行き交う人々の瞳から、圧倒的な絶望の『エンディング』が見える……!
これは、未来に起こりうる定められた光景なのか……!?
これは、未来に起こりうる定められた光景なのか……!?
「勇者ラズワルド……! あなたがここに居るという事は、彼女もまた、目覚めたのですね……!」
「其の通りだ、此華咲夜若津姫。そして私達は、貴方を迎えに来たのだ」
「『私達』……まさか!?」
此華咲夜若津姫が気付いた時には、既に遅かった。
既に彼女は、濃度を下げて忍び寄っていた『大空を覆うもの』を、体内に吸い込んでしまっていた。
もっとも、仮に気付いていた所で、彼女は大空を覆うものを斬る術を持たない。
敵はこの世界を生み出した存在のひとりであり、何より、実体を持たぬ大気なのだ。
「ならば、一太刀でも……!」
彼女は己の天津太刀を、空中に浮かぶ勇者ラズワルドに振るう。
山よりも巨大な二振りの太刀が、唸りをあげてラズワルドに襲いかかる!
しかし、ラズワルドは落ち着き払って告げる。
「エンディングを破壊する力の無い者に、マスカレイドを滅ぼすことはできない」
「そして何より……」
「勇者に攻撃は届かない……!」
此華咲夜若津姫の太刀は、ラズワルドに触れることすらできなかった。
それは魔術でも奇跡でもなく、純粋な技量の差、そして選ばれし者に宿る才能の差であった。
「勇者の力、これ程とは……! そして恐るべし、大魔女スリーピング・ビューティ!」
やがて此華咲夜若津姫は意識を失い、その顔はマスカレイドの仮面に覆われていくのであった。