<リプレイ>
●アクスヘイムへの道
世界の瞳による転移が出来なくなったという緊急事態を受けて、調査を志願したエンドブレイカー達はまずはエルフヘイムへと転移した。
「アクスヘイムの『代理者』のお二人には、前に少しお会いしたことがありますが、エンドブレイカーではありませんし、戦闘能力もない……心配ですね」
金鎖の烏・キサ(c01950)から状況の説明を受けたエルフヘイムの代理者であるクライブは、眼鏡の向こうで心配そうに眉を寄せる。
そしてクライブの協力も得て慌ただしく短時間に準備を終えると、調査隊は早速アクスヘイムへ向けて出発した。
「それじゃ、前と逆の道を行くとするか!」
「地図などの準備も万全ですよ」
千撃の真紅・シア(c00709)や無銘の騎士・フェミルダ(c04105)をはじめ、かつての移動経路を再確認したエンドブレイカー達は、迅速に移動を開始した。夜陰に咲く六花・ルーシア(c27132)らが作った地図に書かれた最短のルートだ。
永遠の森エルフヘイムと戦神海峡アクスヘイムへ向かうに当たって、最初にエンドブレイカー達が足を踏み入れることになるのは広大な森だった。
今の時代、都市国家間の交流を活性化しようにも、そこに多数発生している巨獣を含めたモンスターの存在は人類の行き来を阻害する要因となっている。
とはいえ、それらが障害となりうるのは、人類の大半がまともな戦闘力を持たないことに起因している。
今のエンドブレイカー達のような、特別に戦闘能力の高い集団にとって、この森に出現するモンスターの存在はほとんど脅威とならない。
『オォォォォーン!!』
青空リオン・モカ(c02273)達、ハウリングを使える魔獣戦士が、こちらを狙おうとした獣たちに魔獣の雄叫びをぶつけて力の差を見せつけ、本隊に接近して来る前に追い払う。
「森の主様に力を借りられればなぁ……」
以前にランスブルグに向かった手を使おうとした日日是好日・マーズ(c34336)。
エルフヘイムの森の主の力を借りられれば、確かに森の行軍は早まっただろうが、もっとも、広大な森のどこにいるとも知れない森の主を探すよりは、森を全力で踏破する方がまだ早いので、仕方がないところだっただろう。
もっとも、大人数であり、並みの冒険商人などでは及びもつかないほどに一人ひとりが強力なエンドブレイカーに襲いかかろうとするのは、偵察役として先行したエンドブレイカー達に不幸にも食いついてしまったモンスターぐらいだ。
「下手に仕掛けて来る方が気の毒な気もするな」
天鳴空啼狐・ソウジ(c00485)が、ハウリングでも追い払えなかった植物型のモンスターをハンマーホームランでぶっ叩く。
「だが、僕達の帰還が故郷を救う一手となるのなら、躊躇してはいられないな!」
ソウジと同じ【素敵】に所属した素敵先生・リアルマ(c04790)が、木々の合間から伸びて来る緑色の蔦を滑るように切り裂いた。
「コールリザード使ってるから、オオトカゲは見かけても攻撃とかしないでくれよ」
「おう、狩らないよう気をつける!」
光明の虎・リム(c11279)に、鋼鉄獣・リコルト(c24370)が応じる。
「……どっちかというと、戦闘担当の人達に伝えた方がいいかも知れませんね」
リムや天照月華・シャルリア(c00398)らの使ったコールリザードで呼び出されたオオトカゲは、荷運び要員として利用されていた。
日中は可能な限りの速度で進軍を続けていたエンドブレイカー達だが、夜間となると足を止めざるを得ない。
夜を迎え、周囲では白帝の森の住人・ティズビー(c34311)や野営の準備が行われていた。
南瓜王国魔女・ラマナ(c03217)のように、予め用意して来たブイヨンを使って料理を行っている者達の周りでは、良い臭いが漂っている。
「メイガスだけで先行出来ればよかったんですけどぉ」
「それができるほど、メイガス乗りの人数は多くないからね……」
残念そうに言うラッシュビートプリンセス・シンシア(c33799)に、行雲流水・レネ(c08264)は周辺を警戒しつつ応じる。
少人数で先行しても、それで個別にモンスターの群れに襲われてしまっては意味がない。
夜行性のモンスターがどれだけいるかも分からない以上、不眠不休で行軍することも可能なメイガス乗りといえど、なかなか単独で先を急ぐというわけにもいかなかった。
もっとも、滅びの大地での探索中などにも指摘されていたことだが、夜間であろうと睡眠の必要すらなく行軍可能なメイガス乗りは、こうした状況での警備には打ってつけだ。
「ボク達は休憩は最低限で済むしね」
夜間の警戒を取りながら、白雪の騎士・メイフェリア(c01621)が言う。
他にもインソムニアを使える星霊術士や魔想紋章士、忍者といった者達が中心となり、夜間の見張りが行われていた。【盾華】の焔硝火・エレフィリア(c01684)のように、夜間の戦闘に備えて待機している者もいる。
急な出発となったが、泡志願・エシラ(c00097)らは防寒具の準備も行っていた。
「急いでる分、途中の休息はとれるようにしておかないと……」
「思考も運動も万全の状態で行えるようにして臨まないとね」
仲間達に疲労回復に効くと言われる食品類を配りつつ、代世紡ぎ・アルスト(c19493)が言う。
「万が一ということも考えないとな」
新緑を纏う狩人・アレス(c01633)はそう考え、ブイヨンを作っていた。
世界の瞳が使えなくなったことで、アクスヘイムで何らかの変事が起こったことは明白だ。
現地に辿り着いた時に疲労しきっていては、その場で対応できない可能性がある。
体力を保ちつつも、エンドブレイカー達は通常を遥かに上回る速さで森を抜けて行った。
●巨獣の荒野
森を越えた先には辺境の荒野が広がっている。
巨獣たちが徘徊する、巨獣の荒野だ。
木々がなくなり、歩く上での障害がなくなったことで旅足は早まった。
「ノソリンとかグランスティードとかを使える人は頼むよ」
騎乗可能な星霊などを利用し、光狩・ラス(c05348)の頼みに応じた者が、周囲に協力して荷物などの輸送を手伝う。
「敵対しそうな者をどれだけ早く発見し、先制攻撃で倒すかだな」
森の中では有効に働いていたシノビムーブも使いづらくなり、赤烏・ソルティーク(c16063)はホークアイでの偵察に集中することにする。
視界が開けたことで『ホークアイ』を利用した偵察も有効性を増している。祝炎纏う細剣・エリック(c00544)をはじめ、【礼拝堂】のメンバーも、敵が現れたらすぐに戦闘に入れるよう警戒を密にする。
グランスティードに乗り、先んじての偵察を行っていた眠れる灰色熊・アレクセイ(c01422)は、前方に地図にない岩山を発見していた。
「ありゃ巨獣だよな」
「おそらくそうだな……」
言われてミールの若獅子・プラウウェン(c16137)はその岩山をしげしげと眺める。ホークアイをでその岩山を観察し、笑顔ときどき無表情・クゥ(c01536)が仲間達に言う。
「マウンテンタートルかな」
「回避最優先でいきましょ」
太陽の娘・モモ(c16080)の提案に周囲の者達が頷いた。クロム・ベルワルド(c09209)がファイアーワークスを使い、後方にいる仲間にも敵の存在を知らせる。
エンドブレイカー達は迂回するルートで岩山の周辺を回り込むようにして進んでいった。
戦闘となって、他の巨獣を引き寄せてはたまらない。
だが、そうした努力にも関わらず、こちらを捕食しようと近付いてくる敵は現れて来る。
「前方に砂嵐!」
「こんなところで?」
ボイスブースターを使っての暁風・サーシス(c18906)の警告に、空追い鳥・レラ(c05439)は耳を疑った。だが、その言葉の正しさを示すように、砂嵐はこちらへと向かって来るとエンドブレイカー達を飲み込んだ。
体に当たる砂に激しい痛みを感じながらも、エンドブレイカー達はそれに違和感を覚える。
「これ、ただの砂嵐じゃなさそうだぞ! 俺達の居る一帯以外は風も吹いてない!」
「イマージュ? 巨獣?」
原因を問う声に、悠久の緑・アイシャ(c03582)が答えた。
「巨獣みたいだよ!」
砂嵐の向こうに動く影を認め、アイシャはそちらを指し示す。
前方の地面に出来た傾斜の向こうに出来た穴でこちらを威嚇するのは、建物よりも長い鋏をむき出しにした巨大なアリジゴクだ。
「どんなに急いでても、旅をナメたらダメだよね」
以前はランドホエールが豊富にいた場所だが、エンドブレイカー達によって狩られたり海賊の手駒にされたりと、数を減らしているらしい。
その分だけ、別の巨獣が勢力を拡大したということなのだろう。
接近を阻むように広がる砂嵐を突っ切って、【北斗七星】の者達が前に出る。
「邪魔はさせないよ!」
トンファーを回転させながら突っ込んだ蒼月の浮羽・ミント(c05218)が、地面から突き出された巨獣の頭部を殴打する。
砂嵐を起こす間は感覚が鈍くなるのか、ミントに続いて繰り出された【北斗七星】のエンドブレイカー達の攻撃は面白いように命中した。
それでも動きを止めないのは、流石に巨獣というべきか。
地面に潜ろうとするアリジゴクに、愛と正義の使者・フタヴ(c31192)は【ジャイアントキリング】の仲間に指示を出す。
「また襲われたらたまらないな、ニャルラ、頼むっす!」
「お任せですぅ〜」
蝋燭の正しい消し方・ニャルラ(c08107)の放った猟犬が、巨獣に群がりその硬い殻に牙を突き立てた。
甲高い悲鳴を上げる虫型巨獣。
砂嵐がやみ、その瞬間に【白炎龍】のエンドブレイカー達が飛び出した。
戦闘のためと体力を温存していた白炎鬼・レイガ(c04805)の振り上げた大剣が、巨獣の頭部へと叩き付けられ、轟音と共に巨獣の体が地面に叩き付けられた。
「マスカレイドじゃないみたいだねー。棘(ソーン)食べられないや」
こちらを襲って来た巨獣を見下ろして、そこにある狂気・ディアルザ(c11478)が、その屍を見下ろして言った。
幸福な者・オルノース(c22594)が、死んでなおピクピクと足を動かしている巨獣を見ながら嘆息する。デモンリチュアルの儀式を行おうかとも考えたが、これでは時間がかかり過ぎるだろう。
「これを消すのは、少々骨そうですね。この巨獣の死体を食べようと近付いてくる、別の巨獣などがいるかも知れませんし、一度離れた方がいいでしょう」
それらを警戒して巨獣から距離を取ったエンドブレイカー達は、僅かな休憩を取ると前進を再開する。
「さっきの砂嵐で怪我した人いない? ちゃぁんと治すからね!」
【幸鳥】の灯想咲・メィフィリア(c19473)が仲間達を癒す。彼女達のような回復に務める者達の存在が、その後にも発生した巨獣との交戦から調査部隊や戦闘班の負担を軽減することとなった。
「此処は任せて、先へ。──確り、成果上げてきてよ?」
鳥曇・アサノア(c19009)たち【長閑】のエンドブレイカーは、その優れた実力で仲間達の道を切り拓いていく。
やがて、遥か遠くに巨大な斧が見えて来る。
都市国家『戦神海峡アクスヘイム』であることを示すランドマークだ。
「ようやくか……」
故郷の姿を目にし、一瞬安堵した緋霄・クレス(c02885)だが、改めて都市国家を見て異常に気付いた。
「揺れている……?」
「なんだ……何が起きているんだ?」
燻る焔・ハルク(c01816)が声をあげる。
遠く見えていたアクスヘイムの象徴たる斧が、突如としてまばゆい光を放ったのだ。
「急ぐぞ!!」
もはや、それ以外を考える余裕もない。
エンドブレイカー達は全力で、アクスヘイムの城門へと向けて駆け出していった。
●アクスヘイムのエンドブレイカー達
時は僅かに遡る。
エルフヘイムからアクスヘイムへと調査隊が向かっている間、アクスヘイムでは現地に残留していたエンドブレイカー達が、独自に動きを起こしていた。
他のエンドブレイカー達が来るまで、どう頑張っても何日もかかる。
その時間をどう使うかは、この都市国家の運命に大きな影響を及ぼすに違いなかった。
「こりゃ参ったな……坊ちゃん達が来るまで頑張るかね」
九龍公・シーヴァー(c03034)の留守を預かる玄律・ウィンドラス(c06357)は、領地の鎮静化に務め、蒼穹の誘い手・セイラム(c01947)は私塾の子供達や街の人達を守るのに専念していた。
「まあ……色々守りてえもんもあるし、気張るしかねえよな」
そう考え、暴動の現場へと赴いた黒ノ咎猫・キーストア(c07587)がそこに見るのは、マスカレイド達の姿だ。出動する城塞騎士達を容易く倒すマスカレイド達の姿に、思わず舌打ちする。
「ち……数が多過ぎる!」
キーストアは騎士の命を奪おうとしていたマスカレイドの動きを魔鍵で封じるが、他のマスカレイドが襲って来れば、城塞騎士達の生き残りと共に逃げるしかない。
「た、助かったよ」
城塞騎士からの礼に頷くキーストアだが、この場でも何人ものマスカレイドがいるのでは、敵が合計でどれだけいるのか見当もつかない。
それ以降は、城塞騎士達と共に避難誘導に務めるキーストアだが、被害の広がりを止めるのに戦力が不足していることは否めなかった。
一方、ピエールの屋敷の周辺では騒ぎが起きていた。
潜入し、代理者達に接触しようと試みた白銀の射手・ラーファガ(c04886)が、敵に発見されていたのだ。
「こいつはマズったな……!」
ラーファガの逃走を手助けするべく、蒼い疾風〜幸運の運び手〜・クード(c11662)が石を投げつけマスカレイド達の気を逸らすが、今度はクードの方にも敵の攻撃が飛んでくる。
「ちょいとあんたら、ここで何してんだい!」
必死で逃げるラーファガとクードの逃走を援護しようと、定食屋の呵呵大笑・ジェルトリュード(c11594)は敵を揺さぶるべく屋敷を囲ったマスカレイドに近付いていく。
だが、定食屋からの納入という風情でピエールの屋敷に近付いたジェルトリュードを出迎えたのは、マスカレイド達の攻撃だった。
「くっ……!? こりゃあたしもヤキが回ったかねぇ……」
なんとか一撃で倒されるのを避けたジェルトリュードを、屋敷を見張っていたポケットブック・ヒクサス(c01834)はやむなく姿を現し救助する。
「すまないねぇ」
「敵は、正体が露見することを全く気にしていないようですね」
世界の瞳の扉を押さえた時点で、エンドブレイカー達に事態が露見するのは止めようもない。
屋敷を抑えている者達……あるいはその上にいる者は、もう正体などバレても構わないと思っているのだろう。
何のために時間を稼ごうとしているのか。
それを結論するには、情報が明らかに不足していた。
「暴動に触発される一般人が少ないのは幸いでしたわね」
アラネトス家を率いる白光の旋律・アルネア(c04358)は、何があろうともエンドブレイカー達が守る、という宣言で早々に領民を落ち着かせるとエルフヘイム側の辺境へ繋がる門を抑えていた。
既に外壁の城門周辺にマスカレイド達も手を回そうとしていたが、アルネアと、合流したダブルインパクト・アゴニー(c10584)は彼らと協力し、向かって来たマスカレイドの部隊をなんとか倒すことに成功していた。
「一般人がマスカレイド化するケースは、そこまで多くないようですわね」
以前の戦いで犯罪者の素養があるような者があらかたマスカレイド化してしまったからか、都市全体を見ても、一般人が暴動に加わるようなケースは少ないようだった。
「アゴニー達のアクスヘイムを、マスカレイドの好きにはさせないデス」
とはいえアルネアとアゴニーも、今、第一線で戦っているようなエンドブレイカー達に比べれば実力不足は否めない。2人いなければ危なかっただろう。
「アゴニーさん、外から近付いて来る集団があるそうですわ」
「お、ようやくお出ましデスかね?」
大斧からの揺れが激しくなる中、仲間達を出迎えようと城門の外に顔をやったアゴニーは、不意に後ろからの光を感じる。
「なんデスか?」
「斧が……!」
ますます激しくなる揺れは、アクスヘイムが迎える悲劇の終焉を示そうとしていた。
●戦神海峡の崩壊
「こちらデス!」
アゴニーに誘導され、調査隊のエンドブレイカー達はアクスヘイムの外壁に辿り着いた。
「何が起きてるんだ?」
「見ての通りデス!!」
アゴニーとアルネアからの説明を受けるが、分かるのは現状で詳細が不明ということぐらいだ。
エンドブレイカー達がアクスヘイムの内部に入り、活動を開始しようとする瞬間だった。
「斧が!」
エンドブレイカー達の見ている前で、斧は忽然と消失した。
唖然とする暇もなくアクスヘイムを構築する構造物に大きな震動が走り、都市の表に出ている建物が地滑りを起こしたように次々と崩れ落ちていく。
アクスヘイムに領地を持つエンドブレイカー達の多くが、自分の領地の安否を確認するべく慌ただしく動き始める。
「父様、母様。……どうか、無事で」
天上の月・ノクス(c00524)はそう祈り安否を確認に向かう。
街へ向かったエンドブレイカー達は、灰皓の衛・エルンスト(c07227)をはじめとする【止観】のエンドブレイカー達は、そこで略奪が起きているのを目の当たりにしていた。
略奪を行っている者達を止めようとしたのだろう、倒れている城塞騎士達の姿を認め、城塞騎士団の指南役であるエルンストの顔に怒気が浮かぶ。
「許さん……!」
切り込んでいくエルンスト。【止観】の仲間達もそれに続き、マスカレイドとの戦闘に突入する。
「これは、とにかく抑えないことには他の人達からの情報収集どころではなさそうですね」
獺星・オッターテイル(c08867)はムーンブレイドを振るいながら言う。
領地へ向かったエンドブレイカー達も、この事件による被害への対応で忙殺されることとなっていた。
「建物への被害は避けるぞ!」
黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)は【煌星】の仲間達と共に、一般人を襲うマスカレイドとの戦闘を繰り広げていた。
「エンドブレイカーか! テメェらを殺せば良い目も見れるってもんだ!」
「ルミ達はここだよ! かかってきなよ!」
デモン機巧少女・ルミティア(c30986)が敵から仲間達の盾になるように前に立つと、銀目の踊り子・タージェ(c19470)の召喚した星霊バルカンが、その顔に炎を叩き付ける。
アクスヘイムに侵入したマスカレイドは、以前の戦いの時ほどに多くは無い。
だが、実力はあの時と比べれば明らかに高かった。
「まだ薔薇は咲いていないはず……だよな?」
真銀のトロバイリッツ・アルメイア(c02067)は大斧があった場所を見上げる。
かつての戦いで咲いた棘(ソーン)の薔薇は、いまだ咲こうとはしていない。
だが、今の状況でさらにマスカレイドが暴れ続けたなら、すぐにでも棘(ソーン)は危険域に達するであろうことほ目に見えていた。
●『代理者』屋敷を奪還せよ
棘(ソーン)の開花を許さぬためにも、エンドブレイカーによるマスカレイドの撃退は急務だった。
そのためには、調査隊のエンドブレイカーだけでは手が足りない。
世界の瞳による転移で、より多くのエンドブレイカーをアクスヘイムに来ることができるようにする必要がある。
アクスヘイムの『代理者』であるピエールとフローレンスがマスカレイドに囚われているという事実は、現地のエンドブレイカー達の情報ですぐに判明した。
そうなると急務となったのは、ピエールの屋敷の奪還だ。
アクスヘイムの上層部にあったピエールの屋敷周辺も斧の消失によって地形に被害を受けていたが、屋敷自体は幸か不幸か、星霊建築によって得られた頑丈さのために無事のようだった。
「潜入には失敗したがな。屋敷の見取り図は作っておいたぜ」
救援に来たエンドブレイカー達に合流したラーファガが、仲間達に見取り図を渡して言った。
「こいつは助かるな」
魔女・カタリナ(c01060)がニヤリと笑う。エンドブレイカー達も、アクスヘイムに来る際に普段使っている屋敷だが、現在の外から見て判明した分の敵の配置が分かったのは大きい。
「今の戦力なら、充分に屋敷を奪還できるな」
屋敷周辺の情報を集めると、エンドブレイカー達はそう結論する。
命の危機に晒されている人々を救うためにも、事態は一刻を争う。
敵が奪還の動きに気付く前にと、エンドブレイカー達は一気に動き出した。
【探偵兵団】の阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)と紫風天翔・レイラ(c03886)が、それぞれハートクエイクアローとソニックウェーブを解き放った。
屋敷の入り口で見張りをしていたマスカレイド達が、相次いで崩れ落ち、吹き飛ばされる。
「て、敵襲だ!」
「遅いわよ!」
アクスヘイムを案じる探偵・ティルナ(c03037)が、攻撃に気付いたマスカレイドに断罪の拳を叩き付け、星輝穿雲・ディーア(c02611)のクリムゾンハウンドが弱った敵にとどめを刺した。
たちまち始まる乱戦の中、魔剣・アモン(c02234)とハムスター・シシィ(c03556)は敵の動きを断ち切るように動いていく。
「代理者と扉の奪還が第一だね。僕達は奪還に動く人達を援護するとしようか」
「はーい!」
もっとも、2人が心配するようなこともなく、エンドブレイカー達は優勢に戦いを進めていた。
「フローレンスは、自分の部屋に囚われているようね」
敵の動きからそう判断した紅華絢爛・セリ(c03885)は、他のエンドブレイカー達にもそう伝える。
「オッケー! それじゃ早いところ助けちゃおうか!」
トランジットパッセンジャー・ピノ(c19099)は、昏錆の・エアハルト(c01911)と共にフローレンスの部屋へと押し入った。
ピノの投げつけたマジックマッシュからもうもうと煙が噴き上がり、フローレンスを見張っていたマスカレイドが幸せそうな表情で崩れ落ちる。
「こ、こいつの命が……!!」
「遅いっての」
フローレンスを人質に取ろうとしたマスカレイドを、エアハルトのナイフが鋼の龍となって襲う。なおもマスカレイドは抵抗しようとするが、その命を銀雷閃・ツルギ(c08167)が断ち切った。
「大丈夫、フローレンス?」
「ええ、私は……」
かつてガノッサス・アックスの元から自分を連れ出してくれたエンドブレイカーであるツルギやセリが現れたことで、フローレンスはほっとした表情を見せた。
それからさして時間もかけず、屋敷内にいたマスカレイドは全て撃退された。
釘で封じるという原始的な手段で封鎖されていた世界の瞳に通じる『扉』も解放される。
だが、屋敷内に、もう一人の代理者であるピエールの姿はなかった。
「参ったな。僕達が見張りを解いた後で、どこかに移されたのか……?」
この屋敷にいたマスカレイド達は、最初に屋敷を制圧して以降、誰からも新たな指示を与えられていない様子だった。だとすればピエールは殺害されず、どこかにいるのだろうが……。
「何か気付いたことはなかった? アックス家のこととか」
火焔鍵盤・クレイ(c03163)は夫を案ずるフローレンスにそう尋ねる。
「そういえば……私が、彼らの『おやっさん』の血縁のようなことを言っていました。そんなはずはないんですが……」
『アクスヘイムの戦い』を引き起こしたガノッサス・アックス以下、フローレンスの実家であるアックス家はフローレンスを除いて既に断絶している。
だが、エンドブレイカー達はその唯一の可能性を知っていた。
「ガンダッタ・アックス」
それはフローレンスの祖先にして、大魔女スリーピング・ビューティの城の『鍵』を魂に宿した六勇者の名であった。
●消えた大斧と黒刃使いの影
世界の瞳による転移が早期に再び行えるようになったことで、これまで調査隊として参加していなかったものの、アクスヘイムへ向かう準備を整えていた400名余のエンドブレイカー達が一気にアクスヘイム内に合流することとなった。
彼らはアクスヘイムの斧の消失と、それによって起きた惨状に絶句するも、すぐに人々を救助するのに加わり、あるいは調査に加わっていた。
アクスヘイム内で活動するエンドブレイカーの数が一気に増加する中で、信天翁・パスカル(c19822)は、レスキューサーチで要救助者を探し、それを他の者達に伝える一方で、自分は【翡翠の翼】の仲間達と共に略奪を行うマスカレイドと戦っていた。
「一体、何があったんだか……」
真白色のレクイエム・マシロ(c19828)は略奪を行っていたマスカレイドを縛り上げながら息をついた。嘘吐き・トコトゥカ(c23536)の爪が、マシロの縛り上げたマスカレイドにとどめを刺す。
「ボク達が到着する前に起きていたという揺れは、大斧が消失する前兆だったのでしょう」
崩れ落ちた建築物から救出した人々は茫然とするしかないようだった。
彼らにとっても、あまりにも衝撃的な出来事だったのだろう。
「この被害……やはり、ガンダッタ・アックスが来たということなのか?」
古のアクスヘイムの王であったというガンダッタ・アックス。
彼が魂に大魔女スリーピング・ビューティの城の『鍵』を宿した六勇者の一人でもあることは、イヴ・ザ・プリマビスタや勇者の最長老ルーマからの情報で判明している。
崩壊した街を走りながら、壊し屋・ジョルジュ(c01908)は、彼が出現したのではないかという危惧を新たにする。
多くのエンドブレイカー達が街の人々を救う一方で、大斧のあった場所に赴いた玲瓏の月・エルス(c00100)はそこにある大穴を見て絶句していた。
おそらく、この大穴は斧の『柄』が突き刺さっていた部分だろう。
「あの斧に、消えるような仕掛けがあったということなんでしょうか……?」
「オブジェじゃなかったの?」
刺青華・リリ(c11948)が首を傾げる。
エンドブレイカーの中にもアクスヘイムの象徴たる斧を単なるオブジェだと思っている者もいるようだが、実際は強固な星霊建築によって守られたものだ。
かつての時代には、現在では人魚海の底に沈んだとされる海底都市にあり、その後この場所に移転したと推測されるのだが、詳しい事情は不明だ。
同様に都市国家の象徴となっている武器には、ランスブルグの象徴『天槍』やアマツカグラの象徴『天津太刀』がある。
天槍は数年前のカトブレパスとの決戦の際にマスカレイドを消し去ったというし、天津太刀の方は先日の戦勝祈願祭の際に、加護の前兆とも思えるような動きを見せている。
アクスヘイムの斧も、同様の存在だとするならば……。
「……というか、あの斧を移動するって並大抵のことじゃありませんよね」
天槍はランスブルグの岩山に突き刺さる前には『人類王都』なる場所にあったことが分かっているので、なんらかの移送手段があったのだろう。
「少なくとも、今回の惨事を引き起こした者は、それを知っていたのかも知れません」
その後、付近で救出された住民から情報を集めたエルスは、斧を担いだ巨漢を目撃していたという証言を得ていた。
エンドブレイカー達にその情報は伝達され、皆は一人のマスカレイドのことを想像する。
「……黒刃使いガブラス」
【星ノ音】の夜霧の舟・エルナンド(c04241)は、推測が当たってしまったと顔をしかめる。
かつてアクスヘイムで海賊騒ぎが起きている最中に現れたガブラスは、その後も勇士号を狙い海賊群島での戦いに介入しようとするなどの行動を見せていた。
「まさか以前の彼の行動も、今回の惨事の『準備』だったというのか?」
●ディスカスハイブ遭遇戦
ガブラスの介入が確定したことを受けて、一部のエンドブレイカー達は、戦闘部隊を伴ってギガンティア「ディスカスハイブ」へと向かっていた。
ディスカスハイブは、かつて黒刃使い・ガブラスとエンドブレイカー達が遭遇した場所だ。
閃光の・エクレール(c02687)や夜来香・ヘミソフィア(c03151)は、ここに新たな現象が発生しているのではないかと考え、また漆黒の黄金忍者・ケンハ(c20888)はガブラス自身がここに何かをしているのではないかと疑う。
果たして、その予想は一部は正しく、一部は間違っていた。
エンドブレイカー達は偶然にも、大斧の方角からディスカスハイブの方面へ向かって来たマスカレイドの集団と遭遇することとなったのだ。
マスカレイドの先頭を進む、浅黒い肌の大男には、見覚えがある。
以前にも担いでいた黒斧の他に、もう一つ、白く輝く大斧を携えているが……。
間違いは無い。あの男は、これまでにも幾度かエンドブレイカー達の前に姿を表したマスカレイド、
「黒刃使い・ガブラス」だ。
ガブラスは、エクレール達エンドブレイカーの存在に気づくと、言葉を発した。
「うひゃあ!」
「うひゃあ?」
「ゲッ、ゲホ、ゲホッ! エンドブレイカーが何でココに! 何も準備できてないお腹痛い……!」
素っ頓狂な声を上げて激しくむせ返るガブラス。
しかし、エンドブレイカー達は一切の油断もする事ができない。
以前の遭遇と変わらぬガブラスの異様な迫力もそうだが……。
彼に付き従う配下のマスカレイド達。彼らは揃って特異な形状の武器を持ち……。
「「無様だな。早く体裁を取り繕え、黒刃使い殿」」
「「まぁでもガンちゃん親方はこういうキャラだから逆にツヨいんでございますヨ、逆に」」
その話し声は、彼らの武器自身から放たれているのだ!
「忘れもしない、奴等が持っているのは【軋る剣ガルヴァルド】に【踊る盾槍ザングルム】!
そして他の奴等の武器も全て……喋る武器! こんなに大量に!?」
こもれびはんたー・リシリア(c12930)が、驚愕の声を上げる。
そして今度は、虚月・レクサス(c03071)達【星ノ音】のエンドブレイカー達が気付いた。
「ガブラスが持っている白い斧……あの形状は……まさか……!」
そう、それはエンドブレイカー達にとって、最も見覚えのある形状の斧だった。
少し落ち着いたガブラスが、今さらニヤリと強者の笑みを浮かべる。
「ゴホッ、ゴホ……。ほ、ほう、流石に気づいたか。そう、こいつらは全てジュウゾウの『真打』!
そして俺が持つ白斧は、アクスヘイムのてっぺんにささってた斧よ!」
レプリカなどではないことは、その斧から放たれる強烈な力から、すぐに分かった。
「まさか、あの斧を『小さくした』というのか!」
驚愕もあらわに叫ぶケンハ。ガブラスは肩をすくめる。
「本来の持ち主ならば、小さくする必要もねえし、血統の証明も奈落の承認も不要なんだが……。
いやー、俺がこれを手に入れるには、本当に綿密な準備が必要だったぜ!」
暴れん坊領主・ソル(c07090)が、一気呵成にガブラスへ突き進む。
「例えこの身が砕けようと、テメェらなんぞの好きにゃさせねぇぜ!!」
「斧を返しなさい!」
そこまで聞けば十分だと、【風鳴りの塔】のエンドブレイカー達が、薔嵐カプリチオ・アリスティエラ(c01927)を先頭にガブラスへと突っ込んでいく。
「行って下さい!」
【デッドエンド】の妖精騎士・パラヴァニ(c00901)が、故郷の象徴を奪還しようとする彼らを援護するよう妖精に命ずる。ガブラスへの進路を塞いでいたマスカレイドを【デッドエンド】や【フラット】に所属するエンドブレイカー達が退けると、【風鳴りの塔】の者達は一直線にガブラスへ向け突き進んだ。
歴戦のエンドブレイカー達が繰り出す連携のとれた攻撃は、圧倒的な実力を誇るガブラスに痛烈なダメージを与えていく。
「短期間に実力を上げたもんだ!!」
アクスヘイムの斧を楯代わりに、ガブラスが黒斧を振り回す。
黒い斧から放たれる暴風はエンドブレイカー達を吹き飛ばし、斧が振るわれるたびに最強クラスのエンドブレイカーが次々と打ちのめされた。
その凄まじい技の冴えは、エンドブレイカー達に先の三勇者決戦でエンドブレイカー達と戦った「東方賢者・マギラント」を思い起こさせる。魔術と武芸、全く方向性は違うながらも、ガブラスの実力の高さは間違いなくマギラントに比肩しうるものだ。
「その力、やはり勇者か!」
仲間を庇い、なんとかガブラスの斧を受け止めた、蒼暁の刃・クロービス(c04133)が敵の実力からそう看破する。エンドブレイカー達に緊張が走る中、探究者・クリスタ(c03925)はこれまでの情報から、ガブラスの正体を推測していた。
「三勇者決戦に現れたガンダッタの側近は、『準備万端』という言葉を発していた……」
言葉の続きを待つように、ガブラスはクリスタを見つめて来る。その実力を圧力のように感じながらも、クリスタは彼の正体を言い当てる
「黒刃使いガブラス、あなたが六勇者ガンダッタ・アックスなのね!」
「……これだから察しの良い連中は嫌いだぜ。
そうともよ、俺こそが『黒刃使い』ガンダッタ・アックス!
『奈落』との正当なる契約の元に『戦神斧』の譲渡を承るべく帰還を果たした、
人類王の系譜がひとつ『アックス家』の初代当主だ!」
ガブラスは二振りの斧を手に、不敵に名乗りを上げる。
その宣言に、しかしエンドブレイカー達はひるむことは無い。
ガブラスを守ろうとする「喋る武器の軍団」と、決死の戦いを続けていく。
「あんたがたとえ古のアクスヘイムの王だったとしても、今のアクスヘイムで好き勝手させるかよ!」
「……そうだな、『俺』と『戦神斧』と『奈落の軍団』を持ってしても、これ以上は無理かもしれん。
『薔薇の開花』と『エリクシルの収穫』は諦める! 撤退するぞ野郎ども!」
「「えーっ、逃げちゃうの!? エリクシル無いと、テレポーテーションできないよ?」」
「死ぬよりマシだ、とっとと逃げろ!」
「「我ラ既ニ戦神斧ヲ手ニセリ。ヨッテ異論無シ」」
「「いよいよ来るのね! 戦神斧で『大地の扉』をぶち破る日が!」」
「「待っていてくだされ、此華咲夜若津姫(コノハナサクヤワカツヒメ)!」」
「べらべらうるせえよ! 逃げる時は全力で逃げろよもう!」
ガンダッタと部下達は、蜘蛛の子を散らすように、全員がバラバラに撤退していく。
おそらく、それぞれの力量に自身があるからこその、逃げ方なのであろう。
「待て、ガンダッタ……何を考えている!」
「それが分からないんであれば、今度も俺は目的を果たせるだろうぜ」
ニヤリと笑い、ガンダッタは彼にチェイスをかけた翠燕・シャスカ(c06630)へと突進した。
すんでのところで身を翻したシャスカの横をすり抜けて、ガンダッタはそのまま一目散に逃げていく。
「待て!」
チェイスやチェイストマトを活性化していた者達がすかさずガンダッタ達を追跡するために印をつけるが、追いかけようとする彼らを遮るように、暴動を起こしていた、喋る武器達とは違うマスカレイドが、次々と押し寄せて来る。
やむなくマスカレイド達と戦うエンドブレイカー達だが、その戦闘が終わった頃にはガンダッタの姿は無かった。
「ガンダッタはどこに行った? 言え!」
「が、ガンダッタ? 俺達はガブラスの旦那に誘われて……」
締め上げられながらそう応じるマスカレイドにガードナー・ソシエゴ(c14053)は内心で舌打ちしつつも、そのマスカレイドを昏睡させる。
だが、エンドブレイカー達が戦闘を終えるまでの間に、ガンダッタ・アックスとその側近達は、都市外へと脱出していたのだ。
もしもディスカスハイブを目指す者がいなければ、薔薇の花が咲くアクスヘイムを舞台として、ギガンティアを居城にいたガブラス勢との戦いが幕を開けていたのかも知れなかった。
今は、それを阻止できただけでも、よしとするべきなのかもしれない。
●六勇者蠢動
黒刃使いガンダッタ・アックス達がどの方面へ行ったのか──。
その答えは、意外なかたちでもたらされた。
アクスヘイムに直行した調査隊と別れ、海へ向かったエンドブレイカー達が、あるものを目撃していたのだ。
「あれは、黒刃使いガブラスの船でした」
村一番のぷち賢者・ナールディア(c30782)が、そう報告する。
海賊群島の戦いにおいて、ガンダッタは特殊な高速船を使っていた。
勇士号の中枢である遺跡船にも似た、その高速船が、戦神海峡に停泊していたというのだ。
ナールディアは敵が海路を使ったことを推測しており、その推測が当たった形だった。
「ガブラスが六勇者のガンダッタということを知っていればな……」
同じく海で問題の船を目撃していた戦狼・グレイウォーカー(c06504)は悔やむように言うが、喋る武器の軍団もいた事を考えると、少人数の状態で手を出さなかったのは賢明だったと言える。
「人魚ノ方ニハ、被害ハ無かッタようデス」
そう報告する言騙士・パウロ(c04765)。あくまでも、ガンダッタの目的はアクスヘイムの斧……『戦神斧』を持ち去ることだったのだろう。
ナールディア達の報告を受け、船が目撃された場所へ赴いた調査隊のエンドブレイカー達が海に辿り着いた時には、ガンダッタの船は既に出港した後だった。
だが、外海を見たエンドブレイカー達は、そこに船の影を見る。
「あれは……」
「三塔戒律マギラントを出航した船みたいですね」
長い船旅を経て、ようやく戦神海峡に到着した船団は、目印とすべきアクスヘイムの斧が無いことに戸惑っているようだった。
改めて外からアクスヘイムを見て、エンドブレイカー達はその崩壊ぶりに言葉を失う。
「敵の船、か。そういやぁ、滅びの大地じゃ大艦隊が組織されつつあったな……」
滅びの大地を旅して来た九つ頭の毒蛇・クライト(c17033)が、ふと思い出したように言った。
海の向こう、滅びの大地で建造されつつある大艦隊。
その狙う先はどこなのか。
三勇者決戦にて『東方賢者マギラント』は撃破したが……。
ランスブルグ南方の空に消えた『若草の乙女アリッサム』と『砂月楼閣の姫君シャルムーン』。
戦神斧を持ち去った『黒刃使いガンダッタ』。
そして、いまだ姿を見せぬ残る2人、『ガロウマル』と『ラズワルド』。
勇者達との戦いが新たな局面を迎えたことを、エンドブレイカー達は改めて感じていた。
●アクスヘイム調査隊参加人数
(1)アクスヘイムに向かえ!……287人
(2)アクスヘイムで調査活動……294人
(3)臨戦態勢を整える……136人
●アクスヘイムの異変参加人数
アクスヘイムの異変……9人