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〜妖精騎士の寝所〜

「いけません! あれなるは予言の戦士、私達妖精騎士が待ち望んだ『終焉を終焉させる者』です。どうか思い出して、妖精騎士の『誓い』を……」
 しかし、伝令の妖精騎士は居住まいを正すと、彼女の訴えに驚くべき返答を返した。
「かしこまりました! 仰る通り、奴等が遺跡の守りを突破した所で、我ら精鋭に掛かればものの数ではありません。たちまちの内に蹴散らしてくれましょう!」
(「ああ、やはり言葉は紡げても、意味を伝えることができない……」)
 その少女の表情は、さらに深い苦悩の縁に沈んだ。

 長老の裏切りによりマスカレイドと化した後も、妖精騎士はひたすらに抵抗を続けてきた。
 しかし仮面は肉体の自由を奪うのみならず、記憶や経験、意志や言葉さえも奪い……。
 少女は、マスカレイドの支配によって身動きが取れぬまま、寝所での永遠とも思える時の中で、何度も仲間達の汚されてゆく様を見続けてきた。そしてその汚染は、遂には少女自身をも支配してしまったのだ。

 しかし、何よりも許せないのは、マスカレイドが妖精騎士の『誓い』を奪ったこと。
「結局私達は、あれほど待ち焦がれていた救世主に、悪意を持って弓を向けることしかできないのか。私達は一体何の為に、悠久の時を眠り続けてきたのか……」
 そのような少女の苦悩に気付くこともなく、伝令の妖精騎士は、少女から受け取ったと信じ込んでいる偽りの命令を、全ての妖精騎士に伝えるのだった。

「妖精騎士伯ウェンディ様の命である! 妖精騎士よ、寝所を荒らす不逞の輩を殲滅せよ!」

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