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馬鹿にしないで

アイスレイピアの魔法剣士・ダリア

<馬鹿にしないで>

■担当マスター:KYB


 暗い夜の街に、カラスの声が響き渡る。
 4羽のカラスが、不気味に鳴きながら暗闇の世界を飛び回っている。
 そのカラス達の下には、若い女性が立っていた。
 漆黒のドレスに、黒のフードと綺麗に整えられた髪。
 優雅な立ち姿から、上級階級の人であるという雰囲気が出ていた。
 だが、今の時間は夜中。
 明らかに着飾った者が1人で出歩くような時間ではない。
 そして彼女の傍らには、倒れ伏す血だらけの男。
 カラスが襲ったのか、男の服の上には血塗れた黒い羽根が沢山落ちている。
 その無残な姿を、ゴミでも見るかのような瞳で見下す女性。
 場所と状況が、彼女の姿をより異常にしていた。
「馬鹿にしやがって。私の心配する前に、自分の心配するんだったね」
 カラスの鳴き声を背後に、半分仮面に覆われた顔が醜く歪む。
「いい人ぶりやがって、ゴミになった気分はどうだい? ざまぁないね」
 黒いハイヒールで男を踏みにじりながら、女が笑う。
 翼に仮面が生えたカラスが、男をあざ笑うかのように鳴いた。 

「単刀直入で悪いが、君達にはマスカレイドの一人を倒してもらいたい」
 アイスレイピアの魔法剣士・ダリアは落ち着いた顔で、集まったエンドブレイカー達に言った。
「犯人は全く分かっていないが、犠牲者は出てしまっている」
 数日前、マスカレイドの仕業だと思われる死体が発見された、とダリアは告げた。
「被害者はこの街の建築士見習いだ」
 彼女は知りえた情報をエンドブレイカー達に伝えていく。
「遺体は全身を鳥のくちばしのようなものでついばまれていたらしい。そして、遺体の傍にはこれが落ちていたそうだ。どうやら鳥を従えているようだな」
 ダリアは懐から黒い羽根を取り出し、エンドブレイカー達に見せる。
 おそらくカラスの羽根だと分かるが、これだけでは犯人の特定は難しい。
「真犯人を知っているのは、被害者だけだ。君達が被害者の瞳を覗けば情報は手に入るだろう」
 そこに一つの問題がある、とダリアは続ける。
「彼は既に埋葬されてしまっている。瞳を見るためには墓から掘り起こさなくてはならないな」
 瞳を見なければ、マスカレイドの情報は得られない。
 次の犠牲者が出る前にマスカレイドを止めるには、墓から遺体を出して、情報を得るしかない。
 しかし理由はどうであれ、一般人から見ればその行為は墓荒らしである。
 間違って誰かに見られないよう、相応の時期と用意が必要であろう。
「犯人が判明しても、すぐに手出しはできない。なぜならマスカレイドは普段は一般人と変わらない生活をしているからだ。おそらく誰かしらの近くにいるかして、皆に襲われないようにしているだろう」
 マスカレイドは自分に疑いがかからないよう、細心の注意を払っている。
 仮面も隠れている以上、一般人の前で戦うことは避けるべきである。
「だが奴が次の獲物を狙おうと出てきた時は別だ。獲物を狙う時は必ず誰かに邪魔されないような状況を作るはずだ。その瞬間を狙うしかない」
 獲物を探す時は誰かに見られないよう、人気の無い場所や時間を選ぶはずだ。
 そのため、エンドブレイカー達も戦っている姿を誰かに目撃される、というような状況は考えなくていいだろう。
「最も注意して欲しいのは、マスカレイドを退治した後。できるだけ早くその場から立ち去って欲しい」
 マスカレイドはエンドブレイカーによって宿主が死ぬと消滅する。
 同時に能力も消滅するため、宿主は普通の人に戻る。
 つまり、残るのはマスカレイドになる前の一般人の死体なのだ。
 長居すれば、誰かに見られて殺人犯の一人にされかねない。
「……犠牲者は仕事にも一生懸命に打ち込むほどの真面目な青年で、その人柄は周囲からも慕われていたらしい」
 マスカレイドがいる限り、そんな善良な人がまた犠牲になるかもしれない、とダリアは目を伏せる。
「これ以上マスカレイドによる悲劇を生まないためにも、よろしく頼む」
 凛とした表情で、ダリアはエンドブレイカー達に深々と頭を下げるのであった。

●マスターより

 はじめまして、KYB(アルファベット読み)です。
 マスターの仕事は初めてとなり、色々力及ばぬところもあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。
 そして、そんなマスターが書くシナリオに参加して頂いたことにも、深い感謝を。

 さて、まずはオープニングの補足を。
 マスカレイドは女性一人とカラス4匹です。
 女性は上流階級の雰囲気を出していますが、上級階級の人なのかは不明です。
 もしかしたら、上流階級に関わりのある人なだけかもしれません。
 攻撃手段がカラスだけに見えるかもしれませんが、女性はマスカレイドの力で肉体能力が強化されていますので、油断しないように。
 逆に言えば、それ以外の特徴は無いので、しっかり対処すれば問題ありません。
 女性とカラス、双方とも撃破すれば依頼成功です。
 また、墓を掘り起こす際は当たり前ですが周囲の警戒を怠らずに。
 用が済みましたら、遺族が悲しまないためにも墓は元通りにしてあげて下さい。
 では、皆さんのプレイングをお待ちしております。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 剣の魔法剣士・アルトリウス(c00280)
▼墓掘り
手早く掘り返し、瞳を覗き込んだらすぐに墓を戻す
スコップ・紺色外套は準備していく

▼捜索
カノンの方針にしたがってレイと共に捜索する
捜索後は一度合流して情報交換
発見した組があれば見張りに

▼尾行
見張り役を僕とセス
残りは近くで待機
敵が動き出したら僕が尾行し、
セスが残りの仲間へ連絡、合流
合流した僕以外の皆は距離を保って僕を追跡
人気の無い場所に入り次第僕が後ろへ合図し
皆を呼び寄せてから敵へ声をかけ足を止めさせ、
襲い掛かる

もし僕が途中で気づかれてしまった場合は
「失礼、声をかけるかどうか迷ったのですが…
このような時間に御婦人一人では危険です。
お送りしましょう」
と声をかけ、さぁ参りましょうと前方に促す
皆はその間に展開
ただ、この場合いつ襲われてもいいように心積もりはしておく

▼戦闘
セスの作戦通りに行く
攻撃は剣を構えるまで十字剣
以降は残像剣
敵が一人になったら再び十字剣

▼戦闘終了後
速やかに離脱

● アイスレイピアの魔法剣士・レイ(c00759)
・墓堀
見張り担当
黒い外套を頭から着込んで全身を覆う

仲間の見張り場所は外し
道を逸れても人が来れそうな所を中心に
広範囲に音に注意して見張る
誰か人が来て墓堀が見つかりそうなら
殴って気絶を試みる

掘った穴は皆で協力し元通りに埋める

・捜索
全体方針に従いアルトリウス(以下A)と敵捜索を行う
詳細はカノンの案に則り行動

・尾行
皆と方針に則り行動
出来る限り
Aの合図が見えるほぼ直線位置をキープ

・戦闘
撃破順は烏→マスカレイド

外套を着用のまま
Aが交戦に入った時点で
ダッシュ+残像剣で前衛位置へ移動
敵を攻撃

プラスワンが発動したら追加で
射程内の後衛を目指す敵を
撃破順に攻撃
対烏は残像剣を多用

対マスカレイドは
まずマヒで攻撃を封じる事を目的に
氷結剣で攻撃
残像剣でラッシュをかけます

・交代
ファニーの交替条件の下で前衛と後衛を交替します

戦闘終了時
外套は脱いで立ち去る

・後日
墓の辺りの土が掘り返され
新しいのを隠す為に
花を植えます

● 暗殺シューズのスカイランナー・ファニー(c02237)
・墓堀
格好は目立たない簡素な外套を着用
仲間が墓を掘っている間、他の見張りと近づきすぎないようにする
見張りは目立たない物陰でする
誰かがきても別方向にいくようなら隠れてやり過ごす
但し墓の方へ近づいてきたら後ろから気絶する程度に殴る

・捜索
クウィルと一緒に敵を捜索
全体方針に従う
詳しくはカノンの方針と話に沿って行動

・尾行
アルトリウスの方針に従って行動

・戦闘
墓堀時と同様の外套を着用
マスカレイドと戦闘時は後衛で、アリスの近くで戦闘
基本ソニックウェーブで遠距離攻撃中心
弱っている敵を狙って確実に数を減らしていく
前衛になったらスカイキャリバーで攻撃

戦闘後は外套を脱ぎ捨ててすぐに立ち去る

・戦闘交代(後衛共通)
「回復がなくなる」「前衛の誰かのGUTSが1/3」
になったら後衛は前衛の人とバトンタッチ

● 大鎌の狩猟者・ジン(c02956)
●墓堀
深夜、全員黒い外套を着て墓地へ
スコップやランプ等の道具は外套の下に忍ばせ
墓掘り・見張りの2組に分かれて犠牲者を掘り起こす

僕は墓堀り組
ランプで穴掘り役の手元を照らすよ
分厚い外套で覆って光漏れは最小限に
警戒は怠らず素早く作業しよう

犠牲者の目から情報を得た後
遺族のために穴は元通り埋めておく
「…眠りを邪魔して、ごめんね。どうか安らかに」

終始目立たないよう細心の注意を払う


●捜索
全体方針に従う
僕はアリスと行動だね

疑わしい場所のうち
子供の方が有利だと思われる所があれば
そこを優先して捜索するよ


●戦闘前
誘導地点に隠れて待機
悟られないよう距離はおくけど
攻撃射程内であることは絶えず確認


●戦闘中
後衛は基本的に前衛を支援
弱っている敵から確実に撃破し
前衛を抜けた敵は後衛全員で集中攻撃

僕は後方で遠距離攻撃中心に戦う
前衛との入れ替わりについては
カノンの基準に従い臨機応変に

「もういいよ、終わりにしよう」

● アイスレイピアの魔法剣士・ノクス(c03129)
【墓掘り】
地味な色の安い外套を着用。
見張り役なので墓の近くの物陰に隠れて見張ります。
(ただしほかの見張り役とは近づきすぎない距離で)
人が来た際、墓掘り役のほうへ行きそうな場合は
背後から襲い気絶させ、そうでない場合はそのまま
隠れてやりすごします

【捜索】
墓掘り役のハチヤさんと共に行動。
行動等は出発前にカノンさんから伝えられるので
それに沿う形で行動します

【尾行】
アルトリウスさんの方針に従い行動

【戦闘時】
【墓掘り】同様地味な色の安い外套を着用。
立ち位置は前衛で撃破順はカラス→女
残像剣と氷結剣が駆使して一体ずつ攻撃し
必要に応じて挑発を行う(詳しくは【挑発】参照)
GUTSが3分の1になったら後ろに下がる

戦闘後は外套を脱ぎ捨て足早に立ち去る

【挑発】(前衛共通)
女およびカラスの攻撃が後衛側もしくは危険状態の
前衛に向きそうだった場合、女を挑発し攻撃が
向くようしむける。
ただし後衛とGUTSが半分以下の前衛は行わない。

● 剣の城塞騎士・クウィル(c03503)
●墓地
決行時間の深夜に合わせ、スコップや黒装束を外套に隠し、人目を避けつつ墓地へ赴く。
墓地内では墓守の着る黒装束を纏い、場所にそぐわぬ様にする。
墓掘りは迅速かつ静かに。勿論、周囲への警戒は怠らない。
第三者の接近時は、付近の墓石の陰に隠れてやり過ごす。
情報入手後は速やかに墓を埋め、密やかに墓地を去る。

●捜索
控えめな服装でファニーと女性に関する情報を集める。
城塞騎士が上流階級の集う場所を訪れても怪しまれぬ筈ですしね。

●尾行
上空の羽音にも注意を払いつつ、少し距離をおきながら女を尾行する。
必要であれば、自らも囮となり、女性にエスコートを申し出る。

●戦闘
返り血を浴びぬ様、安物の外套を纏う(事後は処分する)。
戦う際は、一気に畳み込む様に。
皆が烏を倒す間は敢えて女性に攻撃を仕掛け、彼女の逃走を阻止する。
少々の傷ならば痛みに耐えて、戦線を維持するべく努める。
討伐後は、迅速にその場を離れ、路地裏へと消える。

● 大鎌のデモニスタ・カノン(c03670)
【墓堀】
私は見張り役、深夜一人で目立たぬ様に移動
墓地に至る道で物陰に隠れ待機
一般人が現場に近づきそうな場合は後ろから一発殴って気絶して頂きます

【捜索】
出発前に皆に方針を伝えます
捜索は酒場等人の集まる場所、敵の行きそうな場所で目視&人相を告げて聞き込み
烏を見かけたら周辺を重点的に捜索
日が傾いたら敵の発見如何に関わらずこの場に集合
敵を見つけた組があれば、敵拠点をアルトリウス(以下A)とセスに見張って貰う

それぞれマスカレイドの顔を知っている者と2人1組、計5ペアで捜索
私はセスと組みます

【尾行】
見張りの二人から近い場所に残り8人で待機
セスから敵が動いたと報告を受け次第Aの後を追う、
Aの合図で敵に攻撃開始
合図が見える距離を保つ

【戦闘】
敵から離れた位置で攻撃
ダメージを受けた前衛が下がって来た場合入れ替わります

撃破順は
烏(誰かが攻撃を開始した烏から集中攻撃で順番に)→マスカレイド

戦闘後は速やかに立ち去る

● アックスソードの城塞騎士・セス(c03671)
【全体の作戦と流れ】
夜中に墓掘り、見張り組に分かれて犠牲者を掘り起こす→目を見て情報を得る→朝になったら二人一組になって街を捜索。マスカレイドの情報、住居、町の地理の特定→一旦合流→夜中マスカレイドが動き出すのを待って、尾行→戦闘

【墓】
俺は堀り組。
準備、行動、方針は周りに準じる

【捜索】
カノンとペアで、行動はカノンに合わせる

【尾行】
アルトリウスと見張り。標的が動き出したら別れて待機している皆に連絡
敵に気付かれない十分な距離で監視、尾行
アルトリウスの合図で一気に敵に襲い掛かる

【戦闘】
前衛は俺、アルトリウス、クウィル、ハチヤ、ノクス、レイの六人
敵を取り囲むように円形に布陣
なるべく後衛に敵を抜けさせないようにする(口で挑発等

アビリティは積極的に使用して全力で攻撃

撃破優先順位:ダメージを負ったカラス>カラス>女

一体ずつ確実に倒す

無茶、深追いはしない
GUTSが3/1を切ったら速やかに後衛に下がる

● 太刀の群竜士・ハチヤ(c04047)
・準備
黒いローブ、小型のランタン、スコップを用意。
ローブ装備後は、墓掘り用のスコップを隠すように紐で腰に巻きつける。

・墓掘り
速やかに、墓掘り開始。掘るのに支障があるようであれば、細心の注意を払いながらランタン
で照らす。

・戦闘場所確認
墓掘りの帰宅途中、郊外に廃墟と化した教会がある事を思い出す。
念の為に教会の下見をしに行き、人気が無い事を確認する。
作戦実行日、戦闘場所の概要を説明。

・捜索
ノクスさんと共にマスカレイドの捜索開始。
捜索場所→上流階級の屋敷付近。
意見が分かれるようであれば、自分の案は、却下。

・作戦
囮作戦が実行された場合、戦闘場所にて待機。
物陰に隠れ、敵を待つ。

・戦闘
前衛にて戦闘開始。
撃破順は、カラス→マスカレイド。
闇雲に攻撃せず、一匹ずつ集中して居合い斬りで攻撃。
カラス撃破後は、マスカレイドに標的変更。
居合い斬りをメインに、隙を見て懐に入ったら竜撃拳に
攻撃を切り替える。

● 大鎌の星霊術士・アリス(c05392)
・事前準備
体全体を包めるフード付き外套(黒)
・墓掘り
外套装着後,夜中に件の墓地に集まります。
見張り:みなさんんが墓を掘っている間は,任された場所の周りの墓に隠れながら見張りです。掘ってる方に向かう人がいたら後ろから鎌の切れない所で頭を一撃!……気絶させます。力不足が心配です…。殺しちゃわないように注意します。掘っている方に行かなそうなら見逃しで。
・追跡
ジンさんと追跡します。髪の色も年も近そうなので兄妹のような感じでいこうかなと。黒のドレスを着てたらしいのでそのドレスが気になって探してるとでも聞き込みします。わたくしも黒一色のドレスですし。
・戦闘
後方,ギリギリ戦闘の全体が見渡せる近い位置からGUTSが三割位しか残ってなさそうな人や,回復が欲しい方と声を掛けて反応があった人に回復を行います。
こちらまで敵が来たら護衛の方に守って貰いつつ黒旋風で反撃や防御を行います。
・戦闘後
急いで現場から逃げます。

<リプレイ>

●死者はかく語りき
 暗闇に満ちた墓場に、地面を掘る音が響く。
「故人の眠りを妨げるのは気が退けますが……これ以上の狂った終焉は阻止しなくてはね」
 剣の城塞騎士・クウィル(c03503)がスコップを手につぶやくように言う。
 エンドブレイカー達はマスカレイドの犠牲者の遺体を掘り出すため、墓を掘り起こそうとしていた。
 周りもしんと静まり返っており、スコップで地面を掘る音が強く響いている。
 かすれるような大きさで念仏のような声も聞こえるが、声の主は掘っている者の一人なので皆無視している。
 目立つ音ではあるが、こんな夜中に、しかも墓場に来る者はそうはいないので問題はないようだった。
 念のためと見張りを多く配置し、全員が黒い外套など闇夜に紛れられる姿をしている。
「それにしても……やりきれない、やりきれないわ?」
 見張りの一人である暗殺シューズのスカイランナー・ファニー(c02237)が墓掘りの様子を見ながら言う。
 死んだ者は生き返らない。
 同じ悲劇を繰り返さないための、この行為。
 それでもやりきれない想いがあるファニーだった。
「彼に何か落ち度があるのなら別ですけど……許せませんね」
 アイスレイピアの魔法剣士・ノクス(c03129)も物陰から墓場に誰か近づいてこないか周囲に目を凝らしている。
 もし誰か近づいてくれば、力ずくで気絶させるつもりであったが、誰も来る様子はないので必要ないようだ。
 しばらくすると、土を掘る音に明らかに違う音が混じった。
「あった……」
 念仏を止めた太刀の群竜士・ハチヤ(c04047)が、何故か少し震えながらランタンを手にする。
 墓が光で照らされ、土まみれであるが木製の棺おけがエンドブレイカー達の目に入る。
「眠りを邪魔して、ごめんね」
 大鎌の狩猟者・ジン(c02956)がどこか冷めた表情で手を合わせた後、棺おけをゆっくり開ける。
 全身をついばまれた被害者の遺体が、ランタンの光で不気味に映る。
「酷いな……」
「さっさと終わらせよう」
 スコップを近くにさした剣の魔法剣士・アルトリウス(c00280)が犠牲者の体をゆっくり起こす。
 心なしか、被害者の顔が不安そうな表情に見えた。
「……心配するな。お前の無念は僕達が晴らす」
 強い決意を秘めた顔で笑うと共に、アルトリウスは瞳を覗きこんだ。
 彼の脳裏に映る、犠牲者のエンディングの光景。
 自分の体をついばんでいく4羽のカラス。
 漆黒のドレスを着た仮面の女。
「これが、犯人のマスカレイドか」
 犠牲者の目を閉じながら、アルトリウスが言う。
 これでマスカレイドの情報は手に入った。
(「ありがとう。どうか安らかに」)
 アルトリウスと同じように被害者の瞳を見たジンが犠牲者に黙祷を捧げた。
「よし、次は元通りにしないとな」
 そう言うとエンドブレイカー達は再びスコップを手に取った。

●眼鏡越しの憎悪
「犯人は判明しましたが、やはりそう簡単には見つかりませんね」
 大鎌のデモニスタ・カノン(c03670)がやや疲れた表情で、朝ジンから貰ったおにぎりを口に入れる。
 被害者から情報を得たエンドブレイカー達は、2人1組となって犯人の居場所を捜そうと朝から町中を走り回っていた。
 カノンはアックスソードの城塞騎士・セス(c03671)と共に人が集まりそうな酒場を中心に聞き込みをしていた。
 だが昼になっても、これと言った成果は出ていなかった。
「……セス、犯人の顔はちゃんと覚えていますか?」
 次の酒場へと足を運びながら、カノンは聞いた。
「ん? ……え〜と」
 カノンの先を進むセスは一瞬首を傾げ、その後考え込み始める。
 ガーディアンのお手並み拝見と思っていたが……大丈夫なのか、とカノンは不審な目をセスに向ける。
「て、敵の顔くらい覚えてるっての!! ……ほ、ほんとだってばー!!」
 手をバタバタと振りながら、必死に否定するセス。
 しかし、それではカノンの疑惑は消えない。
「本当ですね?」
「…………あ、あれ美味そうっ!」
 カノンの視線に耐えられなくなったのか、何かに向かって走り出すセス。
 その様子を見ながら、やれやれとカノンは再び深いため息をついた。

「中々見つかりませんわ」
 スピカを抱きしめながら、大鎌の星霊術士・アリス(c05392)が市場を歩く。
 彼女はジンと共に、漆黒のドレスという情報を頼りに市場の衣装屋を回っていた。
「でも、いつか見つかるよ」
 隣を歩くジンが励ますように言う。
 年齢や容姿もあいまって、それはまるで兄が妹を励ますようにも見えた。
「そうですね。頑張りましょう」
 愛くるしいスピカを抱きしめながら意気込むアリスの前に、リンゴ一つが転がってきた。
 何事かと視線を上げると――。
「はわ。ご、ごめんなさい」
 大きな袋を持った召使姿の女性が慌てふためきながら近づいてくるのが見えた。
 どうやら目の前のリンゴは何かの拍子に彼女の懐から転がったもののようだった。
「いえ、大丈夫ですか?」
 ジンが落ちたリンゴを一つ拾い上げ、彼女に渡す。
「大丈夫です。あ、ありがとうございます」
 申し訳なさそうに女性がリンゴを受け取る。
 女性の、メガネとそばかすまじりの顔が、ジンの目に入った。
「あ……」
「では、失礼しますね」
 ジンが何か言う前に、その女性はぺこりとお辞儀をし、走っていってしまった。

「アリス、今の人だ」
「え?!」
 召使の女性を視線で追いかけながら、ジンが言う。
 聞いたアリスも、すぐに女性を視線で追う。
 メガネの女性は同じ召使姿の女性の前まで行くと、頭を下げた。
 片方の威圧的な態度から考えると、どうやら先輩後輩の関係のようだった。
「あの人……なのでしょうか?」
「間違いないよ。メガネはなかったけど、あのそばかすまじりの顔に仮面があったんだ」
 アリスがそう思ったのも無理はない。
 彼女の薄汚れた召使の姿や仕草が、犯人のイメージから離れていたのだから。
 不思議に思いつつも、気づかれないように彼女に近づく2人。
 大きい袋は持っているためか、彼女の足はふらついていた。
 こけるかも、とジンが思ったその瞬間、ドテっと道の真ん中でこけていた。
 気づかれないように近づくと、召使との会話が耳に入った。
「貴女、もう館に来て2年ですわね? それなのにまだそんなミスを……」
「あ、あはは。どうしても直らなくって……」
「全く。本当にどうしようもないわね」
 ため息をつきながら先をゆく先輩女性に対し、卑屈に愛想笑いを浮かべる女性。
 しかし、ジンにははっきりと見えていた。
 その目が、全く笑っていないことを。
 メガネのせいで隠れていたが、静かな憎悪がそこにあった。
「ほら、早くなさい」
 一緒にいる女性には、それには気づいていないようだった。
「……あれが、マスカレイドの本性なのでしょうか?」
「たぶん」
 アリスの言葉に、うなづくジン。
「ともかく、居場所を特定しないと……」
「そうですね」
 2人は互いに目を合わせた後、よたよた歩く召使に追跡を始めるのであった。

●夜の仮面舞踏会
「そこにいるのはどなた?」
 舞台は再び夜遅くにて。
 漆黒のドレスを身にまとったあの女性が振り返りながら、彼女の後ろにいたアルトリウスに声をかける。
 ジンとアリスより、犯人の居場所を聞いたアルトリウスはセスと共に彼女を見張っていた。
 そして夜遅く、彼女がドレスをまとって外出したのを見た彼は、すぐにセスを他の仲間へ連絡に向かわせた。
 彼自身は彼女を見失わないよう、尾行していたのだったが気づかれてしまった。
(「できればもう少し隠れていたかったが……」)
「失礼、声をかけるかどうか迷ったのですが……このような時間に御婦人一人では危険です。お送りしましょう」
 仕方ない、というような思いを隠しつつ、アルトリウスがうやうやしく頭を下げる。
 予定ではこの瞬間を襲うつもりであったが、そこはまだ人気が無いと言える場所ではなかった。
 そのため、今は戦える場所へと誘導するしかなかった。
「あら、ありがとう。ではお願いいたしますわ」
 新しい獲物が見つかったからなのか、嬉しそうな声が黒いベールの下からした。
 人気の無い場所へと案内しつつ、アルトリウスが上空をふっと見上げる。
 いつの間にか、上空にカラスが飛んでいた。
 その全ての翼に仮面が生えているのがアルトリウスの目にもはっきり見えた。
 他の仲間が来ているのか心配になってきたアルトリウスの頬に冷や汗が流れる。
 暗い路地へと入り、しばらくすると2人は開けた場所へ出た。
 人気も無く、戦うにはうってつけの場所だった。
 しかしそれは同時にマスカレイドにとっても、絶好の狩りのチャンスであった。
「……襲え」
 女性の声を合図に、上空のカラスが一斉にアルトリウス目掛けて急降下してくる。
「うわっ!!」
 3羽の急降下攻撃を腕で防ぎながら、アルトリウスは剣を抜いた。
 剣で次の攻撃を防ごうとするが、カラスの方が速い。
 やばい、と思ったその瞬間、彼の前に一閃が走った。
「ヤソ・ハチヤ。推して参る……」
 黒い羽根を散らしながら落ちるカラスの前に、太刀を抜いたハチヤが喝を入れるかのように言う。
「今夜も親切な人を殺す気でしたか? 残念でしたね?」
 外套姿のアイスレイピアの魔法剣士・レイ(c00759)が半目のまま、マスカレイドにレイピアを向ける。
 アルトリウスを護るように、エンドブレイカー達が並ぶ。
「遅れてすみません! 大丈夫ですか?」
 アリスが傷ついたアルトリウスへと駆け寄る。
 抱きしめていたスピカを一回強く抱きしめた後アルトリウスへと放った。
「がんばるです!」
 青く光るスピカが彼の傷を舐めて癒していく。
「さて、と」
 その様子を傍目に、暗殺シューズをはいたファニーがマスカレイドへ向く。
「今度はお前が痛い思いをして貰おうかしら?」
「……痛い思いだって?」
 奇襲に失敗したためか、怒りを含めた声で言いながら女性が黒いベールをむしりとるように投げ捨てた。
「どいつもこいつもあたしを馬鹿にしやがって。そう簡単にやられるかよ!!」
 脱いだベールの下には、マスカレイドの仮面が顔全体にあった。

●舞踏会の終わり
 1羽減り、3羽になったカラスが次に狙ったのはカノンだった。
 防具などで護られていない頭を狙おうと、鋭いクチバシがカノンの体に刺さる。
「カノン!!」
 大鎌で振り払おうとするカノンにセスが物凄いスピードで迫る。
「こんの…っ! 焼き鳥にすっぞ!」
 カラスの1羽を横なぎで叩き落しつつ、セスがカノンの盾になろうと彼の前に立つ。
 レイも逃げようとしたカラスの一羽に超高速の一撃を打ち込む。
「なぜ殺した?! 何の罪もない人だったはずだ?!」
 アイスレイピアを繰り出しながら、ノクスがマスカレイドへと問う。
 その一撃でマスカレイドの腕が凍る。
「はっ! あたしをなめてる奴なんざ、死んで当然だろうが!!」
 つばを吐き捨てるような仕草をしながら、マスカレイドが腕の凍結を力ずくで砕く。
 その言葉を聞いたノクスの頭に何かがカッと湧き上がった。
「貴様……! その言葉二度と言えなくしてやる!!!」
 激しい怒りをあらわにし、ノクスが残像を持った突きをマスカレイドへと放つ。
 数撃がマスカレイドの腕にあたり、破れたドレスの隙間から血がにじむ。
「くっ! ……お前ら全員、カラスに食われてしまえ!!」
 マスカレイドはノクスと距離を離し、カラスを呼ぼうと上空を見上げる。
 しかし、そこにカラスは一羽も飛んでいなかった。
「そのカラスは、これで最後ですよ!!」
 凍ったカラスを突き刺しながら、レイが言う。
 気づけば、全てのカラスが地面に倒れていた。
 ノクスがマスカレイドの相手をしている間に、他のエンドブレイカー達がカラスを退治していたのだ。
「さぁ、これで残るは貴女だけですわよ?」
 ファニーが脚から衝撃波を繰り出しながら言う。
「ち、ちくしょう!!」
 衝撃波を防ごうと、舌打ちしながらマスカレイドが腕を組む。
 だが防ぎきれず、衝撃でバランスを崩してしまう。
 そのスキをクウィルが見逃さなかった。
「仮面舞踏会はここまでです!!」
 間合いを一気につめたクウィルが繰り出した渾身の一撃を振り下ろす。
 渾身の一撃がマスカレイドの仮面に直撃し、鈍い音と共にマスカレイドの仮面が割れた。
「馬、鹿に、しや、がって」
 肺の奥から吐き出すようにそう言ったマスカレイドはがくりと倒れ、動かなくなった。

「こうなると、一般人と変わらないですね」
 太刀を納めながら、ハチヤがマスカレイドだった女性を一瞥する。
 これなら、強盗にあって死んだ、ということになるのだろうか、とハチヤは思った。
「さぁ、急ぎましょう? 誰かに見られぬ内に」
 外套を脱ごうとする者を止めつつ、ファニーが先に走り出す。
 証拠を残さぬよう、足早にエンドブレイカー達はその場を去るのであった。
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