ステータス画面

奈落の此華咲夜若津姫救出行

<オープニング>

●進軍マスカレイド
「遂に、大地の扉が開かれた。我らが姫の為、そして、大魔女様のおんため、奈落にいる全てのマスカレイドよ、進軍せよ!」
 剣狼剣聖ガロウマル、鋼語りのジュウゾウに後を託された、軍配者九重兵部が、軍配を振り上げると、彫像のように動きを止めていたマスカレイドの軍勢が、息を吹き返した。

 その軍配に従うように、ピュアリィマスカレイドが、バルバマスカレイドが、ゴーレム型のマスカレイドが、蛮族のマスカレイドが、メイガス型のマスカレイドが、影のような不気味なマスカレイドが、人間型のマスカレイドが、一斉に動き出したのだ。
 それは、奈落の地を揺るがす大軍勢である。
 その軍勢は、一路、大地の扉へと動き出したのだ。

「こいつは壮観だな」
「これが、奈落のマスカレイド全軍か。まともに戦ったら勝てるかどうか……」
 その様子を確認した空追い・ヴフマル(c00536)は、同じく見張りに立っていた魔法剣士・クロービス(c04133)と顔を見合わせる。
 2人が見張りから戻ると、奈落を揺るがす地響きに気づいた仲間達が出迎えた。

「遂に始まったのですね」
 煌雪華・ユキノ(c17681)は、食材の調理の手を止めて2人に確認する。
 奈落での生活が思ったよりも長引いた為、だいぶ所帯じみてしまったが、それもこれまでだろう。
「やっと、戦いになるのですわね」
 荒野での生活で少しだけ荒れてしまった白磁の肌をなでつつ、、少女の原形・アリス(c02062)が、うーんと伸びをする。
 奈落に来てから、マスカレイドに気付かれないようにと逃げ隠れしていた事で、かなり鬱憤がたまっていたらしい。
 長い逃亡生活でくすんでいた美しい金髪にも、心なしか艶が生まれたようだ。
「まだ焦る時間じゃないだろ。まずは、敵の様子を良く観察するべきだ。なにしろ、マスカレイドキャンセラーは周囲にマスカレイドがいると使用できないのだから」
 飴色鼠・キルフェ(c05383)は、そう言うと、惰眠を貪っていた配下のピュアリィを叩き起こすと、早速調査に向かわせた。
 こういう時、空を飛べるのは便利である。

「気をつけて行ってきてくださいね」
 嫌そうな顔で隠れ場所から飛び立とうとするピュアリィに、空追い鳥・レラ(c05439)が声をかける。
 荒れ地での生活で、仲間のピュアリィと最も仲良くなったのは、彼女だったかもしれない。

「うん、任せて。言ってくるよっ! レラ」
 そして、ピュアリィは飛び立った。

●大地の扉が開く時
 そして、一刻ほど後、ピュアリィは情報を携えて戻ってきたのを待って、エンドブレイカー達は、今後の行動を話しあうこととした。

「俺達のやるべき事は決まっている。此華咲夜若津姫を救うことだ」
 そう話し合いの口火を切ったのは、日緋色金・スゥイン(c12448)。
 自分達がなぜ、この場所に来たか。
 それを考えれば、やるべきことは自明だろう。

「奈落転送陣があれば、大地の扉に戻れる。つまり、エンドブレイカーの軍勢と合流することも可能ではあるが……」
 ヴフマルも、可能性として口に出すが、ここでそれを行う理由は見いだせなかった。

「いまこそ、私のマスカレイドキャンセラーを使う時でしょう。私達ならきっと出来るはずです」
 こもれびはんたー・リシリア(c12930)も祈るように手を合わせてそう言う。
 だが……。

「問題は、姫の近衛らしい巫女のマスカレイドの存在ですね」
 レラは、頑張って戻ってきたピュアリィの頭を撫ぜてあげながら言う。
 此華咲夜若津姫は単体で、他の全てのマスカレイドをあわせたよりも強い力を持っている。
 そのため、姫に護衛などはついていないし、マスカレイドの指揮官が全軍進軍といえば、ほぼ全軍が大地の扉へと進軍していくのだ。
 が、例外はいる。
 此華咲夜若津姫の世話をする7体の巫女マスカレイドは、いついかなる時も、姫の側を離れないのだそうだ。

「マスカレイドが7体か、少し厄介だな」
 キルフェは面倒そうにそう言うが、その面倒から逃げるつもりは無いのだろう。
「全て倒す。幸い、奴らは一箇所に固まっているわけでは無い。勝機はある」
 巫女マスカレイドは、右手側に1体、左手側に1体、右肩付近に1体、左肩付近に1体、首周辺に3体と別れており、各個撃破も可能となっている。
 もちろん、戦いとなれば、敵も合流するだろうが、先手の優位を得る事はできるだろう。

「わたくし達は、マスカレイドを全て倒さねばなりません。一体でも残せば、マスカレイドキャンセラーが使えませんからね」
 ユキノが、地面に図を書いて皆に見せる。
 二手に判れて左右の敵を同時に襲うか、戦力を集中して片側から順番に倒していくかの、どちらかとなると思うが……。

「全員で動いた方が安全ではあります。でも、時間を掛けて、此華咲夜若津姫が動き出して戦争に加わってしまえば、マスカレイドキャンセラーを使う隙は無くなってしまいます」
 姫がいつ動き出すかはわからないが、あまり時間をかけない方が良いと、リシリアが意見を言う。
 これに対して、ヴフマルは、
「だが、分散して敗北すれば、意味が無い。リシリアが倒されれば、全ての望みが潰えるのだから」
 という懸念点を伝えた。

 どちらの作戦を取るか、そして、此華咲夜若津姫に近づくまでの作戦、戦闘での戦術……時間は無かったが、考えねばいけない事は山積しているようだった。

<行動選択肢解説>

(1)戦力を集中して、マスカレイドを撃破する

 戦力を集中してマスカレイドを撃破します。
 戦闘は有利に進める事ができますが、全てのマスカレイドを撃破するのに時間がかかってしまうのが欠点です。
 時間を掛け過ぎ、此華咲夜若津姫が戦闘に加わってしまうと、マスカレイドキャンセラーを使用するチャンスは失われます。
(ピュアリィは戦力的には心もとないですが、どうしてもというならば同行してくれます)

(2)二手に別れて、マスカレイドを撃破する

 二手に別れて、マスカレイドを撃破します。
 戦力が分散しますが、成功すれば最速での撃破が可能になるでしょう。
 どういう組分にするかも重要となります。
(ピュアリィは戦力的には心もとないですが、どうしてもというならば、レラと一緒に行動します)

(3)エンドブレイカー本隊に合流する

 奈落転送陣を利用してエンドブレイカー本隊に合流します。
 今までの奈落での活動の意味が無くなってしまいますが、勝てないと思ったら逃げることも恥では無いかもしれません。

<プレイング締切>

 9月28日(日)朝8時30分まで!

■行動内容(全角400文字まで)

 行動選択肢を選んだ後、200文字以内でプレイングを、100文字以内でパフォーマンスを送信してください。選んだ選択肢とプレイングにより、結果が決定します。

<プレイング>

空追い・ヴフマル(c00536)
★共通事項に従う

■左班
移動は手→肩→首
足場の悪い所はアビリティのロープを使い仲間と協力し登る
余裕あれば肩の前で偵察※迅速行動最優先
偵察/待機時はステルス

巫女>喋る武器の順に攻撃
同条件なら残り体力の低い方を優先

初手スピニングエア
以降スカイキャリバー
自分が暴走/マヒの際はキュアできる迄空中殺法

両班合流後のみ
体力4割以下で宣言し一旦後退

■奈落転送陣使用条件
リシリアさん戦闘不能時
残り体力の多い3名を残し離脱

少女の原形・アリス(c02062)
★の共通事項に従う。
【右班】
手肩首の順に駆け上がっていく。
巫女と、念の為武器も完全破壊。
待機時にステルス使用。

初手に葬送乱舞
以降はクリムゾンハウンド
戦闘中は余程のダメージを受けない限り回復はしない。
待機時に余裕があれば、水晶髑髏で回復を

魔法剣士・クロービス(c04133)
★共通項は仲間に準ず

■左班
ピュアリィに奈落で作った地図を持たせ
万一の際は、これを証にEBの元へ、と

迅速を旨に
各個撃破目指し
隙を突けた時のみ奇襲

リシリアの無事は優先
彼女への射線は塞ぐ様位置取り

攻撃はリングスラッシャーを主に
フリージングアクセルは移動と敵エンチャ時に
狙いは巫女>喋る武器

回復使用は負担を偏らせぬ為の補佐程度
呼び掛け、任されたらガーディアンクリスタル
出来ればチャージ有の時に
己も倒れる事なき様

飴色鼠・キルフェ(c05383)
★の共通項準拠

★大地の扉への敵の進軍ルートを避け姫に接近
隠密行動にて余計な戦闘は避ける

右班
不安定な場所、手、肩に近い場所ではステルス使用し先行
偵察兼足場確保を行い後ろに手やロープを貸す
迅速な行動優先に、可能なら服の影などで身を隠しつつ奇襲狙い

討伐優先は巫女>喋る武器
スピニングエア主軸にダメージ重視
2手以内に付かなければ暴走はキャンセル
BSには空中殺法で対応
敵エンチャ時はロデオグラップルでブレイク狙い

空追い鳥・レラ(c05439)
★=共通項は仲間に準ず

左班

可能な限り先手/奇襲を狙い身を隠し進軍
ホークアイ併用
敵発見時にはアラーム

攻撃優先は巫女>武器
リシリアさんへのチャージを狙いつつファルコンスピリット主軸
暴走時は麒麟撃でキュア
要回復の仲間が居ればワイバーングレイブで前へ
盾となり時間稼ぎ

ピュアリィは名があればそちらで呼び
後方で回復とBS暴走等の援護を頼む
扇が扱えるなら渡し扇アビも併用
仲間としての声掛け忘れず再マスカレイド化に注意

日緋色金・スゥイン(c12448)
★挟撃タイミング
隠密進軍成功時、3人目の敵を発見した場合は他班の3回目のアラームを感知するまで隠れて待機。両班共に3回目を感知したら仕掛る
但し時間に余裕が無い、或いは2分程経過時点で攻撃開始

他の★は共通事項として従事

■右班
アラームを使用し常に足並み揃え仲間と協力
前衛でフラッグ主軸
暴走・マヒ・虚無はレオでキュア回復
癒しの拳を使用し、1人も欠けさせない
敵の武器は破壊

合流時はヴフマルとリシリアは全力で護る

こもれびはんたー・リシリア(c12930)
共通事項に従う

左班にて行動

戦闘時
巫女→喋る武器の順に攻撃
仲間と同じ標的を優先して狙う
敵単体時は、シャドウロック
敵が複数または自分がダメージを受けてる場合は、星霊ヒュプノス
GUTS4割以下になった味方へパラダイスブリンガー



巫女及び喋る武器を姫の周囲から排除した後にマスカレイド化解除を『願う』
【共通事項】解放後は救出に来た旨と現状を伝え、奈落の軍勢との戦い含め、
今後のエンドブレイカーへの助力を請う

煌雪華・ユキノ(c17681)
【右】
仲間と共に、右手→右肩の順で、巫女マスカレイドを(合流されぬよう)
奇襲攻撃で倒し、別班と合流して首の巫女マスカレイドを殲滅後、
マスカレイドキャンセラーで此華咲夜若津姫救出。

共通事項に従う
アラームは適宜使用
バルカンソウルで巫女周辺を偵察後、密かに接近して奇襲攻撃

戦闘では神火祓魔符で巫女を攻撃、プラスワン効果で喋る武器への攻撃も狙う
巫女を倒した後は神鏡浄霊砲で喋る武器攻撃
傷ついた仲間に神楽舞使用

<リプレイ>

●奈落の此華咲夜若津姫救出行
 大地の扉が開き、マスカレイド全軍が動き出す。
 それを確認した、空追い・ヴフマル(c00536)達、奈落転送陣で奈落に先行していたエンドブレイカー8名とピュアリィ1体も動き出した。
 同行するピュアリィは、奈落での活動の為にマスカレイドキャンセラーによりマスカレイド解除に成功したピュアリィ。
 ジュウゾウが、喋る武器の所持者とするべく、知能を大幅に強化されて作成されたピュアリィは、今では、大切な仲間である。
 彼女は、空追い鳥・レラ(c05439)によくなついており、今回の作戦でもレラに一緒に戦うのだと決意を固めているようだった。

 彼らの目的は、こもれびはんたー・リシリア(c12930)のマスカレイドキャンセラーによる、此華咲夜若津姫の救出に他ならない。
 マスカレイドキャンセラーにより、此華咲夜若津姫を救出する事ができれば、他の奈落のマスカレイド全軍をも凌駕しうる、奈落の最大戦力を味方とする事ができるだろう。

「おそらく、此華咲夜若津姫の攻撃を受けきる事は、今のエンドブレイカーには難しい。なんらかの加護で防護できれば違うかもしれないが、そうでなければ、姫の一撃の前に、全軍敗走という可能性が高いだろうね」
 魔法剣士・クロービス(c04133)は、自分達の行動の意義について、最終確認を行なう。
 悲劇のエンディングをブレイクするエンドブレイカーであれば、戦場に現れると同時に此華咲夜若津姫を撃退する事で、敗走を回避する事ができるかもしれないが……。
 だが、それは、危険な賭けとなるだろう。

「確かに、悲劇のエンディングをブレイクするのがエンドブレイカーですわね。つまり、この私達が、この場にいる事こそが、エンドブレイカーのエンドブレイカーたる所以ではありませんですの?」
 少女の原形・アリス(c02062)は、クロービスの言葉に、薄い胸を反らせて同意する。
 そう、自分達はここに居る。
 それこそが、勝利の鍵なのだ。
「ならば後は、行くのみ。何処まででも……な」
 日緋色金・スゥイン(c12448)の言葉を合図に、エンドブレイカー達は2手に別れて移動を開始した。

 此華咲夜若津姫の左手側から攻撃を仕掛けるのは、ヴフマル、リシリア、クロービス、レラ、ピュアリィの4名と1体。
 右手側から仕掛けるのは、アリス、スゥイン、飴色鼠・キルフェ(c05383)、煌雪華・ユキノ(c17681)の4名。
 左手側の戦力が優勢なのは、マスカレイドキャンセラーを持つ、リシリアの安全を慮ってである。

「皆さんに、神火の導きがありますように」
「楽に行くとは思えないが、とにかく、しくじるんじゃないぞ!」
 ユキノとキルフェの激励を胸に、彼らは戦いに赴く。

●左手のマスカレイド
「何奴、ここは尊き姫の御座所である。下賤のものが近づく事、まかりならぬ」
 此華咲夜若津姫の左手へと近づいたヴフマル達4人と一体の前に、巫女服姿の熟女マスカレイドが立ちふさがった。
 彼女の役目は、此華咲夜若津姫に近づくものを誰何し、追い払うことなのだろう。
 誰何されたのがマスカレイドであったならば、姫の側仕えたる巫女の言に逆らうこと無くすごすごと引き下がったであろうが……。
「そいつは、聞けませんねぇ。俺達は、あんたを倒して先に行く用事があるっす」
 ヴフマルは、一歩前に進み出ると、愛用のククリを油断なく構えた。
「大地の扉が開かれて、まだ半刻もたっていない。なぜ、敵がここまで来ておる。九重兵部殿は何をしておるのじゃ、戦総鬼ともあろうものが不甲斐ない」
 熟女マスカレイドは、仲間のマスカレイドの不手際と思ったのだろう、そう毒づく。
「そこまでにしておくのだね。この襲撃は、戦総鬼とやらの不手際では無い。俺達が一枚上手だったというだけなのさ」
 クロービスは、熟女マスカレイドの誤解を解きつつ、アイスレイピアで華麗に切り込み戦いの幕を切って落とした。
「リシリアは、できるだけ安全な場所で……」
 レラも愛槍である皎憶で牽制しつつ、前に出る。
「うん、わかってます」
 リシリアは、魔鍵を掲げつつ、後衛から戦いを援護するように動き出した。
「わたしも行っくよー」
 そして……戦闘前は戦うのを渋っていたピュアリィも相手が1人だったせいか、はりきって戦線に加わった。

「まずは巫女から……」
 リシリアは、熟女巫女の前でくるりとまわり背を向けると、魔鍵をふわりと放り投げ、巫女の足下に突き刺した。
 足を縫い付けられた熟女巫女を、レラが解き放った鷹のスピリットが左右の爪を閃かせて熟女巫女を切り裂く。
「ぐおぉぅっ、やってくれたね」
 熟女巫女マスカレイドは余裕を失いつつ、エンドブレイカー達を睨みつけたが、エンドブレイカー達の攻撃は止まらない。
 クロービスは、マスカレイドに背を向けたリリシアを庇うように移動すると、リングシラッシャーの一部をホーミングさせ、一部を自分で操って熟女の巫女服を切り刻んだ。
「熟女でなければ、良かったと思わないでもないか?」
 軽口を叩いたヴフマルが、体を回転させて、キックの雨を降らせた。
「わたしもいっくよー」
 しかし、ピュアリィの攻撃は、あまり効果は無かった。

「神の世界は無限也、森羅万象我と倶に有り……」
 このエンドブレイカーの猛攻に対抗すべく熟女巫女マスカレイドが詠唱を行う。
 さすがは、此華咲夜若津姫の近衛巫女というべきか、その回復力は凄まじかった。
 おそらくは、喋る武器の能力も加算されているのだろうが……。
「残念ですが、回復だけでは、勝つことはできませんよ」
 レラの言う通り、いくら回復が凄まじくても、多対一の戦いでは、意味は無い。
 エンドブレイカーが攻撃し、熟女巫女が回復する。
 その繰り返しで、エンドブレイカーは敵を追い詰めていったのだ。
 そして、
「これで、止めだっ!」
 この言葉と同時に地面を氷結させたクロービスは氷の上を滑走し、熟女巫女マスカレイドの体をアイスレイピアで貫いた。
 噴出した血が、熟女巫女の白い衣を紅に染め、ドウっと倒れ伏すマスカレイド。
 すぐにリシリアが、彼女の持っていた薙刀を魔鍵で攻撃して破壊した。
「ごめんなさいね。でも、姫を救ける為には、マスカレイドを残すわけにはいかないから……」
 レラは、そのリシリアに手を貸して、姫の左肩に上に向けて移動を開始した。
「まだ戦いは始まったばかり。急ぎましょう」
 レラの言葉に、うなずいた、ブフマル達は、足早に戦場を後にしたのだった。

●右肩のマスカレイド
「そろそろ次のマスカレイドの居場所か……」
 右手にいた、男の娘巫女マスカレイドを撃破した、スゥイン達は、一路、右肩のマスカレイド目指して姫の腕を駆け上っていた。
「2方向からの各個撃破で4体のマスカレイドを撃破……。ここまで出来て、やっと勝率は五割になるんだ。こんな所で留まってはいられないだろ」
 スゥインの言葉に、キルフェが答える。
 戦いは、まだ前哨戦。
 奇襲の利を生かして、行けるところまでいかなければならない。

 と、その時、前方から驚いた声が響いた。
「えっっっっ!!!!」
 それは、可憐な幼女姿の巫女マスカレイドであった。
 自分の身長程の梓弓を肩にかけた彼女は、信じられないものをみたように、エンドブレイカーを見つめている。

「はじめまして、マスカレイドの巫女さん。私は、神楽巫女のユキノです。そして、さようなら」
 驚いている幼女巫女マスカレイドに向けて、ユキノは霊気に満ち満ちた符を裂帛の気合で撃ち放つ。
 普段はおしとやかなユキノであったが、マスカレイドが自分と同じような巫女装束を着ているというのは、あまり気分が良いものでは無いのかもしれない。
「あなたは、どのくらいで壊れますの? さっそく、試してあげますわ」
 ユキノに続いたアリスは、黒衣の死神を思わせる大鎌を振るい呪言を詠唱しつつ、死の乱舞を繰り出した。
 男の娘巫女マスカレイドとの戦いではあまり良い所のなかった2人共演から、右肩での戦いが始まった。

 もちろん、ただでやられるマスカレイドでは無い。
「奈落に光る星ひとつ、敵を照らして撃ちぬきたまう。スターライトシュートっ!」
 幼女巫女マスカレイドが放った、星の力を宿した巨大な矢がユキノを貫いた。
 巫女対巫女の因縁の対決であろうか。
 が、敵は一人で、こちらは4人。
「あんたに時間をかけているわけにはいかないんだよ」
 キルフェは巫女の脇腹をスピンキックで蹴りあげる。
 更に、スゥインが、猛々しき戦歌をバックに、オーラで創りだした戦旗で、巫女を薙ぎ払った。

「このくらい、風凛ちゃんにはなんともないんだからっ!」
 明らかに虚勢を張るマスカレイドだが、戦力差は歴然であり……。
「っしゃぁ、トルネードスピン」
 必殺の連続蹴りを更に2連続で蹴りこんだキルフェが、幼女巫女マスカレイドの体を千々に引き裂いたのだった。
 さらに、彼女のもっていた梓弓をも破壊したキルフェは、飴を一本口に入れると、余裕の勝利を演出してみせた。

 しかし、
「よし、これで残るマスカレイドは3体。合流して戦えば、勝機は充分……」
 と、戦闘後の軽い手当のあと、スゥインが拳を握りしめて、そう呟いた時、絶望が彼らを襲ったのだった。

 肩口で戦っていた彼らの上、鎖骨の当たりから、近衛巫女長・古手毬と2体の巫女マスカレイドが彼らを見下ろしていたのだから。
「私の可愛い風凛を、よくも殺してくれましたね。お前達が誰だかは知りませんが、今すぐ死になさい」
 左右の部隊が合流してから戦う筈であった、3体のマスカレイド。
 そのマスカレイドが、場所を移動して、戦いに勝利したばかりのスゥイン達の部隊を襲撃する……。
 部隊を2手にわけたリスクが、今、最悪の形で、彼らの目の前に迫っていた。

●足止めと逃走
「私の可愛い風凛を、よくも殺してくれましたね。お前達が誰だかは知りませんが、今すぐ死になさい」
 近衛巫女長・古手毬と2体の巫女マスカレイドの襲撃を受けたスゥイン達の決断は早かった。
 エンドブレイカー4名だけで、敵のボスを含めた3体のマスカレイドを撃破することは不可能。
 そして、自分達が全滅してしまえば、別働隊もまた、各個撃破の餌食になってしまう。
 そうしない為には、少なくとも半数の仲間が、左側の部隊に合流する必要がある。
 エンドブレイカー6名とピュアリィ1体の戦力があれば、マスカレイド3体と戦う事は不可能では無いのだから。

「ここは俺に任せて先に行けっ!」
 スゥインは、残る3人にそう怒鳴ると、3体のマスカレイドの前に立ちふさがった。
「そんな、スゥインさんを残してなんて」
 逡巡するユキノに、スゥインは後ろ向きのまま更に言葉を続けた。
「俺は城塞騎士だからな。これが仕事だ。此華咲夜若津姫の事は頼んだぞっ。必ず救ってやってくれ」
 スゥインの決意を受けたキルフェの動きは素早かった。

「上には向かえないか。なら、滑り降りるっ! 続けっ」
 3体のマスカレイドが首から降りてきた以上、そちらに向かう事はできない。
 ならば、目の前の坂を滑り降りつつ、可能な限り早く左側の部隊と合流するのだ。
 キルフェに手を引かれるように、ユキノが進み、最期に、アリスが黒く輝くドレスを翻し、
「スゥイン様、死んだりしたら、許しませんからね」
 スゥインにそう言い残して、滑り降りていった。

「死ぬな……か。難しい事を言う。だが、最善は尽くそう」
 仲間の撤退を守るべく立ちふさがったスゥインに、3体のマスカレイドの白刃が迫る。
 勝機などかけらもない、ただ、自分の命を盾に時間を稼ぐ孤独な戦いが始まった。

●3度目のアラーム
「ふぅ。これで、終わりだな」
 ブフマルは、巨漢の乙女巫女マスカレイドの所持していた、ロックギターを破壊すると、ほっと息をついた。
 急ぎに急いでここまで来た。
 多少戦闘に手間取った所はあったが、おそらく最速に近い速度で来ただろう。
 あとは、姫の首に向かい、タイミングを見計らって、左右から同時にマスカレイド3体に奇襲をかけて倒すだけだ。
 奇襲がうまくいけば、おそらく勝率は5割を超える。
 そして、5割の勝率があるならば、自分達エンドブレイカーに敗北は無い。
 ブフマルは、3人と1体の仲間の様子をみつつ、上を見あげた。
 消耗は無いとはいえないが、まだまだ、戦えるだけの力は残っている、後は前に進むのみ。
 と、その時、レラが切迫した叫び越えをあげた。
「3度目のアラームっ! 早すぎますっ!」
 それは、右側に向かったキルフェ達4人が、首に座す3体のマスカレイドとの戦闘に入った合図であった。
 はじかれたように走りだそうとする、ヴフマルとリシリア。
 が、クロービスが、それを制した。
「待つんだよ。上に向かっても無駄だ」
「どういう事だ? それは、俺達が到着する頃にはあいつらは負けているって事か?」
 なら許さないと言わんばかりのヴフマルの言葉に、レラとリシリアも、クロービスに視線を向ける。
 一触即発という状況で、だがクロービスは落ち着いて説明を続けた。
「俺達は、ほぼ最速でここまで来ているんだよ。だから、あいつらが幾ら早く進んだとしても、首まで到達している事は無いんだ」
 つまり、首にいた筈のマスカレイドが向こうの肩に移動した……という事だ。
 そのクロービスの説明を聞き、レラははじかれたように言葉を紡ぐ。
「確かに、2つ目のアラームから殆ど時間がたっていません。おそらく、戦闘直後、或いは戦闘中に増援が現れたのでしょう」
「それって、とてもピンチですっ!」
 状況を理解したリシリアが、慌てた声をあげる。
 肩付近で既に戦闘が始まっているならば、今から駆けつけても間に合わないだろう。
 つまり、この作戦は失敗してしまったのだ。

「終わった…………。

 とでも思うと思いましたか?」

 しかし、レラは昂然と前を向き、ピュアリィのフロルへの願いを口にした。
 エンドブレイカーは諦めない。
 なぜなら、絶望の未来を破壊するものをエンドブレイカーと言うのだから。
「各個撃破されれば作戦が失敗する事は、彼らも良くわかっています。ならば、彼らは必ず逃走する筈です。お願い、彼らがどこに向かって逃走するか見てきて頂戴」
「がってんしょうちっ!」
 ピュアリィは、レラの言葉に弾かれるように元気に宙を飛びあがった。
 そして……、
「おっぱいを滑り降りながらこっちに向かう影が3つあるよっ!」
 と叫び越えをあげた。
 つまり、この作戦は、まだ失敗していないという事であった。

●谷間の舌戦
 丘陵地帯を滑り降りて逃走する、アリス、キルフェ、ユキノの3人は、深い谷間の前までやってきていた。
 2つの丘陵地帯をつなぐ深い谷間。
 この谷間を超えるには、上に登って谷間の上を超えるか、或いは谷間を降りて、向こう側の丘陵地帯に登るかしか無い。
 そのどちらも、相応の時間がかかる為、ここが逃走の終着点となるだろう。

「スゥインが命がけで逃してくれたのだがね」
「スゥイン様は、死んでないですわ。私と約束したのですから」
「無駄話はやめましょう。お客さま……ですわよ」
 キルフェ達は、後ろをゆっくりと振り向いた。
 そこには、多少の傷を負ってはいたが、ほぼ無傷の3体のマスカレイドが揃っていた。

「仲間を犠牲にして伸ばした寿命、充分に堪能出来ましたか? ならば、死になさい」
 近衛巫女長・古手毬と2体の巫女マスカレイドが、白刃をきらめかせる。
 それに対して、ユキノが武器を下ろして前に出た。
「あら? 観念したのかしら?」
 古手毬が侮蔑もあらわにそう言うが、ユキノは表情を崩さずに話しかけた。
「たしかに、私達は追い詰められました。おそらく、戦えば勝つ事はできないでしょう。ならば、最期に、教えてください。私達を逃がす為に戦ったスゥインさんが、どうなったかを。それを知らなくては、死んでも死にきれません」
 胸に手をあてて、そう訴えるユキノ。
 そのユキノの迫真の演技に、古手毬は武器を構えつつも攻撃を取りやめたのだった。

「あの男は、勇敢でしたよ。少なくとも、すぐに逃げ出したあなた達にくらべればね。何度切られても、切られても、しがみつくように私達を足止めしてきましたしね。最期は、ボロボロに切り刻まれて落下したので、生きている事は無いでしょうが……。もし生きていれば、優秀なマスカレイドになることもできたでしょう」
 古手毬の言葉に、配下の2体の巫女マスカレイドも頷きを返す。
 どうやら、スゥインは、その戦いでもって、マスカレイド巫女に認められたようであった。

「さて、勇敢な男の話はここまでです。あなた達は逃走者として、不様に死になさい」
 改めて武器を構えた古手毬達。
 だが、そこに、新たな参入者の声があがった。

「たすけにきたよ〜〜」
 空を飛んで助けに来たピュアリィと。
「良かった間に合った」
「助けに来ましたですっ!」
「冷や冷やしたぜ」
「さぁ、ここからが本当の戦いだよ」
 4人のエンドブレイカーであった。

●谷間の戦い
 3体のマスカレイドと7人のエンドブレイカーと、1体のピュアリィの戦い。
 追い詰められた3人のエンドブレイカーを、丘陵地帯の上部を越えて滑り降りてきた4人のエンドブレイカーと、飛んできたピュアリィ1体が救援して始まった戦いは、熾烈を極めるものとなった。
 スゥインの犠牲とユキノの機転、クロービスの機知とピュアリィの協力によって、危機を乗り越えて合流したエンドブレイカーの士気は高かったが、3体のマスカレイド、特に、近衛巫女長・古手毬は、予想以上の強敵であり、戦闘は一進一退の激戦となったのだ。

「橘、桔梗、まずは一匹退治します。攻撃を合わせなさい」
 近衛巫女長・古手毬が、巫女の気を自らに取り込み鬼神をまとわせると、その秘剣でヴフマルを斬り伏せる。
 続けて、橘と呼ばれたマスカレイドが、平正眼の構えから超高速でヴフマルに接近すると諸手突きで両肩を貫く。
「なにくそっ」
 気力で耐えたヴフマルだったが、彼の目の前に目をつぶった状態のもう一体のマスカレイドが姿をあらわした。
「あなたは殺意が強すぎます。我が無心の一太刀の前に命を散らしなさい」
 そして、振るわれる一閃。
 息もつかせぬ連携攻撃に、ヴフマルは力尽き、柔らかな地面に倒れ伏した。

「ヴフマルっ!」
「ヴフマルさんっ!」
 倒れたヴフマルに、慌てて声をかけるエンドブレイカー。
 城塞騎士のスゥインが健在ならば、ヴフマルを守れたかもしれなかったが……。
「ちっ、マスカレイド如きがっ!」
 キルフェは渋面を作り舌打ちをする。
 一進一退の攻防で全員がダメージを受けるような戦いを行いつつ、それ故に、回復のタイミングが図りづらくなっていた。
 マスカレイドは、そのダメージが蓄積し一撃で倒せるタイミングをはかり攻撃を仕掛けてきたのだ。
 これで人数比が7対3。
 旗色はかなりわるくなったが……。
「まだ大丈夫だよ。こちらは一人倒れても7分の1。だが、相手は一人倒れれば3分の1だからね。まずは、敵にも一人脱落してもらわなくては」
 クロービスが冷静に戦況を分析して指示を出す。
 だが、次の犠牲者もエンドブレイカー側であった。

「うわぁ、だめぇ、やっぱり逃げる〜」
 ピュアリィのフロルはクロービスから貰った地図をもって、逃げ出そうと飛びあがる。
 もとから戦力的には期待していなかったし、これまでの功績を考えれば逃げていただいて結構。
 いや、積極的に逃げて欲しい。
 そう思ったエンドブレイカーは、ピュアリィの離脱を止めなかった。
 止めたのは、マスカレイドである。
 ピュアリィが飛び上がった空間が断絶され、飛び上がったピュアリィは真っ二つに両断されたのだった。
「フロルっ!!!」
 それを見た、レラの絶叫する。
 戦闘不能では無い、確実な死。それは、エンドブレイカー達の闘志をこれまで以上に掻き立てた。

 アリスは自らの手首を切り裂くと、その血液を猟犬に変え、ピュアリィを両断した巫女に対して、クリムゾンハウンドを解き放つ。
 続けて、アヤノも神鏡浄霊砲で砲撃し、リシリアがシャドウロックを極め、クロービスのリングスラッシャーが舞い、キルフェの空中殺法が、巫女に襲いかかる。
 そして、
「フロルの仇っ!」
 怒りに任せたレラのワイバーングレイブが巫女の頭蓋を貫通して殺し尽くしたのだった。

「これで、6対2っ!」
「いえ、6対3のままです」
 エンドブレイカーの勝利の声に、古手毬の声がかえる。
 倒された巫女のもっていた太刀が、自ら意志のあるように動き出したのだ。
「ちっ、一手足りなかったか……」
 キルフェが吐き捨てる。
 巫女を倒した後、太刀を攻撃する一手があれば、戦況は大きく変わっていたはずなのに……。

「桔梗、それに、鮑丸。次は回復役を潰しましょう」
「了解です、巫女長」
「うぃーっす」
 その動きを見て、ユキノは、これみよがしに神楽舞の準備に入る。
 回復役を狙う……。
 となれば、リシリアが狙われるかもしれない。
 リシリアが倒れれば、全てが終わる。ユキノはそれを止める為に、できることを行い、そして、戦場に倒れたのだった。
「……姫の巫女は、私の方が相応しいのですよ」
 自分を倒した古手毬の耳元に、ユキノはそう言い残して姫の胸元に抱かれるように気を失った。

「これで5対3というわけですね。でも、人数は多ければ良いというものではありませんですのよ?」
 アリスは、傷口から流れる血を見ながら、淫靡な笑みを浮かべた。
「溜まりに溜まった鬱憤、此処で晴らさせて頂きますわ!」
 そして、その言葉と共に放たれた猟犬の軍団は、アリスの血という血を吸い尽くすかのように膨れ上がり、残る3体のマスカレイド全てに襲いかかったのだ。
 この攻撃は、喋る武器鮑丸を撃破し、更に残る2体のマスカレイドにも痛撃を与える。
 更にと畳み掛けたキルフェのスピニングエアは、古手毬を捉える事はできず、クロービスはリシリアにシャドウロックを使うように言うと、自分は、ガーディアンクリスタルでリシリアの回復を行った。
 それは、リシリアが生き延びる為の最善手であったろう。

「恐ろしい力ですね。あなたの力は伝え聞くマスターデモンの力に近いのかもしれません」
 古手毬はアリスにそう言うと、エンドブレイカー相手に神火祓魔符を連続で貼り付けてみせた。
「ですが、人数が多ければ良いということには同意しましょう」
 と。
 霊符が爆散し、エンドブレイカー達が大きな打撃を受ける。
 打撃を受けたのは、アリスとクロービスとキルフェ。
 更に、先程の攻撃で、アリスを危険視した桔梗による攻撃でアリスが戦場に沈んだ。
 これで戦況は、4対2である。

 その後も激戦は続き、クロービスが桔梗に止めを刺し、キルフェが喋る武器の太刀に追撃を行った隙に、そのキルフェが古手毬に薙ぎ払われ戦闘不能となる。
 これで、残りは近衛巫女長・古手毬一人のみとなったが、エンドブレイカー側も、クロービス、レラ、リシリアの3人のみ。
 そして、リシリアが倒されれば、エンドブレイカーの敗北である。
 そのため、エンドブレイカー達は、クロービスが回復役を担い古手毬の攻撃を惹きつけ、レラが攻撃の主力となり、リシリアがシャドウロックで援護するという形で戦う必要があった。
 本来は補佐程度であるはずの回復を主に使う為、クロービスは精細を欠き、リシリアは自分が倒れるわけにはいかない事を理解している為、冒険ができない。
 そしてレラは、フロルの死の影響から脱せず、攻撃が単調になりがちであった。
 このままでは、敗北は免れない。そう悟ったのは、クロービスであった。
「リシリア、レラ、このままではジリ貧だよ。俺がフリージングアクセルで一か八か突撃する。後は、自分のできる最高の攻撃を続けてくれ。無謀だが……、今は、これしか方法が無い」
 クロービスはそう言うと、地面を凍結させて、滑り出た。

「いい加減、この戦いを終わらせよう。もちろん、俺達の勝利でね」
 クロービスが繰り出した滑走突撃を、古手毬は敢えて受け、返す刀で、クロービスを両断する。
「この戦いを終わらせるのには同意しましょう。もちろん、私の勝利でですが」
 切り倒されたクロービスは意識を失い、その血に濡れた太刀を持つ古手毬は、残る2人を睥睨した。
「残るは、守られてばかりの小娘2人。物の数では無いわ」
 クロービスの攻撃で多大なダメージを負いはしたが、実力的には充分に対応できる、古手毬はそう確信していた。
 しかし彼女は、残る2人の小娘の覚悟を見誤っていた。

「私は、巫女をやります。リシリアは、太刀をお願いします」
「わかりました。全力でやってやりますです」
 勝機はこの一瞬のみ。
 しかも、最高の攻撃を、ここで繰り出さねばならない。
 クロービスが倒れた今、リシリアを守って戦い続ける力は、満身創痍のレラには無いのだから。

「お願いルース。ボクに力を貸して。今、ここで力を貸してくれるなら、ボクは、なんだってするよっ!」
「星霊ヒュプノス、わたしのお願いを聞いてくれるかな。わたしを守るために皆が傷ついて倒れたの。だから、一生のお願いだから……わたしに力を貸して、今、最高の攻撃をお願いだよっ!」
 レラと、リシリアは自分の星霊に語りかけ、そして、解き放った。
 その攻撃は、戦いに倒れたエンドブレイカーの願いを受けたかのように光輝き、そして、マスカレイドの命脈を断ち切ったのだった。

●此華咲夜若津姫救出行
 戦いが終わった時、たっていたのは、わずか2人だけであった。
 リシリアとレラの2人だけ。
 犠牲は大きかった。
 特に、この奈落での暮らしで仲良くなったピュアリィの死は、悲しいものであった。
 だが、最期にリシリアが立っていられたということこそ、まごうことなきエンドブレイカーの勝利の証明である

「リシリア、頼む。フロルの死を無駄にしないためにも……」
 満身創痍のレラが言うと、リシリアは悲しそうに瞳を伏せた後、決意の瞳をもって、上方を見やった。
 大きすぎてわからないが、その方向には、此華咲夜若津姫の頭部があるはずだ。

「マスカレイドキャンセラー。お願いします。悪しき棘の力から、此華咲夜若津姫を解き放ってください」
 その祈りの言葉と共に、リシリアは己の根源から膨大な力が湧き上がり、そして、それが外に放出されていくのを感じた。
 エリクシルによって与えられた、マスカレイドキャンセラーの力が、失われ、そして、その力が此華咲夜若津姫へと向かっていっているのだ。
 盟約の地で願ってえたマスカレイドキャンセラーの力。
 その真価が、いままさに、発揮されようとしていたのだ。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

「娘、お前が、私を呼び戻したのですか?」
 リシリアをはじめとしたエンドブレイカー達の脳に直接言葉をとどけるように、此華咲夜若津姫の声が響いた。

「私でさえも動かし得なかった、根源たる棘の力をどのようにして正常に戻したのか? 謎はつきません」
 次に届いた彼女の言葉は、疑問に満ちていた。
 だが、その疑問は長くは続かなかった。
「ですが、今は、私の力を示す時でしょう。この奈落に相応しくない、仮面の者どもを全て葬り去らなければなりません」
 その言葉と同時に、彼らは、姫の足下へと転移させられていた。
 彼らの傷は全て癒えていた。
 それどころか、瀕死の状態で落下したというスゥインさえも、気絶した状態で彼らの前に現れたのだ。
 感謝を捧げるリシリア達に、姫はなんということは無いと思念を飛ばしてきた。
「私を助けた対価は、必ず支払おう。今は、そこで休んでいるのです。お前達は、充分に働いたのですから」

 そして、此華咲夜若津姫の巨体は立ち上がり、戦場に向けて歩みだした。
 それは、奈落の最大戦力が、エンドブレイカーの味方として参戦した、その瞬間であった。

「俺達は、やったんだな」
「えぇ、そうです」
「長い戦いだったが、その甲斐はあったな」
「スゥイン様、そろそろ起きたらどうですの?」
「……(気絶中)」
「寝かせておいてやれよ」
「後の、面倒事は姫さんが片付けてくれるさ、後は、祝勝会だ」
「ふふふ。腕によりをかけて、奈落料理を振る舞いましょうかしら?」
「……ピュアリィ、お前の事は忘れないよ」

 戦場では、此華咲夜若津姫が戦う轟音が響き始めていたが、だが、8人のエンドブレイカーの戦いは、ここまでのようであった。
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