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ゼルフォニア沖海戦:燦然光獣レイレギオ

赤髪の運び屋・シヴィル

●天使兵との戦いの様子はこちら

 ゼルフォニア沖海戦:リプレイ一覧

●勇者を救援せよ
 『終焉に抗う勇士号』の遥か上空。
 黄金の光が舞う空には、その光の源たる巨大な存在がいた。
 大魔女スリーピング・ビューティが『終焉に抗う勇士号』を破壊するために送り込んだ空飛ぶ大巨獣、『燦然光獣レイレギオ』である。
 勇士号には及ばないまでも、並みの巨獣を遥かに上回る大きさを持つ輝く巨体は、この世界の光と闇の均衡を保つ存在、『燦然天使ゼルフォニア』の眷属であることを物語るかのようだ。

 レイレギオが巨体をよじるように動かすと、その身体の表面から何条もの光線が放たれレイレギオの間近の空を飛ぶ人影……勇者ラズワルドへと集中していく。
「まだまだ!!」
 ラズワルドがかざした剣の表面で、集束したレイレギオの光線が火花を散らす。
 そのまま力を振り絞り、光線を押し切るように飛翔し、剣をレイレギオに叩き付けるラズワルドだが、その剣はレイレギオの肌に触れる前に留められていた。
 レイレギオの体表に展開された障壁の力だ。
「やはり、私一人ではどうにもなりそうにないな」
 再び光が襲う前に、ラズワルドは身を翻しレイレギオの頭上へと回るべく飛翔。
 寸前までいた場所を、光線が次々と貫いていく。
 ラズワルドの攻撃はレイレギオの体表面に展開されている障壁によって防がれており、このままでは勇者といえど敗北は必定だ
 だが、ラズワルドの顔に焦りは無い。勇士号の盾となる上でも、敵に勝ち目があると思わせることは必要だった。
「それに、私の役割は時間を稼ぐことだからな」
 癒しのオーラを拳の形に固めて自らを癒したラズワルドは、再び己の身を勇士号の盾とするべく、雲を飛び出しレイレギオへと向かわんとする。
 再びラズワルドへと光線が射出されようとしたその時、レイレギオの放つ黄色い光を貫いて、懲罰の白光が垂直に天地を結んだ。
「世紀の色男、大勇者サマ。助太刀すんぜっ!!」
 光を放ったダレン(c34576)の声と共に、光はレイレギオの体表面にぶつかり、障壁に当たって弾け散る。だが、その直後に飛来した大鎌と赤く輝く創造神の紋章が、レイレギオの巨体を揺るがせる。オデッド(c31743)とシアン(c28363)による攻撃だ。
「大魔女に一泡ふかせてやらないとね!」
「ええ、皆さんの想いに応えるためにも……!」
 天使兵達を撃破したエンドブレイカー達の来援だった。
「一人で黄昏てさっさと出撃とか、水臭いわモテ勇者殿! わいらも一緒に戦うで!」
 ラズワルドに呼び掛けながら、ヴァレリー(c04916)がステファノ(c23888)、ハインツ(c00736)と共にレイレギオへと挑んでいく。
「俺達もただやられてばかりじゃない。この翼で奴の懐に入って見せる!」
「天地を翔る我が槍を、逃れる獲物は決して無し。さぁ、狩りの時間だ。フッ……」
 ナイトランスと槍を手に突っ込んでいく3人の姿を、ラズワルドは頼もしげに見送った。彼らの下からレイレギオを見上げ、雨音・ココ(c30874)が言う。
「ラズワルドが1対1で勝てなくても、僕達エンドブレイカーが集中して攻撃を与えられたら勝機はあります!」
「ラズワルド、俺に続け!!」
 大砲と化したグリム(c35430)の籠手が、強烈な炎弾を放出する。
 レイレギオがそれを障壁で受け止めた瞬間、グリムの意を察してラズワルドの放った竜巻が、レイレギオの表皮を食い破った。
 散らばる金色の光を受けて、我が意を得たりとグリムが叫ぶ。
「俺の全力でも、勇者の力にはまるで届かない。だからこそ俺は、その力を敵に届かせる一手になる!!」
 グリムの言葉に、鉄屑野郎・マリス(c16798)が頷く。
「勇者だエンドブレイカーと言わずとも、互いの力を活かせば良い。今、この時代においては私達がラズワルドの仲間なのだから」
 言いながら、マリスはラズワルドが勇者ではなく、ただの人間として生きていけるような世界を導いてみせると、交わした約束を改めて意識する。
「ラズワルド、キミはもう、独りじゃない。われら、エンドブレイカーが共に戦う!」
 ティ(c01976)が高らかに宣言し、 アリーセ(c34080)がラズワルドに静かに告げる。
「……ラズワルド。先ずは第一歩と行きましょうか。世界と、貴方自身の未来への」
 そうしてエンドブレイカー達はラズワルドを伴い、レイレギオとの戦いを開始する。

●燦然光獣
「さあ、助太刀参上! 全力で行くぜ!!」
「身を削って送り出してくれた仲間の手前、無様は晒せませんからね」
 レイレギオの頭上から急降下して来たアレックスが、両手に溜め込んだオーラを立て続けに叩き込み、マルシャンス(c05246)が眠りの雲を広げて力を蓄えていく。
 幻影を纏い、一直線に突撃していくキリィ(c00002)の後ろからは、ラス(c05348)の分身がその死角を補うように突き進む。
「覚悟するがいい、レイレギオ!」
「ラズワルドも助けて、レイレギオも撃破して来るって約束したからな!」
 彼らが遥か上空に来ることが出来ているのは、勇士号に潜入を図った『天使兵』との戦いで奪取した『燦然光翼』の力だ。
「ま、来たかった奴は俺達ばかりじゃない。そいつらの分も戦わないとな」
 ヴァレイシュ(c13222)のバトルガントレットから、鉄杭が飛び出しレイレギオを貫く。
「レオナの分も、戦う!!」
 ノイズ(c08532)が振るった刃は、彼女を庇ってくれた少女の想いも乗せて光る表皮を焼き切った。
「おねーさまに託されて、ここにいるッスから!!」
 ベリル(c32593)は送り出してくれたティアナの分までと、レイレギオへと拳と蹴りの連打を繰りだし続ける。
「天使兵たちの前身である燦然鉱脈ゼルフォニアの正規兵達……彼らが本当に守りたかったものを救うためにも、勝たねばな」
 ナガミ(c08545)の太刀が流れるように体表面を切り裂き、レイレギオに痛打を与える。その後を追うようにアモン(c02234)のリングスラッシャーが、その傷口を広げていった。
「ラズワルドが攻撃を引き付けてくれているうちに、攻撃を重ねておこうか」
 決して弱敵とは言えない『天使兵』との戦いを経て、消耗している者も少なくない。今のところ、ラズワルドを強敵と見てから彼に攻撃を引き付けてくれているが、攻撃の余波でもエンドブレイカー達にとっては脅威となる。
 何パーティものエンドブレイカー達が加わってなお、レイレギオは侮りがたい敵だった。

 だが、レイレギオとの戦いに入るエンドブレイカーの数は、既に上空にいる者だけに留まらない。勇士号での戦いに勝利を収めたエンドブレイカー達は、次々と空へ飛び上がって来ていた。
「お待たせ致しました」
 ラズワルドに微笑しながら、レラ(c05439)がファルコンスピリットのルースを解き放った。「遅くなって申し訳ありません。これ以上、貴方一人に重荷を負わせる訳にはいかない。重荷は皆で支えるものだ。あなたの親衛隊の一員であったリンレイに敬意を表し、共に戦わせていただく」 ラズワルドに笑い掛けたリョウは、『灼星鞭』を手にレイレギオの巨体と向かい合う。
「貴方は、もう一人じゃない。……私も一緒に、戦うわ」
 すれ違いざま、ラズワルドに声を掛けた黒華・アウレリーア(c28604)が、背にした『燦然光翼』を羽ばたかせるとレイレギオの頭上を取りに空を舞った。
「こんなモン相手に一人で戦ってたのかよ……こちとら連戦でクタクタなんだがな」
「だが、ここに来たからには負けられぬのよ! あの娘に言われた通り、アウィンの子等の力を見せてやらねばな!!」
 アンブローズ(c00259)に告げたギャル(c36455)は、腕から生えた鎌でレイレギオの輝く体毛を刈り取っていく。
 アンブローズも己の体に魔獣の牙を生やし、文字通り食らいついた。
「あいつらに誓ったんだ……お前達を倒して、その意思を継ぐってな!」
 斧剣使いの傭兵・レテイシャ(c04739)の渾身の一撃に、レイレギオの巨体が確かに揺らぐ。
「光獣は燃やせばよろしい、解決ですな♪」
 ラッドシティ辺りの長老のような事を言いながら、アニス(c02475)がレイレギオの背中に向けて次々とバラ撒いていく。
 なるべくそちらには近付かないようにしながら、ルエリィ(c34403)はナイトランスを手にレイレギオへと飛び降りた。
「デカい敵って良いですわよね。腕が鳴りますわ!」
 その姿を見下ろしながら、フィーネ(c00324)はレイレギオの姿をスケッチしていた。
 その一方、サードアームで大鎌を投げつけるのも怠りなく行っている。
「『獣』と名はついていますが、全体的なフォルムは人型に近いですね……」
 猿型と言う方が近いのかも知れないが、あまりにも巨大過ぎる。一見急所のようにも見える大きな目の表面はひときわ堅固で、弱点の目星をつけようとするカケル(c05038)達を辟易させていた。
「ほとんどエネルギー体のような存在と見受けられる。人型を取る意味があるのか……?」
 カケルは空を翔けると、喉元や関節部などを狙いにかかる。
 クニカラ(c01967)は、攻撃を引き付けていたラズワルドの鎧についた焦げ跡に眉を寄せた。
「ラズワルド、それは大丈夫なのか?」
「ああ、この程度なら動くのに支障はない。だが、奴は見た目より頭が良いぞ」
 高い回避能力を持つラズワルドだが、十分に力を溜めこんだ後に攻撃を放たれれば、勇者といえど避けるのは難しい。レイレギオの側もそれを学習していたらしく、ラズワルド相手に二発に一発は当てて来るようになっていた。
「いちおう回復しとくね」
 今はチサカ(c34909)をはじめとしたエンドブレイカー達がラズワルドを回復させているが、救援が遅れれば、ラズワルドですら敗北を喫していただろう。
 ガナッシュ(c02203)の笑いながら世界樹の花をラズワルドへと向ける。
「勇者といえど、無理は禁物じゃな!」
「しかし流石に大魔女スリーピング・ビューティ、誂えたような相手だね」
 血の猟犬をレイレギオへと飛び掛からせながら、ネマ(c01067)はそう考える。
 あるいは大魔女も、ラズワルドがこちらの味方についたことを察しているのかも知れない。
「でも、それならラズワルドさんの攻撃を通せば!!」
「大打撃は間違いなし……ってわけだな」
 レサト(c02802)とジゼル(c08357)が攻撃を重ね、レイレギオの防御を空費させる。
 高い力量を持つラズワルドの攻撃を通せば、大打撃は必至だ。
「いきましょう、ラズワルドさん!」
 オーラの羽を現したニーナ(c01336)がラズワルドを先導し、大剣がレイレギオを引き裂いていった。

 揺れるレイレギオの背にもまた、何人ものエンドブレイカー達が降り立っていた。
「わうー! わおーん! わんわんおー!!!」
 その身を完全に魔獣と化したガル(c26044)が、楽しげに尾を振りながら荒れ狂う。
「墜とすワケにはいかない友と……彼に惚れこんじゃってる人が、待ってるからね」
 クロービス(c04133)はほぼレイレギオに密着するように、その巨体を切り裂いていく。

 彼らがラズワルドを狙って発される光に巻き込まれないように注意を払いながら、ログレス(c00473)が背の『燦然光翼』を意識しながら、シールドスピアを突き刺していく。
「牙持つ灰色鴉が本当に飛ぶことになるとはのう」
 感慨深げなのは、
「弱点はどこかなー?」
 レイレギオの上に乗り、弱い場所を探していたヤクモ(c01272)が首をかしげる。
 その時、不意に起こった鳴動にログレスが顔をしかめた。
「いかん……皆、一度離れるぞ!!」

 地平線の向こうから倒れ込んで来るのは、レイレギオの『腕』だ。
 己の上にいるエンドブレイカー達を振り払うように振られた腕は、自身の毛皮の上を巨体に相応しい凄まじい速度で進み、続けてレイレギオの全身が回転を開始する。

 その様子は、無論離れて攻撃を仕掛けていたエンドブレイカー達からも見えていた。
「レイレギオの全身から、何か音がするわね」
 微かに眉根を寄せて、アクアレーテ(c09597)はそう言った。前線の仲間達を支援しながら、パンペリシュカ(c33981)が首をかしげる。
「攻撃パターンを、変えるつもり……?」
「来ます!!」
 ガーディアンクリスタルを展開したヴィルヘルム(c00968)の警告と共に、先程までラズワルドへと集束していた光線が、周辺一帯を満たす攻撃的な光の嵐へと変化する。
 レイレギオに密着していたエンドブレイカー達が一斉に弾き飛ばされたのを見て、回復に当たっていたエンドブレイカー達が顔色を変えた。
「ワン!!」
 星霊オラトリオに呼び掛け、サクヤ(c02573)が攻撃の手を止めると復に回る。
「流石にあれだけ大きいと、反則級の攻撃の一つも持っているか!」
 悪い予感が当たったと、エウリード(c03240)はレイレギオを見上げる。
 元より群体のような存在なのか、体の各部から発される光線は、ラズワルドを狙っていた時よりも威力を大幅に減じながら、それぞれ確実にエンドブレイカー達を貫いていた。
 自身も光線を受けながら、キウ(c06943)もまた味方の傷を癒しにかかる。
「きっつい、けどこれが私の仕事だもの」
 先程までラズワルドに向かっていたレイレギオの攻撃は、完全にエンドブレイカー達を優先して狙うようになっていた。
「こちらを脅威と見たか……だが、先に倒せると思ったのなら、甘く見られたものだ!」
 破城鎚・アイネアス(c00387)は、後方の仲間達を庇うように前に出た。
 天使兵との戦いで肩口に受けた傷が痛みを訴えるが、それを無視して光を受け止める。
「なりふり構っていないという様子だな」
「そりゃあ勝ちゃなんでもいいに決まってらぁな、こっちも向こうもよ!!」
 飛来する光線に貫かれながらも、ギ・ア(c01635)は銃弾の雨を浴びせ続ける。
 エンドブレイカー達に飛行能力を与えている『燦然光翼』はエンドブレイカー達の意志に反応しているようだった。意識を失えば、海面に墜落することすらあり得る。
 それを理解してなお、戦い続けねばならない理由はあった。
「道半ばで終わらせる訳にはいかないからね」
 クラウス(c02858)は癒しの魔法陣を何重にも展開しながら、もはや光の竜巻と化しつつあるレイレギオを見つめた。
 ここでエンドブレイカー達が敗北すれば、世界は燦然天使ゼルフォニアの光によって焼き滅ぼされる。
 全ては、未来に繋ぐための戦いだ。
「それに、必ず帰ると、約束して来ましたから」
 この先を大切な人達と、仲間と戦う為に。そう思うことが、槍を強く握り締めるリーゼロッテ(c24177)の心に勇気を与えてくれている。
(「ここには大切な人がいないから……力尽きるわけにはいかない……」)
 アヤ(c03522)もまた決意と共に、レイレギオへ立ち向かっていく。
「……此処は決して譲らぬ」
 ゴーグル越しに敵を見つめるとオーラの翼を広げネモ(c01893)は、竜巻の如きレイレギオの中心部へと直進していく。その道を切り拓くように、ステファン(c09726)が無数の殴打を叩き込んでいく。
「巨獣退治は騎士の誉れです。……まあ巨獣とはわけが違いますが」
「多少の大きさは誤差としましょう。仮面に憑かれているなら、勇者だろうと根源だろうと倒すのが私達なのですから」
 アイスレイピアから冷気の嵐を広げるマウザー(c11248)の言葉に笑いながら、アゼル(c02796)は鞭の柄を握る手に力を籠める。
「さあ、レイレギオ。お相手願おうか」
 高空の冷えた大気を凍てつかせる冷気と鞭とが、レイレギオの動きを封じ込めていく。

●光る嵐
「御機嫌ようグーテ、お前の一撃食らわせテやりな!」
 笑うズィヴェン(c20573)に応えて現れたドラゴンスピリットが空に翼を広げ、レイレギオへと炎を噴きつける。
「これだけ大きいと、どれだけ損害を与えたのか分かり辛いですね」
 盾の表面から針弾を打ち出しながら、カナト(c02601)は一つの小島といっても良いような大きさのレイレギオを改めて見上げる。
 光の竜巻と化したレイレギオは、加速しながらその高度を下げつつあった。
「勇士号を直接狙う気か?」
 虚空を切り裂き、月の魔力を撃ち出しながら、シン(c04331)はその動きの意図をそう見て取る。あるいは、エンドブレイカー達が付けている『燦然光翼』の数に、天使兵が劣勢であることを察したのかも知れなかった。
 レイレギオの巨体が島で暴れ回るだけで、その損害は甚大となりかねない。
「その前に海に落とすしかないな。腕が鳴るぜ!」
 ディルティーノ(c13407)は狩猟用の糸を繰り、レイレギオの侵攻を止めにかかった。
 前線のエンドブレイカー達もまた、降下せんとするレイレギオに立ち向かっていく。
 だが、既にレイレギオと初期から戦い続けていたエンドブレイカーの中には、手ひどく負傷する者も現れていた。そうした者達を、アキホ(c19159)らが回復し、再び前線へと送り出す。
「これが悠久の空に捧げる私の全て、皆さんお願いします!」
 魔鍵によって楽園の門を空に開きながら、アキホは上空で戦う仲間が落ちたならば、すぐに受け止められる態勢を取る。

 だが、高度が下がったことはエンドブレイカー達にも利していた。天使兵との戦いに決着をつけたエンドブレイカー達の合流が早まったのだ。
「我等が大勇者や皆さんを御待たせしてしまいましたでしょうか?」
 ローウェン(c35126)は言うが早いが、『待雪』を手にレイレギオの侵攻を受け止める前線へと飛び込んでいった。空中戦に喜色を顔に浮かべながら、それに負けず劣らずの勢いでテオドール(c30059)が突っ込んでいく。
「行くぜ、ここは俺の空……じゃなかった、俺らの空だーッ!」
「無茶をするなよ、テオ」
「分かってるって!」
 そう声を残して飛翔するテオドール。ロレンツォ(c31495)は息を吐きつつもその後を追う。
 テオドールのように、翼を背に、空を飛ぶ喜びを表す者達も少なくはなかった。
「翼は一度欲しかったんです。ほら、そらとぶわんこ!」
 プリス(c00625)は翼を広げて一回りすると、レイレギオへと魔曲を向けていく。
「いいですねいいですね、空を飛ぶっていうのも!」
 イストテーブル(c14196)はレイレギオの頭上に回ると、シルバーコヨーテをその巨体の上に走らせる。
「これ以上、お前を進ませるわけにはいかない」
「後を託されてきたのよ。その信頼は裏切れないわ」
 ニャルラ(c08107)の周囲に現れた無数の邪剣が、ベルガモット(c24965)の撃ち放った無数の矢が、燦然光獣に突き刺さっていく。
 燦然光獣の敵意が、エンドブレイカー達を包み込む。

「この戦いも佳境のようだねぇ」
「でも、天使のように可愛い私……達が到着したからには、この戦い、勝ったも同然ですわ!」
 レイレギオの攻撃に墜落しかけたエンドブレイカーを受け止めたカクテュス(c05972)へ、ラーレ(c02476)は自信満々にそう宣言する。
「さあ、ここからが本番だ。行くぞ、ソニア!全ての絶望を喰らい尽くす為に!」
 カクテュスと共に合流したルナ(c01436)は、内なるデモンに呼び掛けながらエンジェリックウイングと合わせて四翼を広げる。
 巻き起こる風が、仲間達への追い風となる。
「闇の求める光は如何なるモノなのか、興味があるよ」
「あんまりがっつくとろくなことになりませんよ。何事もね」
 レイレギオの死角に回り込むべく虹を描いて飛翔していくクトラ(c16568)の背にそう釘を刺しつた、タンドリー(c23226)は気障っぽく髪をかきあげると、ボイスブースターを手に仲間達の背を支えるべく戦歌を歌い上げていく。
「まだまだ手伝いは必要なようだね」
 ガーラルド(c29038)の放った紫色をした棘(ソーン)の槍が、レイレギオの体表へと突き刺さると、そこへアスワド(c01232)の放つ闇が入り込んでいく。
「さあ、行きますよ、俺の夜」
 内なるデモンに呼び掛けると、アスワドはレイレギオの動きを封じにかかった。
 反撃を繰り出して来るレイレギオによって傷つくエンドブレイカー達には、ファウナ(c22864)が回復を掛けていく。
「上手くいったらラズやんと酒でも飲みたいもんだねぇ」
 のんびりと言う彼女は、レイレギオの位置を見定めていた。
 現在位置はほぼ真上。これだけの巨体が侵攻してくれば、施設に損害が出るのは確実だ。
「その前にあいつを止めりゃいいんだろう? 簡単なこった」
「そうね。一緒にやりましょう、ルィン君」
 紫煙銃の銃口を上空のレイレギオに向けるルィン(c01263)の背を支えるように、ゼルディア(c07051)は歌声を響かせる。
「星明りの下、我らを鼓舞せよ。……お願い、ラズ」
 ベル(c03346)の星霊スピカが宙を駆け、消耗しつつある前線へと癒しを届けに向かう。
「ではそろそろ二幕構成のこの舞台にも本当のフィナーレを!」
 フェルネス(c16239)が芝居がかった様子でそう宣告した。

●天空の決着
「勇士号は私達の望む未来を掴む為に必要なもののひとつよ。渡せない」
「必ず……必ず守るんだ。ここで終わりになんかさせないんだから!」
 光獣に近接戦を挑んでいくロゼリア(c05854)を援護するべく、ジゼル(c00456)が気咬弾を連射する。
 レイレギオの背に回り込み、攻撃を繰り返していたアストリッド(c33779)は、不意に敵からの圧力が緩んだことを感じて怪訝な表情を作った。
「まさか、逃げる気か?」
「……これは……天使兵が全滅したのであろうか」
 勇士号への降下軌道を取っていたレイレギオがエンドブレイカー達を引きはがすような動きを取り始めたことに気付き、クロウリー(c16216)はそう声をあげた。
 レイレギオがここに居たのも、天使兵の飛行能力を維持するためだ。
 おそらく、何らかの手段で天使兵が全滅したことを感知したのだろう。そうなれば、もうレイレギオの側に勇士号上に留まる必要はない。

 光獣の肩口へとパンプキンボムを投げ落としていたベネディクト(c34979)が、力尽きた仲間を抱えながら周囲に呼び掛ける。
「逃がしちゃだめだ、あいつがいたら勇士号を動かす上でのとんでもない障害になる!」
「悪あがきシてんじゃネェよ、デカブツが!!」
 舌打ちしつつ、ゼスティア(c00269)は邪眼に力を籠める。
 レイレギオの撤退に対し、エンドブレイカー達も撤退するという選択はもはや無かった。その決意を見て、ラズワルドが近くにいた者達に声をかける。
「私も足止めに回ろう。その間にお前達が奴にとどめを!」
「分かった、頼む!」
 この状況でレイレギオを確実に止める力を持つラズワルドを後方へ送り込むべく、ヴェルナー(c04573)の振るう大剣が竜巻を巻き起こし、レイレギオの注意を引き付ける。

「うん、こっちは任せて!」
 今のラズワルドは一人ではない。そう改めて告げるようにシル(c25139)は頷くと、レイレギオへ杖を向けた。
「さぁ、全開で押しつぶさせてもらうからねっ!!」

「数秒に一度とはいえ、こうなると無効化能力が厄介だな」
「ならば、ボクが囮は務めましょう!」
 真紅の鎧に身を包んだレオンハルト(c35756)は、ラッシュ(c35589)と共にレイレギオへと飛んでいく。
「こっちも行くで!」
 あちこちが焦げた茶色のコートを翻し、蟷螂の鎌を伸ばしたトウジュ(c14333)もレイレギオへと向かう。
 レイレギオが撤退態勢に入り、攻撃が緩んだことが幸いし、エンドブレイカー達の攻撃はここに最高潮に達していた。
「もう一息だ、みんな、踏ん張れ!」
 レイレギオの苦し紛れの反撃をシールドスピアで受け止めながら、ラチェット(c06014)が皆に檄を飛ばす。
「ああ、ここであいつを倒せなかったら、送り出してくれた皆に面目が立たないね!」
 アゼル(c21551)が勢いよく空中を殴りつけ、衝撃を打ち出していく。
「正念場ですね。無理はしませんが……無茶はしていくところです!!」
 世界樹そのものの力がニコル(c11346)によって呼び起こされる。空中に現れた世界樹の影が、レイレギオを清浄なる力で覆った。
 遥か水平線の彼方に都市国家の影を見ながら、ベイン(c04116)はレイレギオを空へと縫い止めるかのように、光の槍を降り注がせる。
「勇士号は……落とさせない……!」
 膨大な闇の塊がシェミア(c19503)の意志に応じて現れ、レイレギオの光を押し留めるように降り注ぐ。
「お前などに、この空は似合わない。皆の蒼穹を渡してなるものかよ!!」
 パスカル(c19822)の叫びと共に、裁きの車輪が次々と現れレイレギオへと襲い掛かった。駆ける車輪をレイレギオが打ち払った瞬間、その車輪の影から飛び出したシャラーレフ(c04126)がその指を巨大化させた腕部で握りつぶしにかかる。
「そう簡単に離しやしないさ!」
 レイレギオの腕と共に凄まじい勢いで振り回されながら、シャラーレフはさらに強く掴んだ指を握り込む。
 ラズワルドと共にレイレギオの進行方向側に回り込んだディーア(c02611)はレイレギオに接近、その防御フィールドに干渉されない位置に入ると即座に血の猟犬をレイレギオへ食らいつかせる。
「燦然天使じゃなくても、究極の光は出せるさ! 未来を諦めないみんなの心の輝きが、きっとそうだッ!」
「喰らえ、断罪の輝きを!!」
 レイレギオの体にしがみついたアンゼリカ(c32742)とクウィル(c03503)の拳が、凄まじい音と共に叩き込まれる。
 苦痛に呻くレイレギオを見据え、鎧の翼と燦然光翼、四つの翼を広げ、ウォリア(c17006)がまさしく飛竜の如く天空を征く。
「今こそ、燦然光獣を地に伏さん!!」
 裂帛の気合いと共に繰り出された刃は、神火を帯びて燦然光獣の腕を断つ。
 切断された腕が光と化して消え、苦痛の声を上げながら、レイレギオが苦し紛れに無数の光を放つ。
 それに貫かれながらも、シヴィル(c07933)の体は速度を増して、巨体の間近を飛び抜けた。
 翼が輝く体表を断ちながら、体を一直線に翔け登っていく。

『GIOOOOOOOOOOOOOO……!!』

「あばよデカブツ……俺は、光より速ぇのさ!!」
 シヴィルが消えゆく燦然光獣にそう告げるのと同時にレイレギオの体内からエネルギーが溢れ出し、空がひときわ強く黄金色に輝く。
 光が収まった時、燦然光獣レイレギオは跡形もなく消滅していた。
「燦然光翼の力が弱まっています。急いで帰還しましょう!」
 エンドブレイカー達はシフォン(c36108)の声に慌てて頷くと、一斉に終焉に抗う勇士号へと帰還していくのだった。

●そして戦いが始まる
 レイレギオを倒したエンドブレイカー達は勇士号の海岸へと降り立つと、勇士号上で待っていたエンドブレイカー達から、安堵の息と歓声が上がる。
 レイレギオの遺した光が完全に消えると共に『燦然光翼』も消え去っていた。
 光翼をつけていた場所を確かめながら、ケーナ(c10191)がラズワルドに問う。
「しかし、ラズワルドはどうやって空中戦やってんたんだ?」
「『フライハイ』という魔術だ。大抵、戦闘中に飛ぶと無事では済まないし速度も機動性も期待するほど出ないので、本来は安全な時しか使わないのだが」
「遺失魔術ですね。私達でも力量を今より高めてからラズワルドさんに教われば、使えるようになるとは思います」
 以前にエリクシルに注ぎ込まれた遺失魔術の知識に反応するものがあったらしく、フィーネが唐突な頭痛に襲われながら、そう解説すると、結構な数のエンドブレイカーが期待に目を輝かせた。
「……まあ、今は時間不足ですね」
 フライハイを使える力量に達した者は、古の勇者の中でも僅かだったらしい。大魔女との戦いを目前に控え、それだけ力量を高めるほどの時間が残されているとも思えなかった。
「まあ、それは世界を守り切った後の楽しみにとっておこうか」
 いつか自由に飛ぶ日を夢見、主にスカイランナー達が力強く頷く。

 やがて海の向こう、赤茶けた大地と滅びた都市国家の影が見えて来る。
「『燦然鉱脈ゼルフィニア』……」
 誰ともなく呟く。
 大魔女の野望を食い止めるための決戦の地へと、エンドブレイカー達は辿り着いたのだ。
 間もなく激戦が始まろうとしていることを、勇士号に集った誰もが理解していた。
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