<NEXTエンドブレイカー!>
この事件を予見したエンドブレイカー | ||
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太刀の狩猟者・ツラッラ(c03963)は、『ジャグランツ討伐隊』を派遣した領主の一人が治める、小さな村へと向かっていた。彼女が感じていたのは、ひとつの不吉な予感。
「悪い予感が、当たってしまったようですね……」
トンネルを抜けて目的の村に到着した彼女は、思わずそう唸っていた。
狩猟者であるツラッラのホークアイは、村の各所で略奪を行うならず者達の姿を捉えていた。
彼等はそれぞれに武装をし、背負い袋には略奪した品々を詰め込んでいる。
そして、彼等を指揮するリーダーの右肩には、マスカレイドの仮面が出現していた。
『マスカレイドは、騎士団が討伐に出た隙を突いて、手薄になった領地を襲うのではないか』
それが、ツラッラの予想だった。
討伐隊を派遣したのだから、どうしても領主達の支配下は手薄になってしまう。
マスカレイドは、その隙を狙うのではないか。あるいは、それも計画の内なのではないか……。
幸い、この村を襲うならず者の数は少なく、リーダーの力量も大した事の無いように見える。
それに、何よりも。
「村の人達を、見捨てるわけにはいきません!」
大地を蹴ったツラッラは、猪突猛進にマスカレイドへと突撃する!
「奪え奪え! 歯向かう奴らは皆殺しにしろ! 女やガキは捕らえて……ン? なんだ?」
暴力欲に身を任せ、哄笑をあげていたマスカレイドは、太刀を手に迫るツラッラを目にして顔色を変えた。トゲのついた太い棍棒を構え、こちらを迎え撃とうとする。
「気付かれましたか。ですが……!!」
青い衣を翻し、疾走の勢いをそのままにツラッラは跳んだ。
手にした太刀が、稲妻の闘気を帯びて雷光を放つ。
「吶喊!!」
まっすぐに繰り出された突きがマスカレイドの体に電光を走らせ、続けざまの兜割りが額を割った。血に染まった顔で、マスカレイドはツラッラを殺意の篭った目で睨み付ける。
「この村の奴じゃねぇな……。いいところを邪魔しやがって、ガキが!!」
滴る血を舌で舐め取り、マスカレイドは棍棒を振り上げた。
「余計なことに首を突っ込んだのを、後悔しながら死にやがれ!」
「やれるものなら、やってみなさい!」
叫ぶツラッラを目掛け、凄まじい勢いで棍棒が振り下ろされる。
飛び退くツラッラの足元を砕いた棍棒を、マスカレイドは横殴りに振り回した。叩き付けられる棍棒をツラッラは太刀を返して咄嗟に受け止めるが、腕には鈍い痛みが残る。
(「時間はかけられませんね」)
戦いが長引けば、マスカレイド以外のならず者達も来てしまう。
囲まれれば不利なのは明らかだ。
不幸中の幸いは、目の前のマスカレイドがそれほど強くはないことだろう。
決して油断が出来るわけではないが、勝てる相手だとツラッラは判断する。
「勝たせてもらいます!」
「ほざけ!」
罵声と共に棍棒を突き出し、マスカレイドはツラッラを叩き伏せんとする。だが、その動きは意図せず止まった。
「チィッ!!」
先程の電刃衝の一撃が痺れを生み、マスカレイドの体の自由を奪っていたのだ。
その好機を見逃すツラッラではない。
「踏破する!」
瞬間、太刀が翻った。
大上段からの一撃がマスカレイドの肩に深々と食い込む。
その刃を返しざまに、ツラッラは刃を跳ね上げた。
雷光を帯びた刃が、マスカレイドの胴体に深々と刺さった後、一気に引き抜かれる。
「く、クソ……!?」
「終わりです!」
ツラッラの言葉と共に、マスカレイドの体は地面に崩れ落ちた。
戦いは終わった。
「まだ、やりますか!? すぐに私の仲間も来ますよ!」
ツラッラは、戦いの気配に気づいて集まって来たならず者達に、声を張り上げた。
ハッタリに過ぎない言葉だったが、眼前でリーダーを失ったばかりのならず者達にとっては有効だったようだ。リーダーの仇を取ろうとする者など誰もおらず、男達はすごすごと村を逃げ出して行く。
「ふぅ……。なんとかなりましたね」
ツラッラが息をついた時、その足元から低い笑い声が上がった。
「ククク……これで終わったと思ってるんじゃねぇだろうな……」
「……どういうことです?」
「俺達の仲間には、もっと強い連中が、まだまだいるんだぜ……。それに、お頭にかかりゃぁ、テメェなんざイチコロよ……ぶっ殺されちまい、やがれ……」
呪いの言葉を口にしながら、マスカレイドは息絶えた。
「まずいですね。急いで、みんなに知らせないと……!」
おそらく、マスカレイド達は他の場所でも、こうした襲撃を仕掛けようとしているのだろう。
事態を打開するためには、多くのエンドブレイカーの力が必要となる。
ツラッラは礼を言おうとする村人達の相手をするのもそこそこに、村を飛び出していった。