くって言うのはダメじゃないかしら?」
 愚痴りつつ、フローラは素振りをする。……考え事をしているのだろう。
「皆さんが現場に着いたら、彼らは逃げてる最中だから、先に彼らをかくまって上げて欲しいのよ。そうすればマスカレイドも何時まで経っても現れないから向こうから寄って来るはずよ」
 あ、それと。と言ってフローラは付け加えるように言う。
「幸い、この時間帯は周り家の人たちは出払っているから激しく行っても大丈夫ですよ。……それでマスカレイドなのですが、怒り狂っている組織のボスですね」
 筋肉質な体型をしているため、力があり、体力があるように見える。
「それと戦闘が始まったら、ボスのマスカレイドの他に、ボスの側近のナイフを持っているマスカレイドが2人と、ボスの愛犬だった犬型のマスカレイドが1匹が現れるわ」
 側近は中肉中背の男たちで、側近と言っても付き従っているだけ。
 犬は猟犬の一種なのか、細い身体をしている。
「組織もボスが倒れたら自然と無くなると思うわ。そうしたら手下さんたちは追われる心配は無くなるはずよ」
 フローラが素振りを止め、エンドブレイカーたちを見る。
「マスカレイドが引き起こす悲劇を止めるため、皆さんの力を貸してもらえないかしら?」

●マスターより

初めまして、清澄ゆかたです。
ここまでの長々としたオープニングを読んでいただき、誠にありがとうございます。
抱負として掲げるならば……『お客様にコレは参加しないとっ!』と言うような面白いお話を書けるようになる。ですね。
それにはまず、頑張らないと行けないってコトです!

シナリオ補足ですが、マスカレイドの能力はこんな感じです。
・ボス:動きが鈍いが、攻撃力と体力が高い。攻撃方法は、殴る蹴ると言った肉弾戦。
・側近:元が元なので仮面を着けて平均です。攻撃方法は、持っているナイフを使った攻撃とボスへの支援。
・愛犬:きっと、可愛がられてました。犬なのでスピードは高いですが、代わりに攻撃力・防御力はありません。攻撃方法は、噛み付きや引っ掻きと言った攻撃をします。
まだまだ不慣れですが、これからよろしくお願いいたします。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 杖の星霊術士・バシル(c00004)
■作戦
奇襲班、保護班1、保護班2に分かれる。
自らは保護班1として行動

[保護班1]
行く手を遮っている元手下仲間を倒すなどして、恋人達の信用を得るように努める。
保護班2が恋人達を民家などの安全な場所に匿った後は、
こちらに向かってくると推測されるボス一派の行く手を遮り、
奇襲班と連携してボス一派との戦闘を行う。

■戦闘
後方での攻撃支援・回復を中心に立ち回る。
支援に徹し不用意に前に出ないよう留意。

[星霊スピカ]
大きなダメージを負った仲間(最大GUTSが5割以下)がいる場合に召還し、
体勢の建て直しを図る。
GUTSの都合上使用回数が3回までに限られるため、不用意な乱発は避ける。

[マジックミサイル]
大きなダメージを負った仲間がいない場合、
またはスピカの召還を行うことができなくなった場合は、
これを用いて遠距離からの攻撃支援を行う。

攻撃の優先順位
[恋人達の保護場所に向かおうとしている] > [自分との距離が近い] > [その他]

● ナイフの群竜士・ハスティ(c00866)
【方針】
保護1班を担当。
路地を押さえてる手下を狙える位置で待機、対象の二人が逃げて来た所で早急に倒し、
保護2班と共に状況の説明と保護を行う。

その後は布陣を整えボスを迎撃。
保護班で可能な限り敵全てを引き付け、奇襲班が挟撃できるような位置取りを狙う。
敵撃破の優先順位は犬、側近二人、ボスとした上で、仲間と連携を取りつつ一体ずつ確実に仕留める。



【保護】
さて、二人が来るまでに可能な限り辺りの構造を調べとこうかな。
で、合流。2班が別方向から対象に接触した辺りを見て手下を倒すってのが一番ベストなタイミングかな。
説得は要点だけ伝えてみて、ダメなら組織の壊滅を領主に依頼されたとか適当に誤魔化した方がいいかな。


【戦闘】
奇襲班を活かすのは私達次第。…ちょっと挑発してみるかな。
「その筋肉…どうせ飾りでしょ?いいわよ、私が証明してやろうじゃない!」
序盤は迎撃を重視してナイフで。ボスだけになったら竜撃拳で一気に叩く!

● アイスレイピアの魔法剣士・リサ(c01419)
長い路地。
途中の各枝道には手下達が2人の逃亡阻止のために待機。
出口にはボスが待ち構えている、と。
それを踏まえ、
『途中の(極力、ボスがいる出口から離れた)枝道の手下を倒して2人に接触する』
『2人を保護したのち、ボスを待ちうけ、これを撃破する』
という段取りを踏む。

■個人行動
保護、説得は他者に任せ、戦闘に重きを置く。
ボスが現れた際に奇襲を仕掛けるべく、身を隠すことができそうな場所を探す。
遠距離での攻撃手段がないので、隠れ場所との兼ね合いで奇襲が難しいようならば
保護・説得役のメンバーとでボスらを取り囲めるような位置に身を隠す。

犬のマスカレイドがいるので臭いで気づかれる可能性もあるか?
そのあたりにワインや香草など、匂いの強そうなものがあれば、
それらを周囲に撒くなどして犬の鼻を撹乱しておく。

倒す順は犬→手下→ボスの順。
犬のスピートには残像剣で対抗。手下、ボスには氷結剣を使っていく。

● 竪琴の魔曲使い・レンカ(c01753)
 私の役割は二人の恋人が手下に遭遇して「泣いても叫んでも誰も助けに着やしないぜ」とフラグっぽい事を口走った辺りで颯爽と登場して手下をぶっ飛ば……している最中に背後からこっそりと二人を安全な場所に匿う役だな。
 二人が私達の事を素直に信用してくれるならいいんだが、もし素直に従わない時は魔曲を使わざるを得ない。過程はともかく、最終的に二人には予め用意した民家で大人しくしていてもらうぜ。
 ここまで予定通りに進めば私の役割は終わったような物なんだが、マスカレイドが現れたら魔曲を使わざるを得ない!
 取り巻きから集中攻撃で一体ずつ仕留める予定だが、私の場合はバットステータス狙いで最初っからボスを攻撃した方がいいのか? バットステータスが狙って起こせるならボスを、無理っぽかったら雑魚を狙うぜ。

● 爪のデモニスタ・アリスト(c01886)
・戦闘前
奇襲班を担当。
保護班が下っ端を倒し、保護対象を誘導・避難させている間に保護班を視界に入れられる場所に移動して、そこで待機。
基本的に他の奇襲班員に追随して行動し、余裕があれば視界に入っている分だけでも地理把握に努めておく。

・戦闘開始
ボスが保護対象の元へ向かい、保護班と戦闘を開始した後、ボスグループの隙を突いて奇襲を仕掛ける。
その際、他の奇襲班員とタイミングを合わせる。

・戦闘中
基本的に「デモンフレイム」による遠距離攻撃。
敵に攻撃された場合は防御し、可能であれば反撃して距離をとる。
デモンフレイムの射線上に味方がいる場合、万が一を考慮して爪による攻撃の後、距離をとる。
近距離で戦い続けることは避け、可能な限り遠距離からの攻撃を行う。
攻撃の優先順位は犬>側近>ボス。

● 大鎌の星霊術士・クロキ(c02467)
■心情:恋人たちの行く末に、幸せな結末を。邪魔するやつにはお仕置きしてやらないとな(ぐっ)
■戦闘:恋人二人を保護班が確保後、不審に思ったボスがやってくるまでは保護班が見える場所、なおかつボスに見つからない場所で待機。その後、保護班がボスを引きつけている間に俺たち奇襲班が奇襲をかける作戦だ。保護に関しては保護班にお任せ。
戦闘開始後は、
・主に後衛、全体の様子はずっと気にかけておこう。
・行動としては主に味方の回復、補助。優先は自分<味方。鎌の射程距離に敵が向かって来た場合やかなり余裕があるときは攻撃するけど、肉弾戦はそこまで得意じゃないから実力はそこそこ、といったところだな。攻撃に参加する場合、狙う順番としては、愛犬→部下→ボスで。
・ボスの動向には常に気を配る。不審な動きをした場合はすぐに全員に呼びかけて注意を促すよ。
その他、計算外のことがおきても対応できるように、常に冷静でいなきゃな。

● 杖のデモニスタ・レヴァルク(c03053)
全体作戦に沿って行動。
保護班二組、奇襲班に分かれ行動。
保護班一組が邪魔している手下を倒し信頼を得て
もう一組が保護。そのままボスを待ち構えて応戦。
その隙に奇襲班が奇襲をかける。
敵には犬→側近→ボスの順で攻撃


・個人行動

奇襲班に所属。
時間がありそうならばこっそり手下に
見つからないよう周囲の路地の地形を
調べて把握しておく。
保護班が見える隠れ場所を探し潜伏。
他の奇襲班の隠れている場所も把握しておき、
出来れば視界に入れておく。

ボスが向かってきて戦闘が始まったら
可能ならば他の奇襲班とアイコンタクトをして、
敵の死角になる位置から参戦、攻撃開始する。
敵を挟み込むような位置を取る。
後衛なので前衛のリサを援護する形で戦闘。
まずはマジックミサイルで確実に減らし、
戦況がこちら側に向いてきたらデモンフレイムで
大ダメージを狙う。

念のため二人の安否も警戒
戦闘終了後には早めに二人を
探しに行って安否の確認

● 剣の魔法剣士・ユーリズ(c03493)
【全体の作戦】

保護班1(下っ端の対処)、2(逃げてる二人の説得)強襲班に分かれて行動。

保護班1が下っ端を対処した処で2が二人に接触、説得して近くの民家に隠れてもらう。

そして保護班1と2で強襲班が隠れてる場所まで行き、ボスが来るのを待つ。
ボスが来て戦闘になったら強襲班が仕掛けるまで防戦に入り耐え強襲班の攻撃が始まったらこちらからも仕掛ける。

撃破順は愛犬>側近>ボスの順で倒す。

【個人行動】

保護班2として逃げている2人の説得を行う。


こっから先は危険な事を説明し二人の安全を約束して説得したら安全な民家に隠れてもらう。
その時、「自分たちが戻って来るまで出てくるな」と釘はさして置く。
警戒し誰かと聞かれたら「自分達は組織のボスを倒す為に雇われた冒険者。」と名乗る。

その後保護班1と合流し強襲班が奇襲を仕掛けるまでボスに対応。
戦闘は「残像剣」による攻撃を基本にGUTSが半分以下になったら防御に入る。

● 大鎌の星霊術士・ザイン(c04348)
○全体作戦
保護班(下っ端対処(1)3人/説得(2)3人)と強襲班(4人)に分かれて行動。
保護対象の2人には保護班が接触。下っ端を1が倒して信頼を得ながら説得し、説得係が2人を民家の一つに避難。その間に強襲班が保護班を視界内における場所に隠れ、ボスを待つ。
ボスが来次第、保護班(出来れば6人全員)で対処・足止めし、その隙に強襲班が奇襲を仕掛ける。
踏破順は 愛犬→部下→ボス の順。


【個人行動】
保護班説得組で行動。
2人に声をかける際に『その先は危ない』ことを示唆し、知っている部分含めて2人に出来る限りの事情の説明を促し、エンドブレイカーのことを話さずただの【冒険者】として2人を助けると説得。
対処班に下っ端を任せ、路地奥の安全そうな民家に2人を誘導したあと、対処班に合流。
強襲班が奇襲を仕掛けるまでボスに対応。
戦闘は基本「黒旋風」による攻撃&自防御。味方のHPがかなり減ってきたらスピカ召還による回復。

● 太刀のスカイランナー・ネルソン(c04694)
流れとしては
3手に分かれて行動。
恋人たちの保護と追っ手の下っ端の撃破を同時進行に。
近づいてきたボスを隠れていたもう一班が奇襲する。
撃破は愛犬→側近×2→ボスの順に集中攻撃と言うかたち、だったよね


役割
俺は【保護班の内の下っ端対処】で行動

恋人達を庇うように
追いかけてくる下っ端と対峙、戦闘。

強襲班が合流するまでは、スカイキャリバーを主に使用、
奇襲を敵側に悟らせない、背後を意識させないように気を引かせて時間を稼ぐ。

強襲班合流後は居合い斬りに切り替えて攻撃。

HPがあまりにも残っていない場合には
回復してもらうよう、申し出るようにする。

<リプレイ>

●差し伸べられる希望
 入り組んだ路地裏を必死に男と恋人は走る。
 必死に走る足はガクガクになり、もう歩く事も辛いほど。
 しかし、2人は必死に走る。捕まれば……命も明日も無いから走った。
 細道から抜け出そうと路地裏の隙間から逃げようとするが、幾度も男の元仲間たちに行く手を塞がれる。
 そして恋人が、転んでしまう。
「だ、大丈夫かッ!?」
 焦った表情で男は言うが、恋人は首を振る。
「もう、もうだめ……っ、貴方だけでも逃げてっ!!」
「ば、バカ野郎っ! お前と一緒じゃないと俺は嫌なんだッ!!」
 恋人の弱気な態度に男は怒り、懸命に立たせようとするが恋人は立ち上がらない。
 そんな光景を見ながら、元仲間たちは下品な笑みを浮かべていた。
「キミたち、ちょっと邪魔だよ」
「あん? なん――ぐぇっ!?」
 声がした方を向こうとした元仲間の男が殴られた。
「てめぇっ! 何しやがるっ!!」
「邪魔だって言ったんだよ。恋人たちの幸せを壊そうとするキミたちがね」
 不敵な笑みを浮かべつつ、ナイフの群竜士・ハスティ(c00866)は言う。
「ふざっけんじゃねぇっ! 殺すぞ、このアマっ!」
 いきなりの攻撃に怒り、汚い言葉と共に元仲間の男たちはハスティへと襲いかかる。
 そこに、元仲間の背後へと太刀のスカイランナー・ネルソン(c04694)が上空から現れたと同時に蹴り飛ばした。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてしまえなんて言われてなかったかい?」
 炎のように赤い瞳でネルソンは元仲間を見下ろしながら言う。
「ひっ、ボ……ボスに報告しねぇとっ!!」
「報告はさせませんよ。あなたもぐっすり眠っててくださいです」
 逃げ出そうとした元仲間へと、杖の星霊術士・バシル(c00004)が杖で殴り飛ばす。
 いったい、何が起きたのかも分からないまま元仲間たちは気絶させられた。
「さてと……、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……、あんたら……一体誰だよ…………?」
 不意に現れた3人に対して、男と恋人は怪しい人物を見るように3人を見る。
「誰と言われても、ただの冒険者です」
 丁寧な口調でバシルは男に言った。

「あ、ありがとう……、助かった。おい、早く行こうぜっ、このままだとボスに追いつかれちまう……」
 男は恋人を立たせ、急いでその場から立ち去ろうとバシルたちとは逆方向へと走り出そうとする。
 が、目の前の路地から大きな鎌を担いだ少年が姿を現した。
「おにいちゃん達、そっち行ったらあぶないよ? さっきから、向こうでこわいおじさんがいっぱい集まってるの見たから、今行ったらいちゃもんつけられるかも」
 大鎌の星霊術士・ザイン(c04348)は大げさに風に言う。
 その言葉を聞き、男はガクリと膝を付く。
「ボ、ボスだ……、このままじゃ捕まっちまうのかよ」
 震えながら、男は恐怖に涙を流す。
「泣いても叫んでも誰も助けにきやしないぜ」
「だけど、俺たちがここに居る」
 ザインの後ろから竪琴の魔曲使い・レンカ(c01753)と、剣の魔法剣士・ユーリズ(c03493)が姿を現した。
「だ、誰だあんたら……っ、まさかボスに雇われた殺し屋かっ!?」
 いきなり現れたザイン、レンカ、ユーリズに男は警戒をする。
「安心してくれ、俺たちは組織のボスを倒す為に雇われているんだ」
 事前に打ち合わせていた対応でユーリズが男へと言う。
 その言葉だけでは信用出来ないらしく、男は疑いのまなざしを向ける。
「疑うのも当然、か。でもいい? あんたたちを救いたいと思ったお人好しが、今ここに居る事。それだけは信じなさい」
 そんな2人に対してハスティが髪をわしゃわしゃと掻きながら言った。
「……あんたら、本当に俺を……俺たちを助けてくれるのか?」
 搾り出す様に男は助けを求める。
「ああ、助けてみせるんだぜ!」
 レンカが親指を立てながら言う。
「あんたらの事……信じてみるよ。だから、だから俺たちを助けてくれよっ!」
 すがり付くように男は彼らを見た。
 それに対して、彼らは頷き、男と恋人を近くの民家へと誰も居ない事を確認してから隠れてもらう。
「自分たちが戻って来るまで出てくるんじゃないぜ」
 ユーリズが勝利を約束して扉を閉めた。
「ぜったいこのおにいちゃんたちを助けよう!」
 ザインがガッツポーズをして息巻く。
 彼らは頷き、路地の先へと駆けて行った。

●希望を導く者
「おいこら、何処行きやがったぁ? 折角オレが直々に探しに来てやったんだ、とっとと顔を出して殺されろよぉ?」
 中々来ない男を捜しながら、ボスは大きな体を動かし路地を歩く。
 そこに、6人のエンドブレイカーが立ち塞がる。
「ここから先へは……進ませません……っ!」
 これから起こる初めての実践に少し緊張しながらも、バシルはボスへと言う。
「あん、何だてめぇら? とっとと道をあけろコラ」
 今にも殴り飛ばすような雰囲気をしながら、ボスは彼らを睨みつける。
 その中の数名はその気迫にビクリとするが、すぐに怯えを掻き消す。
「誰かと言われたら、通りすがりの音楽家サンだぜ!」
 そんな睨みを物ともせずに、レンカが自分を指し声高々に応える。
 そこにネルソン、ユーリズ、ハスティが前へと出る。
「折角2人の思いは通じ合ってるのに……さ、邪魔をしたらダメだよ」
「彼らのためにもボスであるお前を何とかしないといけないんだよな?」
「本当なら彼が何とか出来ればいいんだけど……マスカレイドじゃちょっと手に負えないわね」
 繋ぐように言い、彼らはボスの顔を見た。その不可視にされている仮面を。
 彼らの視線に気づき、ボスは殺気を体から発する。
「てめぇら、仮面が見えてるんだな? 予定変更だ。殴って通るだけだったが、てめぇらから先に殺してやるよ」
 そう言ってボスが指を鳴らすと、配下マスカレイドが姿を現した。
「やろうどもッ! こいつ等を始末するぞッ!!」
「き、来ましたです。とにかく全力で当たれば……っ」
 杖を握り締めるバシル。
「ぜったいおにいちゃん達を助けよう!」
 ザインがやる気をみなぎらせる。
「……よし、……任せて」
 ネルソンが目を閉じて一呼吸置き、自分のだらりとしていた雰囲気を消す。
 その怒声を皮切りに、戦いは始まった。

●希望への道のり
「がるるるるっるうっるうっるっ!!」
 口から涎をたらしながら、愛犬がネルソンへと牙を光らせ襲い掛かる。
 だが、ネルソンは愛犬の攻撃を高々と跳び上がり回避。
 仕留め損ない、愛犬は即座に後ろへと戻る。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 走るたびにお腹の贅肉を揺らしながら2人の側近が後ろに立つ3人へと襲い掛かる。
「音楽はソウルだぜ! 私の歌を聴くがよいのだぜ!」
 レンカは独創かつ前衛的な弾き方をしながら、竪琴を引き歌う。
 その歌を聴き、側近の1人の表情から闘志が抜ける。
 それでも、側近の1人は息を切らしながらもナイフを向け、ザインの腹を刺そうと突き出す。
「僕を甘く見てたね。そんな攻撃、効かないよっ」
 大鎌を回転させ、男の攻撃を防御するザイン。
「あっち行ってくださいですっ!」
 それに続き、バシルが側近へとマジックミサイルを撃ち込む。
 これは堪らないと、側近は一度後ろへと下がる。
「その筋肉……、どうせ飾りでしょ? いいわよ、私が証明してやろうじゃない!」
「飾りかどうかはあの世で確認するこったなっ!!」
 ボスの筋骨隆々の腕がハスティを捉える。
 それをハスティは寸でのところで避ける。
「そんな攻撃、ボクには当たらないよ」
 そう言いながら、ハスティはボスへと挑発する。
 ……わざと怒らせながら、注意をこちらへと引きつけるように。
「ぐぁるるるるっるるるるっ!!」
「うわぁっ!?」
 愛犬が後ろまで走り、レンカへと爪を振るう。
 レンカの肌に日焼けした肌に血が滲む。
「くはははっ! 弱いなぁ、おい。もっと抵抗しろよ、てめぇら。それともとっとと殺されてあいつを殺しに行って欲しいのか?」
 あまり攻撃をしてこない彼らに手柄を立てた愛犬を撫でながらボスが笑う。
 そしてその時は……やってきた。
「ぎゃわんっ!!」
「ぐぅっ!?」
 突如、黒炎が愛犬の体を燃やし、ボスへとマジックミサイルが放たれる。
「な、何だッ!!」
 急いでボスは後ろを見ると、そこには4人の人間が立っていた。
 ボスは気づいた。道を塞がれたことに。
「私は大団円を好みますのでね。悲恋の芽は摘み取らせていただきます」
 デモンフレイムを放った爪のデモニスタ・アリスト(c01886)が笑顔を浮かべる。
「愛の力は偉大なんだよ」
 マジックミサイルを撃ち込んだ、杖のデモニスタ・レヴァルク(c03053)が陽気な雰囲気を出しながら言う。
「レンカ、大丈夫だよな?」
 レンカを回復させるべく、星霊スピカを走らせる大鎌の星霊術士・クロキ(c02467)。
「遅いんだぜ、あんたら……」
 クロキのスピカに回復してもらいながら、レンカは皮肉のように言う。
「それについては謝罪するレンカ、だがヒーローという物はピンチの時に現れるものだろう?」
 凛々しい表情でアイスレイピアの魔法剣士・リサ(c01419)は言った。
 そんなリサたちを忌々しくボスは睨みつける。
「てめぇらもオレを倒そうってつもりかぁ? 面白いなおい、やってみろよっ!」
 ボスが叫ぶと同時に、愛犬が素早い動きでリサへと口を開き襲い掛かる。
 だが、リサはそれを上回る超高速斬撃で愛犬の仮面を貫く。
「安らかに眠るんだ……」
 悲しそうに呟きながらリサは武器を引き抜く。
 貫かれた仮面が割れ、愛犬は息絶える。
 それを見て、クロキは残念そうな表情をする。
「悪い奴に可愛がられたもんだな、お前も」
 犬が好きなのかレヴァルクも哀れな瞳で見た。
「おらっ! てめぇらもとっとと行けっ!!」
 苛立ちながら、ボスは側近2名を蹴るように左右へと押し出す。
 しばらく戸惑うが、ボスの怒りが怖いのか、ナイフを構え側近たちは襲い掛かる。
「もう手加減無用だよっ!」
「お前の出番はもう終わりだ!」
 ハスティの正拳突きが打ち込まれ、ネルソンの居合い斬りが胴を斬り裂く。
「貴様はもう眠っても良いだろう?」
「おやすみ」
「せめて一思いに死なせてやるぜ」
 アリストのデモンフレイムが、レヴァルクのマジックミサイルが撃ち込まれ、クロキの大鎌が振り下ろされた。
 瞬く間に、側近2人は息絶えた。
「ちっ、使えねぇ奴らだっ!」
 舌打ちをしながらボスは叫ぶ。
「さあ、これで残るはあなただけです」
 杖を構えなおし、バシルは言う。
「舐めんじゃねぇよ! てめぇらなんかオレだけで十分だ!」
 雄叫びを上げるように、ボスは襲い掛かる。
 そんなボスへと、ユーリズが剣を構える。
「お前が作る不幸なエンディングは破壊した。代わりに俺たちがお前のエンディングを作ってやる!!」
 叫びと共に、ユーリズの体は幾つもの残像を作り、ボスを斬った。
 獣のような叫びと共に、ボスの仮面は真っ二つとなり、地面へと落ち……ボスは倒れた。

●希望への出口
 ボスが倒されたことを知り、手下たちは蜘蛛の子を散らすかのごとく逃げていく。
 そんな光景を見ながら、エンドブレイカーたちは息を吐き、男たちに危機が去った事を知らせに向かう。
「お疲れ様、疲れた時には甘い物だよな?」
 星霊スピカを頭に乗せたクロキがポケットから飴やチョコレートを配る。
 扉を開けると、男はボスが倒れた事を知り、喜んだ。
「あんたら……本当に、本当にありがとうっ!」
「キミはこれからどうするのかな?」
「とりあえずは、もうこの街には居られないから……しばらく2人で逃亡して住める場所を探してみるよ」
 男と恋人はそう言って、手に手を取って路地を抜けるために歩いていく。
「どうかお幸せに……」
 手を組み祈るようにバシルは呟く。隣では恥かしそうに2人を見るリサが立つ。
「これからのお二人の物語が幸福となることを祈っていますよ」
「幸運を祈る」
 アリストとレヴァルクが祝福を祈る。
「……俺にもあんな時があった……二人とも助かったんだ絶対に幸せになれよ」
 失われた愛おしい物を見るようにユーリズは呟く。
 彼らの思い思いの祝福を受けながら……2人は希望へと向かうために路地を抜ける。
 誰にも追われることの無い、明日と言う希望へと向かうために。
戻るTommy WalkerASH